貴音「あなた様は命よりも仕事のほうがだいじなのですか?」
P「…………すまん。そろそろ次の現場いかなくちゃ」
P「体を冷やさないようにな。これ帰りの道順がかいてあるから、直帰してもいい」
P「美希。ライブが終わったら、一日遊んでやるから、今は…今だけは我慢してほしい」
美希「…わかったの…美希、がんばるの…」
P「いい子だ…じゃあな」
P(ほんとに…いい子だよ…)
P(あんなふうにできるかわからない約束ばかりして…俺はホントにクズ野郎だな)
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11日・昼
P「そろそろ響と貴音を現場に送らなきゃいかんのだが…まだ事務所に帰ってきていないのか」
小鳥「……響ちゃんと貴音ちゃんならお昼を食べに行ってます。直に戻ると思いますよ」
P「音無さん…みんなには…」
小鳥「…社長にだけは話します。おそらくあなたは無理やり入院させても抜け出すでしょうから」
P「はは…俺のことをよくわかっていらっしゃる」
小鳥「だから…約束、してください…ライブが終わったら、必ず治療して…また戻ってくる、って」グスッ
P「もちろんですよ、俺はまだプロデュースするのをやめるつもりはない」
P「あと20日、気合で乗り切って見せます。俺は鉄人ですから!ははは」
響「はいさい!戻ったぞー!」ガチャ
貴音「ただいま戻りました」
P「あ」
響「あれ?なんでピヨ子が泣いてるんだ?」
P「いや、その…えっとだな…」
響「ああ!また変態プロデューサーがセクハラしたんだなー!」
P「!…そうなんだよ、いやー音無さんの脚見てたらつい、な」
響「もお!あんまりそういうことするとホントに捕まるぞ」
P「あははは…気をつけます…」
貴音「………あなた様、そろそろ次の現場に向かいましょう」
P「ん。ああそうだな、じゃあ早速準備して…」
貴音「と、言いたいところなのですが…あなた様はついてこなくて結構です」
P「え?何いってんだ、俺もいって監督やスタッフさんにも挨拶しないと」
貴音「あなた様。病院にいってください。」ボソッ
P「え…おいおい、いったいなんのこと」
貴音「あなた様の最近のご様子をみて、皆うすうす感づいております」
貴音「これ以上つらそうなお顔をするあなたを見たくないのです」
P「貴音……わかった。すまないが向こうの人にはよろしく言っといてくれ」
P「ただ、また明日からはバリバリ働くから安心しろ!じゃあよろしくな!」バタン
貴音「………あなた様はいけずです…」
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P(貴音のおかげで早めに病院にいくことができた)
P(しかし…もしかして貴音のやつ、気づいたのかな)
P(もう音無さんと社長にはばれてしまったが…まだ全員に気づかれたわけじゃない)
P(風邪気味ということにしておくか…さすがになんともないだと怪しまれる)
P(あとちょっとなのに…)
コンコン
医者「どうぞ」
P「あ、どうも」
医者「やっと来てくれましたね」
P「はあ…面目ないです」
医者「はっきりいっておきますが、治す気のない患者は患者ではない」
医者「あなたが大変多忙なのは承知ですが…自分でも気づいてるでしょう?」
医者「自分の体です、あなたが一番つらさをわかってるはずだ」
医者「入院してください。最終通告です」
P「……申し訳ありませんが」
医者「このまま野垂れ死にしてもいい、と仰るので?」
P「いえ、死にたくはないですよ。もちろん」
P「ただ、ライブが終わるまでは仕事を休むわけにはいかないんですよ」
P「それが、俺が765プロにできる恩返しなんです」
医者「……抗がん剤を内服するのを切らすと、激痛と嘔吐感など、平気でいられるはずがありません」
医者「あなたをそこまでもたせる精神の源はなんなのですか?」
P「…きまってますよ、アイドル達です」
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ガン宣告から12日
P(抗がん剤ってだけで、ガンがなおるわけではない)
P(まあ俺も細かい医療の知識はないが。気休め程度にはなる)
P(副作用でどんどん体が重く感じる)
P(これあと18日もつかな…自分でもすこし不安だ)
P(しかし、アイドルにもばれかけている…どうしたもんか)
P(でもライブの調整や全体レッスンがあるし、俺が休むと音無さんや律子、社長にも迷惑がかかる)
P(幸い仕事中に具合がわるくなることはあまりない)
P(そのかわりか、家に帰るとほとんど休めないのがつらいが)
P「よし、今日もがんばるぞー!」
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13日〜20日
雪歩「お疲れ様ですぅ」
小鳥「あら雪歩ちゃん、おかえりなさい」
雪歩「あ、お茶いれてきますね」パタパタ
小鳥「ありがとう。いつもごめんなさいね」
雪歩「いえ、私が好きでやってることですから」
雪歩「いま事務所は小鳥さんだけですか?」ヒョコ
小鳥「ええ、私だけよ。そろそろプロデューサーさんが戻るころだけど」
雪歩「プロデューサー…」
雪歩「小鳥さん。前に真ちゃんにもいったんですけど…プロデューサーさんの様子がおかしいんです」
小鳥「……」
雪歩「この間、私がお茶をだしても一口も飲んでもらえなくて…グスッ」
小鳥(きっと胃が何も受け付けないのね…プロデューサーさん)
雪歩「でも、私が下げにいったら飲む!って言って一気に飲み干してくれたんですけど」
雪歩「そのあとのつらそうな顔をみたら…いやいや飲んでいたのかなあって…」
雪歩「きっと私がいつまでたってもダメダメだからですよね…うぅ」
小鳥「そんなことないわ。プロデューサーさんが雪歩ちゃんのこと嫌いなはずがないわ」
小鳥「毎日私に今日の雪歩のお茶はおいしかったって言ってくるもの」
雪歩「ほんとですかぁ…グスッ…ヒック…」
小鳥「ええ、きっとお腹の調子が悪いのに雪歩ちゃんを悲しませたくなくて」
小鳥「無理してのんだのね、あの人のことだから」
雪歩「…プロデューサー……」
P「いやーつかれたー」ガチャ
小鳥「あ」
P「?」
雪歩「…あ、あのぷ、プロデューサー!」
P「おお、雪歩か。お疲れ、ドラマの撮影どうだった?」
雪歩「え、な、なんとか上手くいきました…ってじゃなくてえと…」
雪歩「プロデューサー…あの…」
P「なんだ?」
雪歩「お…お茶…いります、か…?」ウルウル
P(ぐっ…上目遣いの雪歩の涙目…)
P(もはやビタミン剤や水しか摂取してない俺には熱いお茶はつらいが…)
P(この誘いを断れる人間がいるのか?)
P「なんだ、そんなことか!ありがたくもらうよ」
P「雪歩、この前はすぐにのまなくてすまんな。腹壊してたんだ、ははは」