yamatoへ…Ⅰ
進が被爆して二日が過ぎて意識は戻らない状態が続いていた。時折苦しそうにもがくような仕草はするが意識が回復することはなかった
「…進…兄さんを一人にしないでくれ…」
守は昼間は訓練など通常勤務をこなし夜は中央病院で進の看病をしていた
「辛いか?がんばれよ…生きるんだ…進…」
進のいるICUは今回の被ばくで運ばれてきた人ばかりで誰もが同じ状態だった。この二日間で泣きながらICUを出て行った家族を見るたびに次は自分かとびくびくしていた
(…仮にも軍人がこんな弱いところ見せてどうする…)
そう自分に言い聞かせるのだが目の前で苦しんでる進を見るとその思いが飛んで行く…
(家族を守りたくて防衛軍に入ったのに…誰一人守れないのか?)
守が握った手を進がしっかり握り返してきた。苦しそうに唸り声をあげながら進の眼がうっすら開いた
「進!進!!わかるか?兄さんだよ、守だよ!…先生、モリタ先生進の目が…」
そう言いきる前にモリタは進のベッドにやってきた
「進くん、わかるかい?ここは病院だよ。キミは爆心地付近で倒れていたんだ。」
進は無言で医師のモリタを見た
「…私は進君の主治医になるモリタだ。よろしくね。(守に向って)意識が戻れば大丈夫
でしょう。骨髄も通常の働きに戻って白血病の恐れもなさそうです。朝までここにいて
異常がなければ個室へ移動しましょう。しばらく血液検査など続きますが…白血球の
働きに異常がなければ退院にも時間はかからないでしょう。」
そう言ってにっこり笑うと
「進くん、朝までちょっとにぎやかだけどここで休んでもらうね。で、このまま異常がなけれ
ば明日、個室に移ってもらうから…」
進は状況を把握できなくてただうなずくだけだった
「…進…よかった…本当に良かった…ちょっと…連絡するところがあるから待ってろよ。」
そう言うと守はICUから出て行った
「…お、真田か?俺だ…うん、何とかさっき意識が戻って…悪いが明日休暇届け出そうと
思って…悪いな、みんなにも伝えといてくれ…」
守は心配してる同僚へ連絡すると防衛軍本部宛に休暇届けをメールで送った。
そして乗り込んでる戦艦に艦長に連絡して明日休む事を伝えた
「沖田艦長ですか?夜分おそくすみません。えぇ…何とか意識を取り戻しまして…
すみませんが明日休暇を頂きたく…メールは送りました。…はい、よろしくお願い
いたします。」
守の艦は先日火星から戻ったばかりで新しい任務が決まってなかったので多少の融通が利いたので休暇を取ることにした
守は連絡が済むともう一度ICUに戻った。その時進は規則正しい寝息を立てて眠っていた