僕らのサマーウォーズ
「そんな!お願いやめて!」
「やめて!やめてえええええええええええ!!」
「くっ・・・!くそっ!止まれえ!」
「だめだ!止まらない!!」
「このままじゃ大変でっせ!」
「お願い!止まってえええええ!!」
願いは、虚しかった。
「ヒカリ!!お願い避けて!!!」
「エンジャウーモn・・・」
凄まじい勢いで突っ込んでくるエンジェウーモンを、ヒカリは、かわすことができなかった。そのままヒカリはエンジェウーモンもろとも壁に激突し、そして動かなくなる。
「ヒカリちゃん!!!」
「空!!!」
「ガルダモn・・・」
「光子郎はん!!!」
「アトラーカ・・・」
「丈!!!」
「ズドモn・・・」
「ミミィ!!!」
「リリモn・・・」
「っタケル!!!」
「ホーリーエン・・・」
互いのパートナーを呼ぶ絶叫と轟音が連続で鳴り響き、静かになった時、六人と六体は周りの風景と同じように全く動かなくなった。
「ヒカリ・・・・・・・・。」
「タケル・・・・・・・・みんな・・・・・・。」
残された者たちは、目の前の惨状に固まっていた。太一も、ヤマトも、ウォーグレイモンも、メタルガルルモンも、そしてカズマと陣内家の全員も、微動だにすることができなかった。
「ダメだ・・・。」
となりで、侘助の落胆の声が聞こえ、みんながその方向を向く。実は先程から侘助はカズマのパソコンに自分のパソコンを繋ぎ、ネットにつながる状態にしてからラブマシーンたちの戦闘能力を落とそうと計画していたのだ。
「あいつらは自分たちのデータをいじられないように厳重にロックをかけている。どうあがいても破ることができない。」
「じゃあ、今回はあいつらの防御力を落とすことができないってことですか?」
「そういうことになる。」
「そんな・・・。」
その時、パソコン画面にこんな文字が浮かび上がった。
『コレデ邪魔ハイナクナッタネ。モウ一度、遊ボウ。今度ハ負ケナイヨ。』
その内容に、カズマは唇を噛み、下を向く。沸々とこみ上げてくる怒り。
「奴は、今回もゲームのつもりなんだ・・・。」
下を向いたまま、太一たちに質問する。
「ねえ、一つ聞きたいことがある。君たちは、ネットの中のデータじゃなく、肉体を持った生物なんだよね。」
太一は、声を震わせながら答える。
「ああ、そうだ。」
その返事に、怒りが爆発した。
「いい加減にしろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「てぇめええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!」
「よくもみんなをおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
凄まじい速度と気迫で真っ直ぐに飛んでいく三つの影。それは、たった一つの影の前に弾き返された。だが、壁に叩きつけられたにもかかわらず、三体が三体ともまるでダメージを受けていないようだった。
「ぜったいに許さない!!」
「覚悟しろ!!」
「ウォーグレイモン!!」
「メタルガルルモン!!」
ウォーグレイモンとメタルガルルモンの体が頭に収納されていく、頭部だけになった二体は対の腕となり、オメガモンに進化する。その神々しい姿を敵の前に向け、そしてゆっくりと、しかしはっきりとした言葉で言った。
「さあ、来い。」
再び現れた宿敵を前に、相手はニヤリと笑ったような表情を出した。そして、カズマのパソコンに繋げていた、侘助のパソコンと夏希の携帯にメッセージを送る。
『キミタチモ遊ボウ。今度ハ負ケナイヨ。』
メッセージが消えたあと、夏希の携帯は花札の舞台に切り替わり、侘助のパソコンはおびただしい数の数字の羅列が表示された。
「これは・・・」
「リベンジをしようということか。」
だが、まだ終わっていない。画面上部に突然『00:10:00:00』という数字が表示されたのだ。それを見た面々は息を呑む。
「これは、もしかしてまたカウントダウンを・・・」
「今度は一体、何をやる気なんだ?」
「あの時は人工衛星を落とそうとしたのよね・・・」
ネット世界でカウントダウンを見ていたヤマトが話す。
「俺たちの時は、核ミサイルを落とそうとした。」
「じゃあ、今回は一体・・・」
「何を落とす気なんだ・・・・・・。」
両者とも、あの時はネットの情報から何が落ちてくるのかがわかった。だが今回はそのネットが機能不全に陥っているため、何が起こるのかが全くわからない。だが、相手が相手である以上、何をしでかすのかはおおよその推測が立つ。いや、もしかするとその推測のはるか上のことをやる可能性もある。
知ることはできない。だが予測はできる。その状況がより一層の恐怖をかきたてていた。
カズマが声を荒げる。
「二人共!絶対に十分以内にあいつを倒す!」
「わかった!」
健二と夏希もそれぞれの位置についた。
『ソレジャア、ハジメルヨ。』
そのメッセージを読み終えると同時に、カウントダウンが始まった。
「健二!夏希!あいつらは自分のデータを使ってお前たちに勝負を挑んでいる!勝てばやつの能力を格段に下げることができる!」
「わかった!」
「わかりました!」
そして、それぞれがそれぞれの戦いをはじめる。
健二は目の前の暗号を解き始める。普通の人ならただの数字の羅列にしか見えないが、そこから健二は中に隠されたパスワードを導き出すのだ。普通なら何時間単位で解く問題のはずなのだが、彼の常軌を逸した頭脳は数分という短時間で軽々と、とはとてもいかないが、解読することができるのだ。だから、この問題を十分以内に解くことは、きっとできる。
そして三分二十三秒後、解読が完了し答えを打ち込む。『Correct(正解)』と表示されたあと、数字の羅列が消える。一息ついた時だった。
画面に再び数字の羅列が表示されたのだ。
「ええ!?そんな、なんで?」
健二は驚いて画面を睨む。すると、右上にこんな表示が。
『あと二問』
「あと二問!?十分間で三問も・・・!?」
しかし、今は呆然としている時間はない。すぐに取り掛かる。
夏希は、花札を中心にディアボロモンとラブマシーンの合体(以下DL)と向かい合っていた。ルールが説明される。
『今回のゲームでは、ポイント方式を採用いたします。より大きい役で上がるほど、相手から奪えるポイントが大きくなります。先に自分の持ちポイント10000点が0になったプレイヤーが負けとなります。』
「わかった。それでいいわ。」
『それでは、ゲームスタートです。』
夏希は、序盤から好調に飛ばす。
『タネです。』
「こいこい!」
『赤短です。』
「こいこい!」
『おめでとうございます。夏希さんの勝利です。1000ポイントが相手プレイヤーから送られます。』
「さあ、どんどん行くわよ!」
夏希は手を緩めない。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
二つの勇ましい雄叫びとともに、目の前の化物に突っ込んでいく。だが、今度はただ突っ込んでいくだけではなかった。二体同時に突っ込んでいくと見せかけての後ろからオメガモンで切り抜く作戦である。
作品名:僕らのサマーウォーズ 作家名:平内 丈