はいいろのゆび
「ったく、探したぜ。」
そう言ってギルベルトはフランシスの隣に座る。
「あの、私もご一緒してよろしいでしょうか?」
「もちろんだよ。菊ちゃんなら大歓迎。」
菊はありがとうございます、と言って席に着いた。
「お、菊ちゃん早速それ頼んだんだ。」
「はい。本当はフランシスさんの食べてるオムレツを頼もうと決めていたのですが、
最近こってりしたものばかりでしから、さっぱりしたものが食べたくなりましてねぇ。」
菊のプレートには、白米にお新香、塩じゃけや味噌汁などがのっている。
「それ、俺が先週シェフに考案したばかりのものなんだよねぇ。
ソースを極めるのもいいけど、新しい方面を開拓するのもいいと思ってね。
どうかな?」
「そうだったんですか。そうですねぇ、この塩じゃけはもうちょっと塩分が多い方が
美味しい気がします。」
「そう?結構辛めにつくったんだけど…。まあ、参考にするよ。
お礼に俺のオムレツ一口どうぞ。」
「え、いいんですか?では、いただきます。」
菊は一口大のオムレツを食べると顔をほころばせた。
食べ物のことになるといつもあまり変わらない表情が幾分か豊かになる。
それに何となくモヤモヤする自分がいるが、それが何なのか分からない。
「あれ?菊ちゃんそのブレスレット…」
「あぁ、アーサーさんの薔薇園に行くための通行証といいますか…」
「そうじゃなくて、それアーサーにもらったんだよな?
よくあのユニコーンが許したな。」
フランシスとギルベルトは、菊の左腕をまじまじと見る。
「そんな大げさですよ。ユニコーンさんが皆さんが思っているより心の広い方だった
だけです。」
「いやいや、お兄さん小さいころから何度もアーサーの薔薇園に行ってるけど
あのユニコーンにはいつも唸られるわ、角で突かれるわで何年経っても懐いてくれない
どころか敵意むき出しだからね?」
「それはお前の胡散臭さがにじみ出てるからじゃね?」
「ギルちゃんまでそんなこというの!?このにじみ出るフェロモンが分からないなんて…
美しいって罪!!」
「まあ、ご主人様と似たんじゃね?」
「そっかぁ~こんなゲジゲジ眉毛にお兄さんの麗しさが分かるわけないもんねぇ~」
「あぁ?そんなにこのフォークの餌食になりたいのか?」
アーサーは持っていたサラダ用のフォークを構える。
ギラつくその先端とアーサーの目は本気だ。
「じょ、冗談だってぇ。」
フランシスは顔を真っ青にして菊とギルベルトに視線で助けを求めた。