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僕らのサマーウォーズ

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「はい。正確には、その混じったデータが危険なものなんです。昨日データ解析をしてみたのですが、その塵は、もともと一つの人工知能だったようなんです。」
「人工知能?」
「はい。ラブマシーンという名前だそうです。」
「ラブマシーン?」
そのネーミングに全員がはてなマークを漂わせながら復唱する。
「なんか、そんな曲を歌っているアイドルグループがいたような記憶があるんだけど。」
「あ、あたしも知ってる!」
その場で歌いだしそうなミミを放っておいて、空が素朴な疑問を漏らす。
「一体誰なのかしら?その名前をつけた人って。」
「さあ、それは僕にもわかりません。ただ、その人工知能は普通の人工知能ではないんです。」
「普通じゃない?」
「はい。一言で言うと、知識欲を持った人工知能なんです。」
「知識欲を持った人工知能?それは一体、どういう事なんだ?」
「普通の人工知能は、人間が発した命令をこなすだけですが、この人工知能は、自ら意思を持ってデータを収集していたようです。厄介なことに、そのデータの集め方は手段を選ばないもので、別の次元のネットワークを大混乱に陥れた形跡がありました。」
「向こうの次元は大丈夫だったの?」
「形跡を見てみたら、どうやらその次元に住む人たちに倒されたようです。」
「倒されたって、向こうにもデジモンがいるのか?」
「いや、おそらくいないと思います。そんな形跡は残っていませんでしたから。ただ、『キングカズマ』に倒されたと書かれていました。」
「キングカズマ?」
「僕にもよくわかりません。おそらく向こうの次元のネットワークを守るシステムのようなものだと思います。」
「そうなのか。それで、一体何が問題なんだい?」
ここで光子郎は一呼吸おき、そして切り出した。
「はい、簡潔に言います。ディアボロモンが、復活したんです。」
「ええええぇっ!」
一同驚愕の事実。しかし、まだ続きがあった。
「それだけではありません。今話した人工知能も再生されたようなんです。」
「そんな!じゃあこの騒ぎは・・・」
「おそらく、その二体が引き起こしたもので間違いないでしょう。」
「あたしたちはこれからどうすればいいの?」
ミミの質問に、光子郎は静かに答えた。
「これから、僕たちはネットワークの中に入り込んで直接やつを叩きます。」
一同驚愕。驚きを隠せないまま、太一が代表して一番気になることを聞く。
「ネットワークの中に入るって、そんなことできるのかよ?」
「可能です。ディアボロモンの時にデジモンたちはネットワークの中に入りました。そして太一さんたちも偶発的であるとはいえ、ネットワークの中に入ることができました。ゲンナイさんとも相談して、今は僕たちでもネットワークの中に入ることができるんです。向こうでもデジモンたちが準備をしているそうです。」
「じゃあ、またパタモンと会えるの?」
「はい。ネットワークの中で合流する手はずになっていますから。」
そして光子郎はパソコンのキーを叩く。やがて顔を上げた。
 「準備が出来ました。」
「よーし、それじゃあ出発だ!」
そして八人の選ばれし子供たちはパソコンの光に導かれて、その中へと姿を消した。


賑やかな宴から一夜明けて。
今日は親族が集まり、厳かな時間が陣内家に流れていた。健二はほかの参列者から訝しげな視線は送られたが、特に問題はなかったようだ。
夕方になり、式も終わりを告げ、それぞれが帰り支度を始めていた時だった。陸上自衛隊である陣内理一の携帯が鳴り響き、それに応答する。次第にその声は低く小さくなっていった。
「何か、あったんですか。」
理一が電話を切るなり健二は尋ねた。理一は少し考えたあと、話す。
「昨日、OZ内に正体不明のコンピューターウイルスが侵入したそうだ。今は被害はまだわずかだが、通信手段に影響が出ているらしい。というわけで、有事の際には出動命令が下る可能性があるという連絡が来たんだよ。」
「コンピューターウイルス?一体どんなものなの?」
いつの間にか隣にいたカズマが質問する。
「さあ、まだよくわからないらしい。もっとも、OZのセキュリティシステムは大幅に改良されているから、心配はいらないだろうけどな。」
そう言うと、理一は帰り支度を再開させた。
当然の話だが、この時は誰もこの直後に起こる大混乱も、次元を超えて現れる協力者のことも、まだ何も予想していなかった。
それは本当に、本当に唐突でしかなかった。突然、つけっぱなしにしてあったテレビが砂嵐に変わった。
「あら?どうしたのかしら。」
里香おばさんがリモコンを手に取りチャンネルを回す。だがどのチャンネルにしても、砂嵐の画面が変わることはなかった。
「どうしたの?」
「突然テレビが映んなくなっちゃたのよ。ほら。」
「変ねえ。別にこのテレビ古くはないのに。」
「使えなくなったのはテレビだけじゃないみたいだよ。携帯も圏外になっている。」
「え?マジ!?ほんとだ!このあと会社から電話あるっていたのに、どうすんのよ!?」
「それだけじゃないわ!家の電話も繋がらない!」
「ラジオもダメだ。」
「どういうこと?まるで、この家が隔離されたみたいになっちゃってるけど。」
「わからない。確認してくる。」
上田市のレスキュー隊員である陣内克彦は、そう言うと外へ出た。
「一体、何が起こっているのかしら?」
周囲にも次第に不安が広がる。
「健二くん。なんかこれ、あの時と同じみたい。」
「夏希せ・・・さんもそう思いましたか。僕も同じことを考えていました。」
「でも多分、それはないはずだよ。だって、あの時完全に倒したはずだから。」
「そうね。そうよね。あの時ラブマシーンはカズマ君が倒したもんね。」
「きっとそうだと、僕もそう思います。」
「でも、あの時は直接粉砕しただけだから、残った破片が集まって復活したという可能性もある。」
「いや、その可能性は低いだろう。」
「太助さん。」
「仮に、ラブマシーンが復活したとしても、一度はバラバラにされたんだ。つまり、ラブマシーンのデータをバラバラにしたということになる。それがまた一箇所に集まったとしても、再びネットワーク全体を混乱させるほどの知能は残っていないはずだ。」
「そうですか。じゃあやっぱりこれはどこかの通信局がエラーを起こしたものなんでしょうか?」
「おそらくそうだと思うよ。というより、そうであってほしいと僕は願うね。」
「そうですね。またあの時のような大混乱は起こってはいけないことですから。」
「ねえ、ちょっと。」
二人が会話している間に、自分のノートパソコンを開いていたカズマが声をかける。
「このパソコンはどうやらネットにつながるみたいだ。」
「なんだって?」
その声を聞いた全員がカズマの周りに集まる。確かに、このパソコンだけネットワークが切断されていないようだ。カズマはそこからOZへの入口へと向かった。だが。
ガシャン!という音と共に、入口への道が閉ざされた。その壁には何桁もの数字が並んでいた。
「これって・・・」
「あの時と同じ、暗号。」
それを見た健二の目の色が変わった。
「ちょっと待ってください。今解きます。」
作品名:僕らのサマーウォーズ 作家名:平内 丈