yamatoへ…Ⅲ
「さぁ…食べましょうか。古代くんのお口に合えばいいんですけど。」
そう言いながら母親がエプロンを外しながら席に着いた
「頂きます!」
次郎の大きな掛け声にテーブルに着くみんなが声をそろえて“頂きます”と言った
「…うわ…おいしい…」
大きな唐揚げをひとつ取った進が一口で入らずほふほふさせながら食べて一言そう言った
「そう?よかったわ。サラダとかたくさんあるから遠慮しないで食べて?残したら明日の朝も
同じメニューになるわよ?」
島の母は優しく笑う。次郎はそれを聞くと“別にいいもん!”と言いながら口の周りを汚しながら一生懸命食べる。一生懸命食べる次郎の口を母親はさらに優しい顔で拭いてやる。
ありきたりな普通の食卓が進にはとてもうらやましい光景に見えた
(こんな地下都市じゃなく地上で普通に暮らせたらもっと幸せなのに…島だって家族と一緒
に住みたいって思ってるはず…)
「寮じゃこんなアツアツ食べられないよな!」
島の言葉にはっとなって
「作り置きだからね。ほんとアツアツのから揚げなんて食べた事ありません。本当においし
いです。」
「あら、そんな事言ってると大介と古代くんが来る時は唐揚げになっちゃうわよ?」
はやり島の母は優しく笑う
「ゼイタクです。でもリクエストしてもいいですか?」(進)
「なんだか私に他の料理が作れないってなると困るから次は違うの作るわ。次来る時
楽しみにしててね。」
島の母の言葉に
「そうだね、他にもおいしいものがあるんだよ。大介が帰ってくるとき古代くん一緒に来なさ
い。もう手ぶらでいいから…。君の気持は充分わかったから…子供は気使いなんて
しなくていいんだよ。大介の友達は私たちの息子と同じ。わかったね?さぁどんどん
食べないと次郎に食べられてしまうよ。」
進は“ハイ”と言って今度はサラダに手を伸ばした
食後はお茶を飲みながら他の予備生の話をしたり訓練の話をしたりした。そのうち次郎が眠たくなったようでソファーでうとうと始めたので島が抱えて次郎の部屋に運んで行った
「私も兄が帰ってくると寝たくなくてずっと同じ部屋にいました。」
進が過去を振り返る
「一緒にいたいけど母も父も兄に意識が向いてしまうのがいやでヤキモチやいて母を
困らせたことあります。それを思うと次郎くんは偉いと思います。」
「ははは…古代くんもそうか。実は先週大介が君を連れて戻ってくるって言ってから妻は
ソワソワしててね…次郎に言うとはしゃいじゃうからぎりぎりまで言わなかったんだ。
そして昨日次郎に兄ちゃんが帰ってくるよ、って言ったら黙っちゃってね…最近の妻の
ソワソワはそれだって、子供心に分かったんだろう。ちょっと寂しそうだったかな。
でも大介が戻って来たらあの調子。やっぱりお兄ちゃんが帰ってくるって嬉しいことなんだ
って次郎もわかったんだろう。古代くんも一緒だし…」
そのうち島がリビングに戻ってきた
「重くなりましたね」
「寝ちゃうと力が抜けて更に重く感じるのよ。ありがとうね、大介。」
母はそう言ってお茶を飲んだ
「月へはいつ出発なの?」