灰色
彼女
月バスを買い、満足した俺は今度は逆方向の家へ向かい自転車をこぐ。
ギコギコといつもは音を立てる自転車。
しかし今日はそうではない。
なにせリアカーに真ちゃんが乗っていない事はとでも大きい。
気分上々な感じで鼻歌なんか歌いながら信号で停車。
ふと目に入った喫茶店に見覚えのある緑色の頭を見つけた。
お、真ちゃんじゃね?
つーか女と一緒じゃん
咄嗟に自転車を放り出して喫茶店へと駆け込む。
真ちゃんが女と一緒とか、見たことも聞いたこともねーわ!
好奇心旺盛な俺はもはや興奮状態で2人の座っているテーブルへ立ちはだかる。
「高尾・・・お前なぜここに」
「真ちゃん酷くねえ?なんで彼女いんの隠すんだよー」
「ふん、貴様に教える筋合いなどないのだよ」
「きみ名前なんつーの!」
「おい!」
真ちゃんの言い訳とか正直どうでもいい。
肝心なのは女の方だ。
名前を知っておいたほうが真ちゃんいじりやすいし?
てか真ちゃん彼女っての否定しなかったってことは、まあ、そういうことか。
しかし俺の思考は彼女を見た瞬間、好奇心なんて物は無くなっていた。
「・・・川島夏生、」
漆黒でロングの髪の毛。
ストレートで癖一つないのか、照明に照らされてキラキラと輝いて見えた。
瞳は少し釣り目がちだが目つきが悪いという訳ではない。
要するに、美人系、なんだ。
うわ、やば、可愛い・・・!
心臓を鷲掴みにされたみたいな衝動が走る
え、ちょ、・・・はあ?
いやいやいやいや、ちょい待てって
「真ちゃんこんな美人な彼女なんで隠し」
「煩い黙れ」
「いいじゃんちょっとくらいよ!」
「別に隠していた訳ではないのだよ」
真ちゃんはシレッとしたいつもの態度で俺に言う。
真ちゃんの彼女・・・川島さんはと言えばさっきからジュースをストローで弄んで俺を見る気配すらない。
なんだなんだこのカップルは・・・。
なんか、破局寸前、て雰囲気もあんだけど感じるのは俺だけ?