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yamatoへ…Ⅲ

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  「大介、お茶飲んだら荷物二階に上げてらっしゃいよ。」

そう言って母親は日本茶をテーブルに置いた。すると次郎が

  「にーたん、にーたん」

と言いながらおもちゃを持ってくる。

  「次郎、お兄ちゃんは帰って来たばっかりで疲れてるから少し待って。」

母親があやすように抱き上げると次郎は手足をばたつかせて暴れる

  「母さんいいですよ、次郎にお土産があるから」

そう言って大介は自分のバッグをゴソゴソして“はい”と言って小さな袋を手渡した

  「ママ、ママ!」

次郎は母親に報告しに袋を見せた

  「何だろうねぇ?次郎開けてみて?」

そう言いきる前に次郎は袋を開けていた

  「本!本!」
  「よかったわねぇ、次郎!リニア大好きだもんね。」
  「リニア好きなんだ。よかった…何買ったらいいか悩んじゃって…チップより絵本の方がすぐ
   見れていいかな?って思ったんだ。」

次郎はおもちゃの事を忘れてしまったのか絵本に没頭していた。

  「母さんあの絵本の後ろにチップが入ってるから次郎が端末いじれるようになったらそれ
   使ってください。」
  「あら、便利な絵本が出てるのね。ありがとう。」

母親も座って自分のお茶を飲んだ

  「あの…これ…」

進も自分のカバンから袋を二つ取り出してお茶の横に並べた

  「青い袋を次郎くんに、赤い袋は島のお父さんとお母さんに…」
  「あら…」

母親は次郎を呼ぼうとしたが進は“いいです”というゼスチャーをして赤い袋を差し出した

  「何かしら?気を使わせちゃってごめんなさいね。…まぁ…いいわねぇ…」

袋の中にはフェイスタオルが二枚ピンクと水色とかわいらしくラッピングされて入っていた。手にとって見ると手触りがとてもよく薬品臭い臭いもない。

  「高かったでしょ?このタオル…こんなにふんわりして。」

母親が驚いて表示を確認した。

  「すみません、タオルなんてたくさんあると思ったんですけど…」

照れ臭そうに進が言うと

  「ううん、嬉しいわ。ありがとう。今コットンをたくさん使ったタオルなんて高くて買えない
   からね。これで毎朝顔洗うわ。ね、父さん。」
  「あぁ、ありがとう。そうさせてもらうよ。」

すると一通り絵本を読んだ次郎がテーブルにやってきて青い袋を発見した。次郎が手を伸ばしてとろうとしてたので島が

  「ほら、次郎。古代のにーちゃんがお前に、ってお土産買ってきてくれたぞ?」

そう言いながら次郎に渡すと次郎はまた母親の所に報告に行きながら袋を開けていた

  「ン、ン!」

袋の中には水色のタンクトップに濃い青のパーカーがセットになって入っていた。それもコットンだった

  「おぉ~かっこいいなぁ!次郎よかったなぁ!」

次郎は嬉しそうに服と絵本を抱えたまま走り出した

  「古代くん、ありがとう。あの子新しい洋服余り持っていなくって…大介のお古はもうない
   んだけど親戚中からお古が集まってきてね…そればっかり着てるから…嬉しそうね。」

地上で生活できる部分が減りつつある今コットンの製品はことごとく高値になっていた

  「そう言えば…私もお古ばかりでした。中には女の子用の物までありました。」

進は思い出したようにそう言うと

  「コイツもお兄さんと10歳離れてるんだよ。」

島が横から入って来た

  「あら、そうなの?お兄さんはよく遊んでくれた?」

母親が聞くと

  「いえ、余り遊んだ記憶はありません。学校から帰ってくるのは遅かったし寮生活に入って
   しまいましたから…夏休みとかは近くの山で虫を捕りに行ったり海が近かったので泳ぎを
   教えてもらったり…でも特訓に近かったかもしれません。海の近くに住んでいるのに
   溺れると恥ずかしいだろう?って言われて…いなかならでは、だと思います。」

進の答えに母親は
  
  「そう…やっぱりこれだけ離れるとなかなか一緒には遊べないわよねぇ。でも環境が整って
   いたらいろいろ遊べるのね。」

気付くと次郎は島の膝の上で絵本を見ている。ポケットからは進の買ったタンクトップの一部がねじ込まれしわくちゃ状態で入っていた

  「せっかく頂いたのに…」
  「気にいってくれたんだったらいいんです。」

進はそう言って笑った。島は進の笑った顔を見て

  (あんな風にも笑えるんだ)

と初めて知ったような気がした。






作品名:yamatoへ…Ⅲ 作家名:kei