灰色
真剣な眼
「なーまだ怒ってんのかよ」
真ちゃんは何も言わなかった。
ただ分かったのは、川島さんのことになるとこの上なく無口になることだった。
そして彼女の情報は一切口にしない。
真ちゃんはそれくらい、川島さんへの独占欲は強い。
たった3日間では真ちゃんが川島さんに対する想いがどれ位かはまだはっきりとは分からないが、
恐らく並みのカップルとは比べモンになんねーくらいなんじゃないかと思う。
「高尾、お前、夏生が好きなのだろう」
「はあ?んなわけねーじゃん。真ちゃんの彼女だぜ?」
「やはり気づいていないのか」
何わけわかんねーこと言ってんだ真ちゃん。
口聞いたと思えば俺が川島さんを好きとか、どんなんだっつーの!
眼鏡のブリッジを中指で押し上げて俺を見た。
その眼は俺みたいにおちゃらけた様なモノでも、冗談を言うような眼でも無かった。
真ちゃん程、俺は鈍くない。
だから自分の気持ちに気付かない程バカでもアホでもないぜ?
「高尾のあんな顔、初めて見たのだよ」
「あんな顔ってどんな顔だし!」
笑い飛ばしても、真ちゃんの眼が変わることはない。
真っ直ぐと俺をみて逸らさない。そして、逸らせなかった。
だって、いや、違うって。
そんなことない、好きなんて感情はないって。
ただ、綺麗な人だなって気になるだけ。
それ以上の感情は何処にもない。
会って3日だぜ?
一目惚れなんて俺は信じてない。