yamatoへ…Ⅱ
進の授業は橋本を卒業して防衛大学の講師がやってくるようになった。
他の4人に対しては防衛大学の講師の授業が半分と実技前の講習が半分と忙しい日々を送っていた。
なかなか埋まらない溝に進は焦っていた。
(…追いつけない。どうしたらいいんだ!)
進はがむしゃらになっていた。寮に戻った時はひとりで部屋にこもり勉強を続けた。解らない所は次の日必ず講師に聞いた。しかしそう思っていたのは進だけで他の4人は異常なまでの進の早さに焦っていた
「進くん、最近無理してるね」
経過を見るために土曜日の今日、病院に来てそう言われた
「図星、って顔してるよ。ちゃんと睡眠取らないと倒れるよ。抵抗力が落ちたらまた白血病
が再発するとも限らない。今じゃ白血病は死に至る病気じゃないが治療に体力と入院
が必要だからきっと大変な思いをする。任期の延びたお兄さんも気が気じゃないと思う
し…すぐ飛んで帰って来れないんだからこそ心配かけないように自分の体の管理は
きちんとしないと。」
「でも先生、やらないと追いつけないんだ!いやなんだよ、一人置いて行かれるのが!」
まるで…一人残されて周りが死んで行ってしまった時のようなおびえ方だった
「いいか?人生後1年で終わるわけじゃないんだ。ほんの数か月…遅れてるだけなんだ
よ?そんなのこれからの1年で取り戻せばいいじゃないか。今すぐ取り戻さないとダメ
ってわけじゃないだろう?いいか?自分を大切に出来ないやつは人の事大切になんか
出来ない。自分をしっかり持って…頑張りなさい。このまま今日は一日病院に泊まって
少し検査しよう。何もなければ明日帰っていいから。わかったね?」
進は“でも…”と喰い下がろうとしたが
「私は医者だからね。患者の命が短くなるような事は決してさせない。今回は検査入院
だから検査入院用の部屋を取るからうるさくないよ。」
そう言いながらモリタは入院病棟と話をして一泊する部屋を決めた。
「このまま入院受け付けへ向かって。検査に何もなければまた一か月後に。」
進はとぼとぼとモリタの診療室を出て入院受け付けに向かった。
看護ロボットに案内されていった部屋は寮より狭い部屋だった。退屈しないよう小さな端末が置いてある。画面を開くと明日の検査の内容と注意事項が記載されていた
「何もすることない…って久々かも…」
進はそう言うと狭いベッドにゴロンと横になった。確かに最近熱っぽい事が増えた。時々立ちくらみもする。貧血なのだろうか?寮の食事に変色があるわけないからきっと自分の体調が悪いんだと改めて思う。
「勉強しないと…間に合わないんだ…兄さんは最前線に行ってしまった…訓練学校に入れ
たけど戦闘に間に合わなかったじゃ済まされないんだ…」
進はそうつぶやいた