yamatoへ…Ⅳ
「寝たな。」
相原が布団に入り心地よさそうな寝息が聞こえて来た。加藤はその前に伸びてしまっている
「一番頼りなさそうな相原が一番に離れて行くなんて思ってなかったよ。今じゃあいつが
人一倍努力した姿見てるからな…納得できるけど。」
山本がカンチューハイを手にそうつぶやいた。
「…確かに…初対面でヤワそうだなって思ったもんな。でも案外ガンコでちゃんとついて
きてたもんな。身長だって俺らと変わらなかったくせに一人ですくすく伸びちゃってさ。」
島が笑いながら言った
「そう!そうだよ、人より食べないくせに…燃費いいんだな。」
進は入学当時を知らないので聞き役に徹していた。
「いろいろあったけど…気の利くいいやつだったな。相原が行ったらメシ食うの4人だろ?
寂しくなるなぁ…」
山本はアルコールのせいか言葉数がいつもより多かった
「明日朝食食べる時間はあるんだよな。」
島が確認するように山本に聞くと
「あぁ明日はゆっくりだ。昼過ぎに出発だからな。ここを12時過ぎに出て行っても間に合う」
山本はそういいながらおおきなあくびをした
「そろそろ俺たちも軽く片づけて寝るとしようぜ」
島が立ち上がり空いた容器や汚れた器をまとめ始めたので進と山本もまとめ始めた
「おはよう」
加藤を除く4人が順番に起きて来た。あらかた片付いている部屋を見て相原が“ごめん”と
一言言った。
「お前は主役なんだからドンと構えてろ。加藤が起きたら飯行こう。」
島はそう言って相原の肩をポンポンと叩いてそのまま加藤の所へ行き
「ほら、加藤。メシ行くぞ?起きないと喰いっぱぐれるぞ?」
そう言いながら脇腹をつつくとさっと布団の上に座り
「え?飯?行く行く!」
と言いながら起きた。それを見た4人は“食い意地張ってるなぁ”と言いながら笑った
朝食を済ませた5人がファミリールームに戻ると相原が自分の荷物をリビングに持ってきて
ごそごそ何やらあさり始めた
「お礼にさ」
そう言いながら相原は一人ずつ小さな袋を渡した
「記念に…」
4人は無言で受け取った。
「開けていいか?」
島が聞くと相原がうなずいたので袋を開け中の箱を開けた
「お前、これ高かっただろ?」
島の手にはスペース羅針盤が搭載された腕時計が握られていた
「いや…思ってるほどじゃないよ。前から欲しくっていいのが出たら買おうって思ってた
んだけどさ。なかなか気に行ったのがなくって…それに宇宙に出るようになったら
いずれは必要なものになるでしょ?実は…」
そう言って相原は自分の左腕を見せた
「ゴメン、おそろいって気持ち悪いかなぁって思って…少しずつデザインの違うの買ったん
だけどさ。一応好みがあると思って…みんなで見せあって相談してよ。そんなに高い
モンじゃないから…気にしないで。」
進と加藤と山本も箱を開けて中身を確認する。4人が揃ってそれぞれを見ると何となく持ち主
の好みにあってるような気がした
「俺たち…」
島がバツ悪そうに相原に声をかけたが
「いいんだよ、これは僕からのお礼だから。」
「お礼?」(島)
「ほら…僕ってこんな(立ち上がって)でしょ?小学校の時は余り友達ができなくて…
結構悩みだったんだ。でもここでみんなと一緒にいられて随分変わることができた。
嬉しかったんだ。だから記念に残るものをみんなに渡したかっただけなんだ。」
相原は涙をこらえながらそう言った
「僕、頑張るから!」
「ありがとな、相原。頑張れよ!離れてたって俺たちはつながってるからな!」
4人は口々に相原を励まして肩をたたいた