yamatoへ…Ⅴ
水田はほのかにダルさを引きずりながらベッドから降りた
「古代くん失望しちゃったかしら…」
冷蔵庫から冷たいミネラルウォーターを取り出すとコクコクコク、と飲んだ
あの時…古代くんに肩を支えられた時…そのままその胸に飛び込んでしまった
年下なのに…この重圧を忘れさせてほしくて身体を投げ出してしまった。
自ら胸に飛び込んで古代くんの首に私の腕を巻き付け…口付けをした
そして耳元で
抱いて…今だけ…何もかも忘れたいの…
私はそう囁いて古代くんに全てを預けた。今までの男性よりたどたどしい手の動きが
とても新鮮で思わず自分も初めての時のように恥じらって…
きっと…ここを出て火星へ行ったら古代くんと会う事はないはず…私が戦艦の中にいる
限り出航まで古代くんに会う事もない…
(ありがとう…)
さっきとは違う暖かい涙がほほを伝っていた
「行っちゃったな…」
結局一度飲んだだけで水田のチームと再び会う事なく艦隊は火星基地へ向かって出発した
(水田チーフ…)
進にはあれから一度だけメールが届いていた
古代くんへ
先日はごめんなさい。でも…ありがとう。
何となく…吹っ切れた気がします。
ひょっとしたら…最期の別れかもしれません。
私たちはこれからきっと最前線に向かうでしょう。
平和な碧い地球をもう一度見たい…そう思いますが
私たちはその礎となりましょう。
返事は送らないでください。決心が鈍るから。
どうか…忘れないで…
さようなら
進は否定しようと思った。死地へ向かうかのようなメール…しかしそれくらいの覚悟が必要
なのかもしれない、と思った。