はいいろのゆび
学校の図書館は誇りとしているだけあって、広いが菊はたいてい植物生理学のコーナー
の傍にいることが多い。
GF(グランドフロア)をざっと見まわし菊がいないことを確認すると、まっすぐ
エレベーターで5Fへ向かう。
降りてから右に曲がり、日の当たりのいい窓際に菊はいた。
話しかけようと口をあけた時、反対側から男が来てアーサーはその口を閉じ、
立ち止まった。
「これだ、菊。」
「ありがとうございます、ギルベルトさん。」
「俺様にかかればこんなの楽勝だぜ!ケセセセ!」
「ふふっ、そうですね。頼りにしてます。」
光に反射する色素の薄い銀髪はアーサーにも見覚えがあった。
HGFの中将で、あのムカつく腐れ縁の悪友だ。
話し方はうっとうしくローデリヒ少尉やヘーデルヴァーリ大佐にいつも邪険にされて
いるが、戦闘での腕は確かだ。
「俺様は偉大だからな!」
「そんなこと言ってお前、この前ヘーデルヴァーリにフライパンで殴られて気絶してた
じゃねぇか。」
「なっ!アーサーお前か。何の用だよ。」
「菊、お前何してんだ。」
「えぇ、私今まであまり植物を育てることに成功したことがないので、本を読んで知識を
増やそうと思ったのですが専門用語が多く分からな所が数か所あったので、
ギルベルトさんに教えてもらっていたんです。」
「無視すんな!」
「何でこいつになんだ。」
「ギルベルトさんは植物の化学的な生理現象に長けていらっしゃるので、それなら能力を
持たない私にもアーサーさんの薔薇園のお世話が出来るかと思いまして。
ギルベルトさんの説はとても興味深いですし、勉強になるんです。」
「ケセッ!そうだろ?…ん?アーサーの薔薇園だ?お前、アーサーの庭に行ったこと
あるのか?」
「えぇ、私先週からアーサーさん専属の庭師兼秘書になったんです。」
「アーサー専属の庭師?能力者でもないのにか?俺はてっきりこの学校の特待生かと
思ってたぜ。」
「学生なんて、私もうそんな年ではありませんし。ここに来るのも少し肩身が
狭いんですから。私、多分貴方達より年上だと思いますし。」
「「は?」」
アーサーとギルベルトは同時に驚きの声を上げた。
「い、いや、十分いけると思うぜ。」
「てっきり、4つくらい年下だと思ってた。」