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yamatoへ…Ⅲ

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  「ふぅ…」

お茶を頂いて荷物を置きにリビングを出て二階の部屋にやってきた。島の実家はテラスハウスタイプになっていて広い間取りになっていた

  「疲れたか?悪かったな、なんか気を使わせた見たいで。」

島はお土産の事を言っていた

  「いや、初めてお邪魔するんだから当然だよ。…って兄さんが言ってた。実は兄さんに
   相談したら手土産は必要だって言われて…」
  「ははは、そうか守さんが、か!」
  「最初お菓子かなんかにしようと思ったんだけど好みとか分からなくて…だったら使って
   もらえるものにしようと思ったんだけどなかなかいいものが浮かばなくてさ。で、ありき
   たりなタオルと洋服になっちゃったの。ホント個性のないモノ選びで悪かったな。」

兄さんならもっと気の利いたものを買ってくるんだろうと進は思った

  「いいんじゃねぇの?モノをもらって文句言う親じゃないし。まして中学生がそこまで気を
   使ってくれたことですっげぇ喜んでると思うよ。まぁ守さんの口利きって言わないでおく
   よ。お前の名誉のために!」

島は笑いをこらえながらそう言った。

  「でもお前いいセンスしてるよ。大丈!」

島は自分の顔に何かがぶつかって足元に落ちた。

  「うるさい…けどお前にもそのタオルやる…連れてきてくれたお礼だよ!」

進は照れ臭かったのか荷物を整理するかのように島に背中を向けてそう言った。
島の足もとにはかつての海や空を思わせるような蒼い色に波や雲を思い出させるような白い色のラインが入ったコットンをたっぷり使ったタオルが落ちていた。タオルはきれいにラッピングされていて蒼い空に白い虹がかかっているように見えた。
島はそのタオルを拾うと

  「ありがとな。海と空とつながって見えるような色だな…」

そう言って自分のカバンに入れた

  「ここ、トウキョウシティーとは思えないほど静かだな…」

進は窓を開けて下の公園を見ながら言った

  「もともとトウキョウシティーの中心に住んでたわけじゃないし静かで治安が良くて…で、
   尚且つ普通の所より少し広い所を選んだらしい。…俺がいつ戻ってきてもいいように俺の
   部屋もちゃんととっておいてくれてるんだ。」
  「そうなんだ…いいな…戻って来れるところがあると…」

島は進の言葉にはっとなった。両親のいない進は戻るところがない…

  「俺、寮を出されたらもう施設に行くしかないんだ…」

下の公園で親と遊ぶ子供たちを見ながら進が寂しそうにつぶやいた

  「古代は…それで志願したのか?」
  「…そうだよ…両親の仇を取りたかったのが一番だけど施設に…行きたくなかった。兄さんは
   私設のきちんとした所へ入れようとしてたみたいだけど遠回りしたくなかった。一日でも
   早く兄さんと並んで一緒に出撃したいんだ。」

島は初めて進の口から決意を聞いたような気がした。進の眼は変わらず下の公園を見ているがその視線は厳しく誰も寄せ付けないオーラを出していた。

  (俺たちと全く心構えが違う。俺たちは両親のために予備生になった。でも古代は違う
   明らかに戦うために予備生になったんだ…だから三か月のハンデもすでに乗り越えて
   一緒に月基地へ向かうまでに腕を上げてきている…俺は…この一年何を考えて勉強
   したり訓練したりしてたんだろう…俺も心を入れ替える時期なのではないか?)


しばらくするとバタン!と大きな音がして父親と次郎が買い物から帰って来た。その音を聞いて島が

  「下に戻ろうか」

と声を掛けリビングに二人は戻った





作品名:yamatoへ…Ⅲ 作家名:kei