剣ノ一声
だが、自己紹介が一番最後のため俺はコクリと首が揺れて睡魔が襲ってきた。そして・・・・・・・・・
「・・・・・君!・・・・・鶴来君!?」
「っ!・・・・・・ほぇ?」
気が付いたときには必死で真耶が俺に声をかけて起こそうとしていた。
「あ、ごめんね?いま「あ」から始まって今「つ」まできているの。自己紹介してくれるかな?駄目かな?」
「あ・・・・・」
「してくれるかな?」
「ええっと・・・・・」
すると、俺は立ち上がると自分の身形を見、少し控えめに。
「えぇと・・・・・・・今日付けで転向してきました鶴来っていいます。皆さんとは別行動をとることが多いようですが、あまり気にしないでください」
と、俺。すると周囲はこれだけじゃ物足りない顔を取った。
「・・・・・あ、あの・・・・以上ですか?」
「以上です。面倒なんでさっさと次へまわしてください?」
「は、はい・・・・・」
だが、次の瞬間。俺の前方へ黒い出席簿が手裏剣の如く襲ってきた。俺はとっさの判断でその黒板を受け止め、飛んできた方向へ思いっきり投げ返した。
「・・・・・・・!?」
すると、出席簿を投げつけた張本人はギリギリに飛びかえってきた出席簿を回避した。俺に向かって出席簿を飛ばしてきた相手・・・・・・女?
「教員に向かって物を投げるとは何事か!?」
あ、昨日俺に銃口向けやがった女だ。確か織斑千冬?もしかして一夏の姉か何かか?
「そっちこそ生徒へ向って物を投げるな!PTA協会に訴えるぞ!?」
俺は戸惑うことなく言い返す。
「ここは通常の高等学校ではない!とっとと席に着かんか鶴来」
「・・・・・・・・」
俺は千冬を睨みつけながらおとなしく席へついた。
「諸君!私がこのクラスをかけ持つことになった織斑千冬だ!君達をこの一年間で使い物にするのが私の仕事だ。時に逆らってもいいが私の言うことは聞け!いいな?」
それと同時に女子生徒大半が大声で「はい!」と大声を上げた。そんな黄色い声を聞いて俺は背筋が震えて仕方がない。思っていた以上にとんでもない所へ来てしまったものだ。
その後はホームルームが終わり、俺と清二は話し合った末、例の男背操縦者の元へ歩み寄った。また、一夏のほうも誰かに救いの手を求めるような眼をしているので丁度良かった。
「よっ・・・・・」
「え・・・?」
そこには二人ほどの同年齢の男子が一夏のほうへ歩み寄ってきた。一人は長身でもう一人は太った青年。
「確か織斑一夏っていったけ?俺は鶴来一斉、こっちは相棒の清二だ」
「どうも、勝山清二っていいます。織斑君だよね?」
「ああ。そうだけど?それにしても他に男子がいたなんて・・・・・・・・」
「ま、俺達はISなんて動かせないけどな?ちと、やぼ用で来ているだけさ?」
「へぇ・・・・でも、このクラスには居てくれるんだな?」
一夏はこの教室に居てくれ!としか言わん顔で俺達を見た。確かに彼の思いは十分にわかる。こちらとて思いは同じだ。一人でも男子がいてくれれば心強い。
「一夏!」
「ん?」
すると、再び背後から女子の声。それも無愛想な発音だった。
「どういうつもりだ?」
「箒?」
「どういうつもりだときいている!?」
そう、一夏が上げた名はあの時以来の篠之ノ箒であった。
「箒!?」
俺の声に彼女は振り向くと、同時に俺と清二を目に驚いた。
「い、一斉・・・・・それに清二もか!?」
「ほ、箒ちゃん・・・・・?」
「な、何故二人ともこの場に居る!?」
「そっちこそ、どうしてIS学園に入学したんだよ?お前、小学生のころ「将来の日記」で篠之ノ神社で巫女になるって言っていなかったのか?」
俺は嫌味っぽく言った。箒は俺に怒りの顔を見せて再び訳を聞き出してきた。
「じゃあどうしてISを使えない者が学園に居る!?」
「それは・・・・・・うぅん、理由は話せないしな?」
清二は腕を組んで悩みこんだ。箒は疑いを持てば強引にも聞き出してくるから面倒だ。と、その時。
「どうしたの?二人とも」
「弥生?」
俺達との口論の間に弥生が心配して割り込んできてくれた。
「弥生だと?」
箒は彼女を見て見下すような目線をした。
「箒ちゃん・・・・・・?」
「・・・・・何故、貴様もいる?」
「私も、一斉君や清二君と同じで・・・・・・・・」
「ISが使えない女性など、ここに居たって無意味だが?」
「う、うぅ・・・・・」
箒のぶっきらぼうかつ、冷たい発言に弥生は泣きじゃくるような顔で下を向く。俺は弥生がいじめられていると思って速、割り込んだ。
「おい!別にそこまで言うことはねぇだろ!?」
「そうだよ、箒ちゃんは少し言いすぎだよ?」
清二も一緒になって加わる。これまで苦労を共に重ねて旅してきた仲なんだ。一人の敵は俺達の敵だ。
「貴様は黙っていろ、これは篠之ノ神社の巫女として関わる問題だ」
「巫女って・・・・・お前!ISに走って巫女を引退しただろうが!?」
俺はブチ切れて怒号を上げた。
「言ったはずだ・・・・・・・部外者は引っこんでいろ」
「あ!?テメェ・・・・・」
もう我慢できない!こいつの態度と言い長年にわたってきた恨みが今、ここで噴火する。
「本当の強さも知らない癖に堂々とえばってんじゃねぇ!」
俺はつい切れて箒の胸ぐらをつかんでこいつをぶん殴ろうと拳を上げる。だが、そこを清二と弥生に両腕を掴まれて止められてしまう。
「やめろ!清二!?相手は・・・・・・・」
「女の男も関係あるか!許せねぇ・・・・・・弥生を馬鹿にして堂々と自分の過ちに気づかねぇ馬鹿に手加減もヘッタクレもねぇ!!」
その後は、どうにか千冬が来るまでに事が収まり、俺は席に座らされて怒りを徐々に静めていった。が、やはり一度切れれば静めることなんて出来ないし寧ろ嫌だ。
「くそっ・・・・・・・」
「落ち着いてくれよ・・・・・」
「清二!お前は何とも感じねぇのか?」
「俺だって悔しいさ?けど、そんなことしたら弥生ちゃんにだって迷惑がかかるだろ?」
「・・・・・・・・・・・・・」
「い、いいよ。一斉君。私・・・・・・何ともないから。大丈夫、だから・・・・・・・・」
だが、そんな弥生でも、目頭から熱い一滴の涙が微かに浮かんで見えた。俺はそれを見逃さず、再び悔しんだ。
「お前、結局は泣いてんじゃんか・・・・・・・!」
「うぅ・・・・・大丈夫だよ?」
「泣いているのにどうして大丈夫なんだよ?」
「大丈夫だから・・・・・・・すこし悔しいけど」
俺は両手を握りしめることしかできなかった。