yamatoへ…Ⅲ
「今度の金曜日の最終便で向かいます。」
島が顔を引き締めて言った
「そう…危険なの?」
母親の顔から初めて笑顔が消えた
「今まではシュミレーションばかりでしたが今回は実習訓練になるので危険がないとは
言いきれないと思います。でも実習なしで実戦に出される方が危険なのでしっかり
訓練してきます。」
島はそうきっぱり言った
「母さん、危険じゃない訓練なんてないよ。シュミレーションなんてゲームの延長だし。
確かにコクピットとか計器類はそのままかもしれないけど事故が起きたからって周り
にはちゃんと空気があるし…でもそれじゃ訓練のための訓練に過ぎない。
俺は…俺たちは戦って…人間らしく地上で暮らせるようにするために…そのために
月に行くんだ。危険なんて言ってられないよ。」
「そうよね…」
「頑張ればライセンスが取れるかもしれないし。どれぐらいの期間行くのか分からないけど
目標を持って頑張ってくるよ。」
進は島の意識が変わってきたのを感じた。今までそんなに切羽詰まった感じではなかったような気がしたのだ。
「戦うために…予備生になったって事忘れかけてたよ。月に行って最初からやりなおす
ぐらいの気持ちで頑張ってくる。」
島の眼は進を見ていた
時計を見るとすでに12時過ぎていたので寝不足は成長期に良くないわ、と母が言ったので島と進は“おやすみなさい”と言って荷物を置いた部屋に戻って行った
「あなた…大介は随分変わってしまいましたわ…」
父と母は寝室のベッドの上で話していた
「うん…環境が人を変える…のかな。」
「私は…大介を戦場に送るために育てたのではありません」
母は少し涙声だった
「でも…大介は自分の意志を持った。ここを出た時は私たちのために、だったのかもしれな
ないが今は明らかに違う。…いい眼をしていた。自分の息子とは思えなかった。
普通の子供より早く大介は巣立って行ってしまったんだ。私達は息子を見守るしか
ないんだよ。
大介の人生だ…私達は応援するしかないんだよ。私は信じてる…大介達が私たちを
地上の生活の戻してくれることをね。」
母は声を殺して泣いた