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はいいろのゆび

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捌いても捌いても、終わりの見えない書類にその太い眉の間に指を当てペンを
すすめていたアーサーは疲労と寝不足で、いつも以上に凶悪な表情になっていた。
こんな彼には、誰も近づかないのがもう通例となっている。

「おい、ヒゲ紅茶持って来い。」

一人を除いては。

「えー、もうお兄さん今日すでに10回はお前に紅茶持ってってるよー?
すこし休んだら?そんなに働いてると、お前の太い眉毛の間にも毛が生えて
眉毛が繋がっちゃうんじゃない?」

「あん?てめぇのその薄ら寒いヒゲむしって欲しいのか?」

「ちょっ、やめてよね!これはお兄さんのアイデンティティーなの!
とにかく、紅茶は持って来ないから欲しいなら自分でつくって。
お兄さんこれから外でお昼食べてくるから。」

「おい、コラ待て!・・・っち、ふざけやがってあのワイン野郎。」
(ぎゅるるるるる・・・)

「そういえばもう昼か。しょうがねぇ、気分転換に昼食でもとるか。」

なんとなく、知ってる人に会いたくなくてバスに乗り隣町へ向かう。
久しぶりに来たため、お店等が少し変わっていて、アーサーは周りを見回しながら
ゆっくり歩いて行く。人がやっとすれ違えるくらい細い小道に入ると、
こじんまりとした何かの店らしきものが見えてきた。

「こんな所にも店があるのか。」

興味本位でのぞいてみると、どうやらガーデニング用品店らしい。
ちょうど、新しい薔薇の剪定鋏が欲しかったんだよな。ちょっくら入ってみっか。

店内は薄暗く静かで、光源といえば、壁の高いところに設置してある横長の窓くらいだ。
あちこちに色んなものが置いてあり、大きいものから小さいものまで
見たことのない用具も沢山あったが、よく見て触ってみると一つ一つに細かな工夫が
施されていることが分かる。
過剰な装飾は一切なく、その物が役目を最大限に果たすことを考えて作られている
ことが見てとれた。特に種類が多かったのはジョウロとスコップである。
どの棚を見てもこの2つは必ずと言っていいほど置いてあり、大きさや形も様々だ。

ふと、植木鉢の奥にまぎれてキラリと光るものを目にした。
気になってしゃがみこんでみる。

「何か、お探しのものはありますか?」

カコンッ!

びっくりしたぁー!つうか、品物蹴っちまったー!!

声をかけられた方を見るとそこには、藍色の着物に身を包み倉庫内の暗闇に溶け込んで
しまいそうなほど黒い髪をした奴が立っていた。

「い、いや、その、新しい鋏が欲しくて…だな…。」

背は低く髪も少し長いが、声の低さからいって男だろう。
男にどんな鋏を探しているのか、と聞かれ用途を答える。
そして、男が混沌とした棚から素早く目的のものを手に取り持ってきた時だった。
派手な物音が入口から響き、深緑の洋服を着た男が3〜4人入ってくる。
自分を追ってきたことを察知したアーサーは、目の前の男の腕を掴む。

「庭はどこだ。」

庭さえあれば、あんな雑魚どもは簡単に追っ払える。
そして、今の時代どこの家にも庭は絶対にあるはずだ。
男の案内通りに、庭へと向かうとアーサーは唖然とした。
そこには植物が全く無く、石だけで造られていたのだ。
植物がなくては、ユニコーンを呼び出すことが出来ない。

「クソッ、時間がねえ。おい、お前ん家の庭借りるぞ。」

家の主の返事も聞かず、庭へ下りて小石を退けて土を表面に出す。
皮手袋をはずした手をおいて、指先に神経を集中させる。
あっという間に石しかなかった庭は、緑で覆いつくされた。

そうしてしまえば、後は簡単だ。ユニコーンを呼び出し、
相手を気絶させてしまえばいい。
アーサーの予想を寸分たりとも違わず、敵を易々と本部に送ることが出来た。

アーサーが縁側の方に目をやると、そこには呆然とこちらを見ている男がいる。
あぁ〜見られちまったなぁ。どうしようか。面倒くせぇ、こいつも本部に
連れて帰るか。

そうしてアーサーは、菊を半ば無理やり車に乗せて本部へ連れてきたのだった。



作品名:はいいろのゆび 作家名:Sajyun