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【亜種】彼岸花

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他の用事を済ませ、林を抜ける。
途中、彼岸花の群生する場に行き当たり、鮮やかな色合いにカイトは目を細めた。
いつもならその美しさを愛でるところだが、今は赤い花弁がアオイの死と強く結びつき、胸の潰れるような思いに目を閉じる。


幻でもいい。もう一度お会いできれば。


さわさわと通りすぎる風に混じって、微かに鈴の音が聞こえてきた。この時間に人が通るのは珍しいと、カイトは目を開けて場を明け渡す。木立に紛れて通り過ぎるのを待っていると、鈴の音が徐々に近づいてきた。

「えっ・・・・・・」

驚きの余り、小さく声を漏らす。
近づいてくるのは、自分と同じ人形。見たこともない黒い衣装を身に纏った、赤毛の男の人形だった。彼の手にある彼岸花が揺れる度、澄んだ鈴の音を立てる。
人形の後ろから、年齢も性別も異なる人々が、静かに列をなして歩いてきた。
カイトは身を隠しながら、列の先頭を歩く男をしげしげと眺める。


彼は、「鬼子」なのだろうか。


鳥飼に聞いたことがあった。制作過程で極希に毛色の違う人形が出来てしまうことがあると。それらは「鬼子」と呼ばれ、人に災いをもたらすと言われると。
出来てしまった「鬼子」は、人形遣いによって無に還されるはずだが。


異国の格好をしているから、海の向こうから来たのだろうか。


深紅に咲き誇る彼岸花の中にあって、より際だった髪色が目の前を過ぎていく。声を掛けてはいけない気がして、カイトは一層身を縮めて、列が行き過ぎるのを待った。
その途中、列の中に、今朝行きあった男の父親の姿を見つけ、危うく声を上げそうになる。亡くなったはずの父親は、穏やかな顔で歩いていった。
何処へ行くのかと目を向ければ、その先は霞がかかって見通せず、ただ小さな水音が聞こえるだけだった。
先頭を歩く赤い髪が霞の中に消え、付き従う人々も躊躇うことなく歩を進めていく。カイトは、そっと列に近寄ると、彼らとともに霞の向こうへと進んだ。


水音が近づき、目を凝らせば、川岸に多くの小舟が止まっている。赤毛の男が人々を誘導し、数人ずつ乗せた。男が小舟を押すと、ゆるゆると向こう岸へ向かっていく。
一体何処へ向かうのかと、カイトが身を乗り出すと、男が振り向いた。鮮やかな赤い瞳に真っ直ぐ見つめられ、カイトは言葉もなく、ただ立ち尽くす。
何かを言う間もなく男が近づいてくると、穏やかな声で、

「君は駄目だよ」

肩に手を置かれ、カイトは体の向きを変えられた。問おうにも何から切り出していいか分からず、優しく押されるままに、霞の外へと追い出される。


作品名:【亜種】彼岸花 作家名:シャオ