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yamatoへ…Ⅰ

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昼過ぎにノックする音がして寮母さんが入ってきた

  「はい、お待ちかねの…」

そう言って進に封筒を預けると“いい結果だといいわね”と言いながら出て行った
進はその封筒を緊張のあまりしばらく見つめていた。守にすぐ開けて結果をメールでいいから知らせろ、と言われていたのを思い出して守の机からはさみを借りると封筒の端を切り中に入ってる書類を取り出した。

  (合格と否…なのかなぁ…ドキドキするなぁ…今まで合格率0パーセントだろ?絶対無理
   なんだよな…合格したら…それこそ奇跡…)

そう思いながら書類を開いた


     古代 進        合格


はっきりそう記載されていた。

  (…マジ?今まで0%なんだろ?うわ…よかった…これで施設に入らなくて済む…
   お、そうだ兄さんに報告しないと…えっと端末で…アドレス呼び出して…)

進は端末を立ち上げると早々に合格した、とだけ入力して送信した。そしてすぐ食堂へ向かって走った

  「おう、進くんどうだった?」

幕の内がすでに待ち構えていた。進は合格通知を無言で見せた

  「すごいな!さすがは俺の弟子だ!よかった、よかった!頑張ったもんな!…ははは
   お前本当にすごいな!守なんか目じゃないぞ?ここだけの話ペーパーは得意じゃ
   なかったんだ、守はさ。ホント、すげぇよ!よし、お祝…と言っても限られた食材しかない
   から大したもん作れなかったんだが…ちょっとこっち来い」

幕の内に連れられて厨房の奥に入ると

  「ほら、お茶入れてやるからそこに座れ」

厨房の奥の打ち合わせ室のテーブルに焼きたてのスコーンとドーナッツが並んでいた

  「進くんは紅茶でいいだろ?…なにぼーっとしてるんだよ。座って。」

そう言って幕の内はコーヒー、進には紅茶を用意した。

  「おめでとう!本当におめでとう!優秀な生徒を持って俺も幸せだ!…少ししかないが
   お前が来てからこっそり小麦粉とかジャガイモとかくすねてたんだ。」

幕の内は小さい声で言った

  「ほら、あったかいうちに食べろ。郵便はお昼過ぎに来るからな。それを見越して時間調整
   して作ったから出来たてだ。やけどしないようにな」

ふかふかのスコーンとドーナッツ…進はまだ湯気の立つスコーンを手にとって食べた

  「…おいしい…甘い…です。」
  「そうだろ?これ甘味料じゃなくて砂糖使ったんだ。うまいだろ?ほら、ドーナッツに乗ってる
   グラニュー糖だって本物だ。食べろ~脳みそに糖分が一番必要なんだからな!」

進は合格した実感をじわじわ感じて涙が出て来た

  「バカだなぁ~なんで泣くんだよ?うまくて涙が出てきたか?」

そう言って幕の内もスコーンを一つ食べる

  「アッチィなぁ…気をつけろよ?ははは」
  「幕の内さん、ありがとうございました。幕の内さんのおかげで合格できました。」

突然進が立ち上がって涙を拭きながらお礼を言うと

  「いいんだよ、守の弟だ、俺の弟と同じさ。いいか、これから先お前は兄貴と同じ道を行く、
   と、言う事はそれなりにねたみが入ったり嫌味言われたり…思ってる以上に大変なこと
   なんだよ。言いたいやつには言わせておけ。やられたらやり返せ。お礼は倍にして返す
   のが礼儀だからな。自分からは一切手を出すな。相手から手を出して病院送りにしたって
   誰も文句言わないからな。優秀な兄貴を持つと大変だと思うがそれを誇りに思えたら…
   お前はすごいやつになると思う。
   忘れるなよ、お前の兄貴は訓練学校で伝説になってるぐらいすごいやつなんだ。それを
   抜くぐらいの気持ちで頑張れ。何かあったら連絡しろ。おいしいもの作って待っててやる
   からな。まぁ…座れよ。冷める前に食べろ。
   入寮するまで時間があるだろう?今まで通り一緒に勉強しよう。俺も懐かしくてさぁ…
   結構楽しかったんだ。」

そう言っていつものように笑った


作品名:yamatoへ…Ⅰ 作家名:kei