【とある】とある神秘の氷彫刻師【①】
#3 学園都市本部
「着きましたわ。ここが学園都市の本部ですの。ここからはあなたが一人で。」
「うん。わかってます。」
「私はそこの喫茶店で待っていますから、帰りも送りますわ。」
「ホント、何から何まですみません。」
「気にしないでください。」
「ありがとうございます。じゃ、いってきます!!」
水野は白井に手を振り、学園都市本部へと歩みを進めた。
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「君が、水野凛君だね?」
水野は会議室に通されて、今は中年のオヤジと話している。
「はい。」
「私はあえて名乗らないでおこう。強いて言うなら、学園都市統括理事会の理事のうちの一人だ。
まぁ2ヶ月で基本的な勉学の知識と、日本語を習得した賢い君ならもう分かっていると思うがな。」
「学園都市統括理事会。
学園都市の司法・行政・軍事・外交などの運営を司る都市の最高機関。」
「さすがだな。
君の評判はいろいろと聞いているがここまでとはな。」
「はぁ。」
水野は焦った。このじいさんが何を言いたいのかが推測できない。
ただ長話がしたいだけなのか、それとも―――。
もし攻撃されたとき、ここは紛れもなく敵の領地だ。生き残れる可能性は低い。
「君は学園都市
この街
の目的は知っているかい?」
「神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの―――。レベル6。
人間を超えた身体を手にすれれば、神の答えにたどり着ける。それを製造し、所有するため。」
「あながち間違ってはいない。むしろ正解だ。
そして君にはこれから学舎の園を形成する5つの女子校に共通する試験を受けてもらう。
どれだけできるのか腕試しといったところだな。」
「わかりました。」
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「あれは、どうやら本物の[原石]のようですね。」
水野が別室で試験を受けている間、そこには2人の人間がいた。
「あぁ。そのようだな。しかもきわめて吸収力がいい。演算能力はそうだろうな。
あれの生い立ちが関わってくるのかもしれんが、いい研究材料になるだろう。
身体検査
システムスキャン
はどうだ?」
「常盤台中学は近日に控えているので出来そうだと。」
「まぁいい。どうせなら常盤台に入れてしまえ。急にやるよりもいいだろう。」
「そうですね。簡易計測器具ならご用意できますが?」
「あぁ。よろしく頼む。」
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「試験の結果の処理の間、能力測定をする。」
統括理事会の理事は、ではじめている結果に少々驚きながらこう告げた。
「そーですか。」
少女のほうはいかにも興味なさげに言った。
「では測定室に移動してくれ。」
男は思った。
この少女はまともではないと。
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SEID 水野凛
そこにはミットにような馬鹿でかい機械があった。
「これをどーすればいいんですか?」
すると白衣を着た女の人が〈実験〉の〈ルール〉を説明し始めた。
「わかりましたぁ〜。じゃあ水もらえますか?」
そのひとは不思議そうに1本のペットボトルをくれた。
『みてなよ。』
するとわたしの後ろに水の滝ができて、それがジェット噴射機のようになって、
そのまま機械に直撃した。
「えっ・・・?」
あれは驚いたよ。
だって気がつくと機械は壊れてて、
ただの残骸になっていた。
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あ〜あ。
機械ぶっ壊しちゃったよ。
こんにちは。
ブルーな気分の水野凛です。
ってだれに言っているんだよっ!
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「水野さん。」
中年オヤジがまたわたしの事を呼んだ。
「君は非常に特殊だ。原石の状態でこれだけの事が安定してできるケースはあー非常にめずらしい。
しかも君はかなり特殊な生い立ちを持っていますね?」
「・・・。」
「我々は君のことは大体調べがついています。
あの事件のことも。」
あの事件。
思い出したくなかった。
もう忘れていた。忘れたはずなのに、忘れて光の中に戻ったはずなのに・・・。
「君はあのときこの能力を使ってたった一人生き残ったそして―――。」
「やめてください。お願いだからやめてください!」
「言わないでください。もう・・・終わったことです。」
どうしてだろう。
こんなに悲しくなるのは。
悔しくて、悔しくて、そして切ないから。
だから逃げたくなる。
「終わったことなんですよ。過去のことなんです。もう。」
水野は歯をくいしばり、手にぎゅっと力をいれた。
「そうですか。わかりました。では本題に移りましょうか。」
中年理事はあっさりと引き下がった。
「君は、測定機の不祥事により詳しいことは分かりませんが確実に大能力者
レベル4
以上で
あることは確かです。君の能力をさらに磨いてもらうために、常盤台中学校に編入してもらいます。
しかしその前にきちんと身体検査
システムスキャン
を受けてもらいます。」
なんでこの人は歩きながら話すんだろう・・・?
水野は心の中でずっとその事を思っていた。
「じゃぁ終わり?」
急に話すのをやめた中年理事にむかって、水野は聞いた。
「はい。そうです。」
「帰っていいんですか?」
「はい。常盤台中学とはもうコンタクトをとってありますし、詳しいことをわざわざここで説明することもないでしょう。
これは常盤台中学への地図です。」
「じゃっ、さようなら!」
水野は軽い足取り(ほとんど全力疾走)で会議室を出て行った。
「・・・この子には楽しませてもらえそうだな。」
中年理事が窓を見てにやりと笑ったのを、水野は知るよしもなかった。
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「白井さ〜ん!」
携帯ショップに寄り新しい携帯を手にいれ、水野は喜びいさんで本部を後にした。
そしてなにやら上品な感じがぷんぷんする喫茶店のドアを思いっきり開けた。
『ばきっ!』
嫌な音がしてなかにいた客がいっせいに水野の方を向いたが本人は全く気づかない。
「白井さん!終わりました。お待たせです。」
「はぁ。いいんですの。」
優雅にミルクティを堪能していた白井は一瞬顔を強張らせたが、大人の余裕ですぐに立ち直った。
「あのですねぇ白井さん!」
『ボキっ!』
今度は椅子の足を一本折ったようだ。
(これはまさかの・・・。)
白井はこれ以上なにかされたら困るとおもい椅子から立ち上がった。
「行きましょうか、水野さん。」
と言うが早く、水野の腕をがっちりつかんで店から出た。
作品名:【とある】とある神秘の氷彫刻師【①】 作家名:三浦四菜