【亜種】彼岸花
赤毛の男が、まるで子供を慰めるように優しく髪を撫でながら、「君のせいじゃない」と呟いた。
「君は巻き込まれただけだ。君のせいじゃない」
カイトは堪えきれず、涙に濡れた顔を相手の肩に押しつけると、声を上げて泣いた。
しばらく泣き続けたカイトは、二・三度空咳をすると、顔を上げる。
「・・・・・・鳥飼様に、全てお話ししようと思う。取り合って貰えるか分からないけれど」
それが自分に出来る償いだと言うカイトに、赤毛の男は腕を解くと、
「お守りだ」
そう言って、一輪の彼岸花をカイトの手に持たせた。
「本当に何処にも居場所がなくなったら、迎えに来るよ」
男の言葉に、カイトは力が抜けたように笑う。
「そうか・・・・・・。その前に、名前を聞いていなかった。俺はカイト。お前は?」
「名前?」
カイトが名乗ると、相手は意外そうな顔をして、
「私に名前は」
言い掛けるが、途中で口を噤んだ。
「名がないのか?すまない、知らぬこととは言え」
悪いことを聞いてしまったかと、カイトが申し訳なく思っていると、赤毛の男は微笑み、
「いや。私の名は 」