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僕らのサマーウォーズ

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そういうと健二はペンと用紙を借りて、そこに一般人には到底わからない何かを色々と書き始めた。
その間に克彦が帰ってきた。聞いてみると、上田市全体が通信不通になっているらしい。その影響で、電車もストップしているようだ。
そして十数分後、ものすごい勢いでペンを動かしていた健二が顔を上げた。
「できた!」
そしてキーボードを操る。見事パスワード入力に成功し、扉が開かれた。キングカズマは、その中に入る。同時に、息を呑む声が聞こえた。
「これは・・・」
一見、何も起こっていないように見えた。だが、明らかに何かがおかしい。その理由は、すぐにわかった。
何も動いていないのだ。ショッピングサービスも、スポーツサービスも、チャンピオンシップも、ビジネスシステムも、全ての機能が停止していた。例えるなら、時が止まった街とでも言おうか。とにかく、全てが止まっていた。
「何、これ?」
「なんでこんなことになっちゃてるの?」
「わからない。一体、これは・・・」
「何者かがOZの内部に侵入して、通信に関わるシステム、そしてOZ本体の動作を停止させたんだ。」
「そんな、なんで。」
「そこまではわからない。でも原因はわかる。」
「あの、昨日紛れ込んだというコンピューターウイルスか?しかし、OZのセキュリティは以前に増して強化されている。簡単には突破できないはずだ。」
「でも実際に突破している。」
「これからどうなるの?」
その質問に、OZの記録を確認したカズマは答える。
「どうやら、通信不通になっているのは日本だけじゃないみたいだ。」
「え?世界中で起こっているってこと!?」
「多分、世界の政府や首都圏では既に大きな混乱が起きていると思う。何とかして手を打つ必要がある。」
「何か手があるの?」
「今のところ使えるのはこのパソコンだけみたいだから、僕たちだけで原因を見つけ出して消滅させることだね。」
「つまり、戦えるのはカズマ君だけってこと?」
「そういうことになる。大丈夫。あの時みたいなヘマはしない。」
そう言うと、キングカズマはOZの深部へと向かっていった。


「う〜ん、気持ちいい♪」
結構大変な状況の今、こんなのんきなこと言っているのはミミである。案の定、丈がたしなめる。
「ミミくん、今はそんなこと言っている場合じゃないだろう。」
「だって本当に気持ちいんだもん。ね?パルモン。」
「ええ、とっても速くて気持ちいいわ。」
「丈。そんなに深刻にならなくってもいいじゃないか。大丈夫、きっとオイラ達でなんとかできるよ。」
かく言うゴマモンも時々仰向けになったりなど楽しそうにしている。それを見てため息をつく丈。
「やれやれ、君たちは本当にのんきだなあ。」
子供たちは今ネットワークの中にいた。そしてデジモンたちと合流してディアボロモンが向かった先へと急いでいた。
「なあ光子郎。」
「どうしたんですか?太一さん。」
「アグモンとガブモンはもう一度合体して、オメガモンになれるのか?」
「それは俺も気になっていた。あの時は世界中から送られてきたメールが力になってオメガモンに進化したんだ。今回は多分そういうことはないだろうから、進化できるのかという心配はあるな。」
太一とヤマトの心配に、光子郎が答える。
「きっと、進化はできると思います。初めてアグモンとガブモンが究極体に進化した時、タケルくんとヒカリちゃんの力が必要でしたが、それ以降は自分の力だけで進化できていましたから。もちろん、いつでも好きな時にとはいかないと思いますが、それでも進化は可能だと思います。」
「そうか、なら心配することはないな。オメガモンさえいれば、あんな奴何体かかってきたって負けっこないからな。な?アグモン。」
「もちろんだよ、太一。」
「ガブモン、頼むぞ。」
「任せて、ヤマト。」
「みなさん。もうすぐ目的地へと到着します。準備はいいですか?」
「おう!」
そして子供たちは勢いよく光の中へと飛び込んでいった。


「なんか、全く何も動いていないと気味が悪いわね。」
全機能を停止させているOZの様子を見た夏希は思わず感想を漏らす。
「何も動いていないなんてことはない。これをしでかした下手人が潜んでいるはずだ。」
捜索開始から約十三分後、依然としてなんの動きも見られなかった。
その時、庭の方で車の音がした。そこから現れたのは陣内侘助だった。夏希がすぐに迎えに行く。
「侘助おじさん!来てくれたのね!」
「ああ、家でまたなにか動きがあるんじゃないかと思ってな。」
「侘助!今日はお祖母ちゃんの一回忌だってのに顔も見せないで。」
「そう怒るなって。今騒ぎになっていることで色々とやっていたんだよ。」
「何かわかったことは?」
「お前たちはどこまで分かっているんだ?」
「今回の騒動は昨日OZ内に侵入したコンピューターウイルスが原因だってこと。そしてそのウイルスの正体はラブマシーンが復活したものである可能性があるってこと。」
「へえ、そこまで気づいていたのか。」
「じゃあやっぱりそのコンピューターウイルスってラブマシーンなの?」
「まだ確定したわけじゃないけどな。ほぼ間違いない。」
「でもラブマシーンはあの時確かにカズマ君が倒しましたよね。その状態からの復活は可能なんですか?」
「一般的な回答は『不可能』だな。あれだけデータを粉々にされておきながら再生するってのは無理な話だ。だが、今は普通じゃないことが起こっている。」
「何?普通じゃないことって。」
「簡単に言えば、コンピューターウイルスはラブマシーンだけじゃないってことだな。」
「!?どういうこと?」
ここで侘助は一呼吸おき、そして切り出した。
「今回の騒動を起こしたウイルスは一つではない。二つある。どうやら最初はその二つとも塵でしかなかったみたいだが、何らかの理由ですべてが再生されたらしいな。」
「そのウイルスの正体は?」
「何も分かっていない。OZ内に侵入した時はまだ塵同然だったからな。だからOZのセキュリティの目をくぐり抜けられたんだろうが。」
それを聞いたカズマの目に影が落ちる。
「カズマ君・・・」
しかしカズマはゆっくりと、そしてはっきりと答える。
「大丈夫。僕は負けない。」
それは決意に満ちた大人の声だった。
「しかし、OZの中に入れないんじゃ戦いようがないんじゃないのか?」
「それは問題ない。僕のパソコンだけはネットにつながるみたいだから。」
それを聞いた侘助は少し考えたあと、納得した。
「なるほどな。やはり、コンピューターウイルスの一つはラブマシーンで間違いないようだな。」
「どうして?」
「世界中のネットワークを停止させて、カズマだけを呼び寄せた。つまり、復讐をしようということだろ?」
「上等だよ。その勝負、受けて立つ。」
そしてキングカズマは再び捜索を始めた。そして、ついに見つけた。金色の杖を携えた、茶色い肌の仁王のような姿をした元人工知能。
「ラブマシーン・・・」
まるで、高みからキングカズマを嘲笑うかのように見下ろしている。
「コラァ!てめえまた滅茶苦茶な事しやがって!いい加減にしろ!」
作品名:僕らのサマーウォーズ 作家名:平内 丈