yamatoへ…Ⅱ
結局進は今まで一か月置きに病院に行っていたが体の数値が異常と言うわけではないが放って置くと悪化する恐れがあるという事で毎週金曜日学校が終わったらそのまま病院に行って検査入院をすることになってしまった。
進の場合助かった場所が場所なので検査結果はすべて軍に報告されていて他の患者のバロメーターになっていた。いわば実験台のようなものだった
「こんにちは」
「お、ちゃんと来たね?じゃぁまず血液検査から…血圧と体温はその後で…」
モリタと時間をきちんと合わせ検査入院用の部屋で待ち合わせをする。
「じゃぁ尿検査…これに尿をかけて袋に入れて棚に置いてね。そのままCT撮るから…」
いくつかの検査を経て病室に戻ったのは夜だった。出された夕食が冷めていた
食事をしているとノックの音がして“モリタだよ、入るね”と言いながら進の部屋に入って来た。モリタの手には自分の食事が並べられている
「一人じゃつまらないだろう?」
進のベッドの横のパイプ椅子を引き寄せると進の横に座って“いただきます”と言った。
進は余り食事が進まなかった
「どうした?検査だから病院食じゃないんだが…食欲ないのか?」
確かに余り食欲はなかった
「いえ…味気なくって…」
いつも自分の周りには仲間がいる
「普通の病院食に比べたらいいもんだぞ?それより疲れやすくなってないか?」
「…最近ちょっと疲れやすいかもしれません。ずっと動いていればいいんだけどちょっと
休むと次に体を動かす時だるさを感じます。」
「そうか…さっき体温…少し高いんだよな。37.3°…微熱なんだが白血病の再発する時の
症状と少し似てるんだ。今日の検査結果を見てみないと何とも言えないが少しこらえない
と入院しての治療になるかもしれないぞ。」
「先生、今休んでるわけにいかないんだ。体育見学にしたら許してくれる?」
「…そうしてやりたいのはやまやまなんだが…毎週白血球の数が少しずつだが増えている
このまま増え続けると医師として学校はしばらく休む事にこちらから働き掛けるかもしれ
ない。進くんが楽しいのはわかるが…」
「先生、薬で何とかならないですか?」
「確かに白血病を抑える薬はある。でも無理さえしなければ再発しないんだ。自分の体
をもう少し労らないと…それも仕事だと言っただろう?」
「そうなんですが…」
「私はね…進くんを見てると息子を思い出すんだ…」
「息子さん?」
「私は息子を救えなかった…息子の代わりと言っては何だがどうしても…進くんを救いたい
私のような医師はどこにでもいる。遊星爆弾の被害者は数えきれない程なんだ。
救えない命を私は仕事柄たくさん見て来た。普通なら救える命も搬送時間に手間かかっ
て間に合わなかった人だっている。
進くんは充分間に合うんだ。命を粗末にしないでほしい。」
「先生…」
「確かに進くんの体の事はすべて軍の方に報告している。治療費も全て軍から支給されて
いるがだから言ってるんじゃない。病院の中には万が一進くんが命を落としたら私のせい
になると思って病院にいられなくなるんじゃないか、とか言ってくる奴もいる。
でも違うんだ。進くんに未来をかけたいんだよ。今の目先の事ばかり考えて無理して…
再発したら全て終わってしまうんだ。頼むから…少しゆっくりしよう…」