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僕らのサマーウォーズ

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メタルガルルモンの体の至る所からハッチが開き、そこから一斉にミサイルが発射される。この一斉掃射を浴び、ディアボロモンは凍りつく。そこに瞬間的に間合いを詰めたウォーグレイモンがドラモンキラーで切り飛ばした。メタルガルルモンはそれを体当たりで突き飛ばし、ガルルトマホークで追撃。そこにウォーグレイモンがさらにブレイブトルネードで追撃した。
「よし、止めだ!」
「ガイアフォース!」
「コキュートスブレス!」
強大な火球と冷気が同時に襲う。
ラブマシーンとディアボロモン、この二体が止めを喰らおうとするその瞬間はまさに同じタイミングだった。だが、この二体は止めを喰らうことはなかった。
当たった。そう思った刹那、技の軌道上にいたはずのディアボロモンの姿が消え、同時にウォーグレイモンとメタルガルルモンが吹き飛ばされた。それだけではない。ほかの完全体デジモンも全員吹き飛ばされたのだ。
「ウォーグレイモン!」
「何だ!?何が起こったんだ!?」
「おい、大丈夫か!?」
「みんな!」
突然起こった理解不能な出来事に、子供たちは戦慄した。キングカズマもまた、自分の拳の数センチ先にいたはずのラブマシーンに突然後ろを取られ、反撃をくらっていた。だが、こちらは画面の外から参戦しているため、何が起こったのかは理解できた。しかし、理解できたからこそ戦慄していた。
「そんな・・・これは。」
だがすぐ気を取り直し、画面の中でも戦っている戦友に事実を伝える。
「あいつらは今、ネットの中の時間を止めたんだ!」
「なんだって!?」
「今、あいつらが攻撃を受ける瞬間、ほかのすべての動きが止まった。その間に反撃されたんだ。」
「それはつまり、あいつらはこのネット世界の時間を自由に操ることができるということですか?」
「多分そうだと思う。」
「じゃあ、どんな攻撃を使っても全部かわされちゃうってこと!?」
「そう考えて間違いない。」
「ちくしょう、だから追い詰められていても余裕ぶっていたのか!」
「これからどうするんだ!?」
するとキングカズマの動きが少し止まる。だがすぐに話し出す。
「今から僕の知り合いが対策を取る。だけど軽く見積もっても時間が十分程度かかってしまう。」
「それまで、僕たちで時間を稼ぐんですね。」
「よし、わかった。」
その時、ミミが声を上げる。
「ねえちょっと!あいつらがどこにもいないわよ!」
「えええぇ!?」
「そんな、馬鹿な!」
「でもほんとにどこにもいないよ!」
「どこに行っちゃったの!?」
「全員一箇所に固まるんだ!!」
キングカズマが指示を出す。
「バラバラに動いていたら一体ずつ狙われる。奴らは自由にネット内の時間を操れるようだから、下手すると全滅する可能性がある。」
「じゃあどうするんだ?」
「様子を見る。奴らも相当のダメージは負っている。回復できるにしても、すぐには無理だ。」
「でも、回復されてしまったら大変じゃないか!」
「今仕掛けたところで、また反撃を喰らうだけだ。今はこっちの準備が整うまで時間を稼ぐことが第一だ。」
「そ、そうか、なるほど・・・。」
丈があっさり引き下がったところで、八人と九体は一箇所に集まり、それぞれ周囲を見回す。しばらくそんな膠着状態が続いたが、やがてタケルが声を上げた。
「あ!あそこ!」
指差した先を見ると、ディアボロモンとラブマシーンが揃ってこちらを見下ろしている。太一がキングカズマに話しかける。
「キングカズマ。ヤマト、メタルガルルモン、そして俺とウォーグレイモンが囮になる。その隙に一気に止めを刺してくれ。」
「わかった。」
そう話がまとまりそうなところで、待ったがかかった。
「ちょっと待って、囮なら私たちがやるわ。」
「空。でも」
「お兄ちゃん達はあいつらをやっつけることだけに集中して。」
「囮なら僕たちでもできますから。」
「そうしましょう。太一さん。」
少し考えたあと、太一は頷く。
「わかった。みんな頼むぞ。」
「ああ、まかしてくれ。」
「よし、今度こそ一気に蹴りをつけよう。」
「おう。」
子供たちは静かに闘士を燃やす。
「ホーリーアロー!」
エンジェウーモンから一閃が放たれる。それを合図にウォーグレイモンとメタルガルルモン、キングカズマを除いた全員が一斉に飛び出す。
ホーリーアローをかわした両者に、一斉攻撃を仕掛ける。
「いけええええええええええぇ!!」
その間に太一たちは後ろに回り、一気に決着をつける。ハズだった。だが・・・
「うわぁっ!!!」
立ち向かっていった完全体デジモンたちが、瞬間的に、一斉に吹き飛ばされる。
「なんだ!?また時間を止めたのか!?」
「いや違う!今度は時間を止めていない!奴らの体から何かが放出されたんだ!」
「何かって、何が放出されたんだ!?」
考えている余裕はなかった。
「! 見て!様子が変よ!」
見るとディアボロモンとラブマシーンの姿がどんどん朧げになっていく。やがて原型はなくなり、粉々になった。
「自ら自分の体をデータの塵にした!でもどうして?」
その答えはすぐにわかった。二箇所に固まっていたデータの塵は一箇所に集まり、そこから新しい個体が生み出されたのだ。
「あれは・・・」
「ディアボロモンとラブマシーンが・・・」
「合体した・・・?」
突然起こった予想外のできごとに、画面の内外を問わずその場にいた全員が呆然としていた。だが相手はこちらが我に返るまで待ってはくれなかった。
突然、メタルガルルモンとヤマトのすぐ横にいたキングカズマの姿が消えた。いや、消えたのではない。突然後ろに現れたディアボロモンとラブマシーンの合体に蹴飛ばされたのだ。ただの蹴りのはずなのに凄まじい勢いで飛ばされたから、まるで消えたように見えたのだ。
「今度もまた時間を止めたのか!?」
「いや違う。わかった。あいつらは自分の体を分解して、姿を隠して後ろに移動したんだ。そして、さっき他の皆が弾き返されたのも、自分の体の一部を吹き付けたから。」
「じゃああいつは、あいつらは、自分の体を自由に変えられるってのかよ!?」
「そういうことになるな。現に、あいつらは今俺たちの目の前で合体しやがったんだ。」
「くそ、思ったよりも手がかかりそうだ。」
その時だった。
「うわぁあああ!」
「うぉおおおお!」
突然、ズドモンとアトラーカブテリモンが乱闘を始めたのだ。
「どうしたんだ!!ズドモン!」
「やめてください!」
「ち、違う!オイラの体が勝手に動かされているんだ!」
「きっと、あいつが操っとるに違いあらへんわ!」
「なんだって!!?」
「そんな!確かにあいつらはこのネット世界の時間を操ることはできますが、だからといって僕たちまで操ることなんて・・・」
そこで光子郎は思い当たった。
「まさか、さっきのあいつらのデータの塵を浴びたときに自分たちのデータをデジモンたちに混入させていたのかも・・・」
「それってどういうこと!?」
「つまり、先ほどの攻撃の時に自分たちの体の一部を入り込ませて、それで自由に操っている可能性があるということです!」
「でも、本当にそうだとしたら・・・!」
まさにその言葉を待っていたかのように、六体の完全体デジモンが一斉にお互いを攻撃し始めた。
作品名:僕らのサマーウォーズ 作家名:平内 丈