yamatoへ…Ⅰ
翌朝個室に移る前に採血して異常がないとの事なので進は個室に移された
「兄さん、今日仕事は大丈夫なの?」
ベッドの背もたれを少し起こした状態で進が守に声をかけた
「あぁ火星から戻ったばかりで今は訓練しかしてないからな。今日一日ぐらい大丈夫さ」
そう言って雑誌に目を通す
「学校…どうしたかな…いっぱい人いたのに…きっと何もなくなってるよね…」
守は雑誌を閉じると
「…何も考えるな…お前は自分の体の事だけ考えろ」
進の体にはたくさんのチューブがつながれていた
「兄さん、僕どうして助かったの?リニアに乗ってて…見たんだ…赤い遊星爆弾を。
家の方だった…」
「進は…爆心地に向かって歩き出したんだ。お前は爆心地付近で倒れてる所を救助された
普通なら何も残らないぐら吹っ飛んでる場所でお前が倒れてたんだから視察でヘリに
乗ってたやつもびっくりしたと思う。お前はそのヘリでここへ運ばれた。致死量を超える
放射線を浴びて…三日間意識が戻らなければあぶない、と言われていたんだ。
薬で白血球が増殖するのを防ぎ一時的な白血病から通常の血液に戻ったが骨髄が
正常に働いてくれるかしばらく様子を見ないといけないらしい。体力が回復すれば
退院しても大丈夫、との事だがしばらくは激しい運動などは制限されるって。」
守は進の手を取って
「すまんな…進。俺が“父さんと母さんを頼む”って言わなければお前は爆心地に向かって
歩きださなかったかもしれない…本当に悪かった。兄さんはしばらく地球にいるから
ここ出たら寮でこれからの事を考えよう」
進はしばらく考えたが
「…僕が…兄さんに会いたいって言わなければ…一日早く地下都市に避難したんだ…
そしたらとうさんもかあさんも死なずに済んだんだ…僕のせいだ…兄さん、ごめんなさい
僕がわがまま言ったから…ごめんなさい…」
そう言って泣きだした。守はそんな進の背中をたたきながら
「…進、これは仕方ないんだ。お前のせいじゃない。誰のせい、って言うならこの遊星爆弾
を落としてくる奴だ。お互い一人ぼっちじゃないんだ。これからは兄弟力合わせて生きて
行こう。」
守は進に言い聞かせてるようだったが自分に言っているのだった