灰色
越えられない人
足元を濡らす雨
一人で歩く、出会いの街
すれ違う人はみんな笑顔なのに、俺だけは違うようだ。
今はこの街の思い出さえ、痛々しく瞼の裏側を過ぎる。
話を、しなくてはいけないと頭では分かっているのに
それを恐ろしく怖がっている俺って一体なんなんだ。
ふと視線を上げると、傘もささずに前を歩く見覚えのある後ろ姿
「なつ、」
パシャン、
膝から崩れ落ちるようにその後ろ姿が大きく揺れる
肩が小刻みに震えて、夏生の細い腕が自分を抱きしめた。
「う・・・ふ、っ」
嗚咽、
泣いて、る。
駆けつけたいのに、足が動かなくて
声をかけたいのに、声が出なくて
なんでこんな時に限って
緑間、
「なつき」
「しんた、ろ」
「何をしているのだよ」
だから俺は勝てないのか
越えられないのか
・・・何で、俺じゃダメなんだ