yamatoへ…Ⅲ
進が小さな声で話し始めた
「その少年Sは自分だよ…」
本当に小さな声でそばにいないと聞き取れないぐらいの声だった
「僕が死んだらそれは遊星爆弾直撃の被爆者に治療してもムダ、って事になるんだ。
だから病院は僕が死なないように必死なんだよ。モリタ先生はそんな事関係なく僕を
診てくれるけど他の先生や看護士は腫れものに触るように僕を診る。もし自分がかか
わって僕が死んだらそれこそ大問題になるからね。
そうだよ、僕はいつ死ぬか分からないんだ。遊星爆弾の放射能の影響でひどい白血病
を患って…普通ならそのまま死んで行くんだ。でもたまたま僕は発見された。
僕は実験体なんだ。絶対死んではいけない実験体なんだ。
もしこのことをみんなに言ったらみんなも僕の事実験体って思ってモリタ先生以外の先生
や看護士と同じように扱われるかもしれないって思って…
だから体育だって頑張ったんだ。体動かすの好きだし…体動かしてると何もかも忘れら
れるんだ。」
進の拳が震えていた
「ばぁか、お前ってそんな事考えてたの?」
加藤が言った
「俺たちにそんな難しいこと解るわけないじゃん。お前はお前だし。まぁ言っちゃった分
すっきりしただろ?しばらくおりこうさんして、早くこんなところでて寮に戻ってこいよ。」
加藤の言葉に進はびっくりして泣きそうな真っ赤な目を向けた
「確かに最初は志願してくる奴がいるって聞いてどんなヤツか気になったけどな!」
島も笑いながらそう言った
進の心に“仲間”という言葉が深く刻まれた
2時間ほどして4人は帰って行った。少し疲れが出たのか4人が帰った後進は眠ってしまった
「進!」
突然自分を呼ぶ声で進は起きた
「お兄さん、お静かに!」
看護士が少し遅れて入って来た
「…兄さん?」
薬のせいか起きた時異常なまでにだるさが残りなかなか視点が合わない
「進、大丈夫か?倒れたって聞いて…」
「兄さん…お帰り…」
進がお帰り、と言うと守のパニックも落ち着いた
「お兄さん、進くんは今落ち着いていて大丈夫ですから!お静かに願います。進くんの
体はナースステーションでもチェックしてます。進くんも寝てたでしょ?」
進がうなずく
「ほら、お兄さんの声で起きちゃったのよ?気を付けてください。お兄さん、進くんを興奮
させないで下さいね!」
そう言って看護士は出て行った