灰色
何一つとして
いつも通りにバッシュを右足から履く。
紐を結びながら、3Pをする緑間をみた。
しかし放ったボールはガコンと音を立てゴールのリングから床へと落下した。
ボムッ
珍しく3Pをはずした緑間に体育館中がシンと静まり返る。
* * *
ザァザァと雨がアスファルトを叩き付ける音はもう2時間ほど前から聞こえていた。
折り畳みの傘を取り出し広げる。
「高尾」
低い声がして振り返ると、そこには案の定大坪さん
「なんっスか?」と言うと大坪さんは腕組みをして大きく溜息を吐く。
「最近の緑間はどうも調子が悪いみたいだ。」
「ああ、そうみたいっすねえ」
「お前なにか心当たりはないか?」
むしろ俺はあいつに傷つけられまくってますけどね
そう言いかけて言葉を飲み込む
こんな事を言ったところで何も解決しないのがオチだ。
期待はしていないし、期待をしてどうなるとも思っちゃいない。
いつから俺は誰かに頼る事をしなくなったんだろう
いつから俺は緑間とちゃんと話をしなくなったんだろう
考えれば考えるほど遠い昔の記憶のように感じて
だから緑間と夏生のこと何一つわかんねーんだって今更気づく。
ちゃんと話をしなくちゃいけない。
でも聞きたくないと内心じゃ叫んでる。
『さようなら』は告げたけど、それでいいのか?