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アズール湊
アズール湊
novelistID. 39418
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黒と白の狭間でみつけたもの (14)

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プラズマ団の女を追いかけるアーティさんの後ろ姿を、ぎりぎり目に捕らえながら、人混みの中を縫うように追いかける。

追っ手をまこうと思っているのか、プラズマ団の女はアジトがあるとアーティが推測した西側には向かっていない。東側へと走っている。

時折、後ろを振り返り、まだ追いかけてくる私たちが嫌なのか、睨み付ける。

メイン通りを外れて、細い路地を走っていくが、道を知り尽くしているだろうアーティは、女を見失うことなく追っていく。

道慣れしていないトウコは、アーティを見失わないように、ついていくのが精一杯だ。

プラスマ団の女の逃げ足が速いせいか、アーティの速度も上がっていく。頑張らないとこっちが先にバテてしまいそうだった。

ベルのポケモン、取りかえすんだから!

トウコは足に力を入れて、アーティの後ろになんとか追いついた。

細い路地を抜け、ビジネス街のメイン通りに辿り着く。

せかせかと歩くビジネスマンの脇を駆け抜ける。ぶつかってきそうになる黒い人混みをかき分けながら追いかけると、プラズマ団の女の速度が落ち始めた。

どうやら相手もバテてきたらしい。

後ろを振り返り、まだ追ってきているアーティとトウコの姿を見て、ちっと舌打ちをしているようだった。

人混みが薄れたところで、女は再び細い路地に曲がり入った!

ビルの間にできあがった、迷路のような路地だった。

十字路を右に曲がると、次は左へ。その次も左。

さらにまっすぐ行き、今度は右へ。

交差点をいくつも曲がると、大きな通りに出た。

モード街だった。

中心街のやや西側のメイン通りだ!

女はその通りへ左に曲がり混むと、すぐに右の細い路地の方へ入り込んだ。

そのまま直進する!

街の西側。細い路地。

この辺り、アーティさんがプラズマ団を一度追いつめたと言っていた場所に、近いのではないだろうか?

「今度は逃がさないよ!」

アーティはそう言ってペースを上げた!

焦ったプラズマ団の女が、路地に飛び出た配管につまづいた。

落ちた速度に距離が一気に縮まる!

この好機を逃がさんと、アーティが手を伸ばした。

その指先が女の衣類をかすめて届く。

―― いける!

女の腕を捕らえようとした時だ。

突然、ビルの間の路地裏から黒い影が飛びついてきた!

鋭い爪と、牙が見え、アーティは慌てて腕を引っ込めた。

突如現れたのは、唸りを上げるチョロネコとミルホッグ。

後ろを行くプラズマ団には目もくれず、それを追いかける私たちに対して敵意をむき出しにして、襲いかかってきた!

まさか、プラズマ団の仲間?!

辺りを見渡すが、近くに人がいる気配はない。

トウコが周囲に意識を向けているとき、立ち止まってしまったアーティさんがため息をついた。

「またお前達か……」

その一言で、一気に悟る。

これが、街の野生ポケモン!?

彼らの攻撃で足が止まってしまったトウコ達を見て、プラズマ団の女は高らかに笑い声を上げた。

「王様だわ! 王様が助けて下さったんだわ! ざまぁみなさい!」

今までの焦りはどこへいったのか、余裕の表情を浮かべて走り去っていく!

プラズマ団の女が逃げる!

走りだそうとしたアーティに、野生のチョロネコとミルホッグは唸りをあげて迫った!

一歩も前に進ませようとしない2匹。

しかけてくる攻撃を避けるが、これでは前に進めない。プラズマ団の女との距離が開く!

まるで誰かに命令されて、プラズマ団の女が逃げるのを手伝っているようだった。

ほんとに王様とやらが近くで指示しているのだろうか。

でも、そんな人の気配はない。だいたいこんな細い路地に人が隠れられる場所なんてない。

「お願い!どいて!」

プラズマ団を追いかけようとして、前に出たトウコにもチョロネコの爪が迫った!

慌てて後退するが、こうしている間にも、女との距離が開いていく。

こんなことしている場合じゃないのに!

2匹は道の真ん中から決して動こうとしない。

進み出ようとする私たちを睨み、唸りを上げる。

人に捨てられた野生となったポケモン。

人を恨んでいるのかも知れないと思うと、傷つけるのに抵抗があった。

それでも、どんどん小さくなっていくプラズマ団の女の姿に、焦りが募る。

ベルのポケモン、盗まれたみんなのポケモン…。

泣いていたベルを思い出した。

取りかえさないわけにはいかない!

前に進まないといけないんだ!トウコは覚悟を決めた!

腰のボールに手を伸ばし、アーティさんに目配せする。

「アーティさん、行って下さい! 私がこの2匹を抑えます!」

「それは助かる。ボクも今、同じ事を考えていた」

頼むよ、というアーティの言葉を聞いて、トウコは大きく頷いた。

2つのボールを握りしめ、開閉スイッチを押した!

意識を手に集中させる。

ミスは許されない。

―― 頼むわよ!

ボールの中の2匹を信じて。

唸りを上げる2匹の前に、勢いよく飛び出したアーティと同時に、トウコもボールを放った!

前へと走り込んだアーティへ、一斉に襲いかかるチョロネコとミルホッグ。

そこに、ボールから放たれた黒い影が飛びかかったのもほぼ同時!

走り抜けようとするアーティ。

正面から迫る爪と牙!!

それでもアーティさんは走るスピードを緩めない。

アーティの顔のすぐ手間まで迫っていた鋭利なその攻撃が、急に角度を変えて反転し、逸れたのは一瞬のことだった。

背後からのテリムとヒヤリンによる、たいあたりの攻撃!

チョロネコとミルホッグは、それぞれ左右に押しやられ、道をあけるように倒れていく!

その攻撃をみていたアーティは、ほくそ笑んでいた。

突如として、はね飛ばされたチョロネコとミルホッグは、後ろから現れた2つの影に目を丸くしながら、地面に落ちる。

その間をアーティさんが走り抜けていった!

「場所は後でライブキャスターで連絡する!」

そう叫んで、駆けていったアーティの声を聞きながら、トウコはテリムとヒヤリンと共に、地面から起きあがるチョロネコと、ミルホッグに向き合った。

起きあがった2匹はすぐさまアーティを追いかけようと駆けだしたが、それをヒヤリンの強力なみずでっぽうが押さえ込んだ。

チョロネコとミルホッグが再び起きあがり、濡れた体の水滴を振りはらった時には、もうアーティの姿はもう見あたらない。行く手を阻まれた2匹は、グルグルと喉を鳴らしながら、明らかな敵意をトウコへと向けた。

2匹と向かいあうトウコは、なんとも複雑な気分だった。

足止めができた今、これ以上、戦うことに何の意味があるのかわからなかったからだ。

ここでこの2匹を倒しても、何のメリットもない。

むしろ、街にいる野生ポケモン達に余計な人間に対する恐怖心や恨みを抱かせかねない。

それに、2匹が攻撃をしてくる、その理由がどうしてもわからなかった。

アーティさんを狙う理由も、プラズマ団の女を助けるような素振りをしたことも。

縄張りを侵したとか、人に捨てられて人間を憎んでいるかもしれないという理由だけでは、説明できない何かを感じていた。