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【銀魂】短文まとめ【土ミツ】

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【幸せです。】2009.01.24

奇跡だと思う。
一度突き放したこの女を、この手の中に入れることが出来るなんて。
あの頃は触れることはおろか、目さえもあわせてはいけないと思ってひたすら避け続けていた。それが正しいと思っていた。それで彼女は幸せになれると思っていた。
だから、突き放して、彼女の中から自分をなくしたいと思った。
それなのに―…

「十四郎さん。」
しばらく飛んでいた意識をようやく現実世界に引き戻す。
「…何だ。」
拘束を緩め、彼女の顔を見ると、うっすらと頬を染め、微笑んできた。
「しあわせ。」
自分の頬に熱が集まってくるのを自覚し、それを隠すために今一度彼女を腕の中に閉じ込める。
ゆっくりと彼女の色素の薄い髪に触れる。指を通せば、柔らかな髪は引っ掛かることもなくするんと抜ける。
それを数回繰り返した後、細い背中に腕を伸ばすと、彼女の手が俺の背にゆっくりと伸びて、着物を掴む。
「オイ」
「…何ですか?」
本当は優しく語りかけたいのに、どうしても語気が荒くなってしまう。
「本当に、幸せか?」
自分の大将の為だったら、俺は何だってする。
平気で惚れた女だって置いていくし、死ねと言われれば死ぬ覚悟だってある。
そんな奴と一緒にいて、幸せなんて感じるものなのだろうか?
問いかけをした後、ぐるぐると思考を巡らしていると、ミツバからクスクスという笑い声が聞こえてきた。
「もちろん、幸せですよ。」
彼女の身体をより一層強く抱き締めると、また小さな笑い声をあげる。

「ミツバ、」
俺も幸せだ、そう言おうと思ったが声には出せなかった。