灰色
すき
日舞部が宿に来てからと言うもの、ものっそい騒がしくなった。
日舞部の問題児は顧問の小出という女教師。
まるで子供のようにはしゃいでは馬鹿笑い。
笑い転げては大はしゃぎ。
その繰り返しをもうこの合宿1日目にして何度見ただろう。
仕舞いには「この旅館に泊まってる奴全員で花火をしよう!」と言いだしたのだ。
生憎、緑間と監督は不在で、あとの秀徳メンバーも止む終えなく参加することに。
「高尾くん」
透き通るような声に反射して俺は振り返る。
予想通りの声の主に少しだけ頬が緩む。
「なに、川島サン」
川島さんも少しだけ笑う。
ちくしょう、やっぱドキドキすんだ。
川島さんが近くにいると、心臓の鼓動が煩い。
波打つような、抉るような、痛いような、苦しいような。
『 高尾、お前、夏生が好きなのだろう 』
ふと、緑間のあのセリフが思い浮かんだ。
好き?
なあ、好きって、なんだ?
俺がこんな気持ちになるのって、本当は、好きって感情なのかな?
好きって、何だ?
心臓の鼓動が煩かったり、波打ったり、抉ったり、痛かったり、苦しかったり。
そういうのが、好き?
「高尾くん?」
すき
そうか
俺、緑間に謝らなくちゃいけねえ
馬鹿
俺なにしてんだろ