剣ノ一声
第七章 日英戦争
俺と清二が模擬特訓を行ってから決闘当日、俺達は最後の模擬特訓を行っていた。当初と比べて俺と清二はより戦空士の技や、テクニックを徐々に会得していき、今では零式こと俺はよ
り華麗に、アクロバッティングに宙を舞い、持ち前の機動力を活かした戦法を。そして雷電こと清二はよりパワフルに、渾身の一撃を上げた技を。さらに弥生も装束に着替えての剣術の
鍛錬などを行っていた。装束を纏っての彼女は実に可愛く、見とれて隙を見せてしまいそうになる・・・・・・・・・・・・・・
「いきます!」
対魔刀を両手に弥生の一振りが振り下ろされる。それを俺は華麗に避け、彼女へ拳を突く。弥生もその攻撃を優雅に避けて俺に反撃を繰り返す。わずか三日で彼女も大体の動作を取れる
ようになものだ。当初は不安定で動きがやや鈍く見えたが、今となっては十分に妖魔と戦える程になり、軍刀の英霊達や対魔刀の左近も認めてくれている。
「手加減はなしでお願いしますよ?一斉君」
「よし!じゃあ、俺の必殺技だ」
俺は独自に編み出した零式特有の戦法技を使った。幻無の大地を激しくけり出し、目にも留まらぬスピードで相手に殴りかかる技、名づけて「零式・高機動拳」だ!この技は四方八方に
高速で駆け回り、四方八方に拳を浴びせる。
「いくぜ!」
俺は四方八方に高速移動で走り回り、弥生の周囲を駆け回った。
「す、凄い速さ!肉眼で捉えられない!?」
(弥生!後ろ右斜め!)
「え、え!?」
対魔刀には見抜かれるのを予測し、複雑な方向を責めることにしたのだ。前後左右なら直感で振り向けるものの、背後の左右斜めであるのならいきなり支持を呷られても直感に動くこと
はあまりできず、その間に出来たほんの隙を狙う。
「もらった!」
案の定、弥生は避けきれずにわき腹を直撃、吹き飛ばされた。
「あぅっ・・・・・・!」
岩にたたきつけられてこれは強度な衝撃を受けてしまったと思う。俺は少しやりすぎたかと思って、急いで弥生のもとへ駆け寄った。
「弥生!大丈夫か!?」
「う、うぅ・・・・・だ、大丈夫だよ?少しびっくりしたけど?」
「怪我はないか?ほら、見せてみろ!」
すると、俺は無意識に彼女の脚や腕などを手に傷を確認した。
「い、一斉君!?」
だが、弥生は顔を真っ赤にしていた。
「お似合いだね?そう思わない?紗江さん」
岩陰で一斉と弥生の様子を目にしてニタニタしているのは清二と紗江である。
(そうね?一斉君って、弥生ちゃんにはピッタリの旦那になりそうかも?)
*
幸い弥生に怪我は見当たらず、その後は幻無を出て、現実の世界へ戻った俺達。帰ってきた頃には丁度朝飯が始まっており、ISの学生は全員食堂へ集まって朝食を楽しんでいた。勿論
俺達もその中へ混じり、食堂のおばちゃんへ大盛り定食を頼んでもらった。ここのおばちゃんは俺達が学園へいても何の違和感も感じずに笑顔を見せてくれるので俺達にとっては善人な
存在。それに、俺達がこうして朝練後の姿を見てこういった大盛りランチを出してくれる。
「お、あそこにいるのは・・・・・・一夏か?」
ちょうど、目の前に一夏が朝飯を突っついているのが見えた。俺達はあいつの隣へと歩み寄り。
「よ、織斑!」
「あ?鶴来に清二、あと神代?」
「そこ、開いているか?」
「ああ、いいぜ?座れよ」
「ありがとな、あと俺は一斉でいいぜ?」
「ああ、俺のことも清二でいいよ?」
「私も、弥生と呼んでください」
「じゃあ、俺のことも一夏ってよんでくれよ?」
やはり、男友達が俺と清二以外いないためなのか、三日たてばこんなにも親しい仲へとなった。一夏にとって、俺達の存在こそが唯一の救いだと思っているのだろう。俺達も今では一人
でも男友達が欲しい。
「うわぁ・・・・・一斉と清二って、結構食うんだな?」
「まぁ、おばちゃんが半分サービスしてくれるんだけどね?」
「そういう一夏も結構食うんだな?」
「そうか?普通だと思うけどな?」
そう会話を交わしあい、食事を楽しんでいるところに、朝から無愛想かつ嫌な声が俺の耳に絡んできた。
「おい!そこは私の座る場所だぞ?」
「・・・・・・・・・・・・・」
だが、俺は箒の声に反応することもなく、答えることもないままただ、トレーにのった朝飯を頬張り続けた。
「耳が遠いのか?鶴来・・・・・・・・」
「お、おい!一斉・・・・・・・?」
隣で一夏と清二が俺のすそをヒトヒト突っつくが、俺は相変わらずの無反応であるのだが・・・・・・・・・
「箒?こっちに座れよ?」
かわりに一夏が向かい合わせの席を指すが、彼女はそれに納得がいかない様子で、無視を頬が赤くなっている。
「私はそこに座りたいのだ!鶴来、席を移せ」
「やなこった・・・・・・・」
「何を・・・・・?」
「向かい合わせの席でも話は出来るだろうが?どうして俺の席にこだわるんだよ?」
「そ、そこが一番落ち着いて食事がとれるんだ!そんなこと・・・・・・・お前には関係ない!」
「あっそ・・・・・・・・」
「だからその席を・・・・・・・・」
「嫌だと言った筈だぞ?」
「き、貴様・・・・・・・・!」
赤くなって怒る箒に一夏はどうにか彼女の機嫌を沈めるよう専念した。
「まぁまぁ!朝から喧嘩するなよ?」
「一夏には関係ない!大体、この三人が来たせいで・・・・・・・・!」
「はぁ・・・・・うぜぇな?わかったよ、そこまでギャーギャー言うなら代わってやるよ?ほら・・・・・・・」
これ以上うるさくされては飯を食う時間が削れてしまうので俺はあきらめて今座っている席を明け渡して向かい合わせの席へと腰を下ろした。
「わ、わかればいい・・・・・・・・・」
(こいつ、一夏のことが好きなのか?)
俺はそう心で呟く。戸惑う言動やいきなり怒る口調、どこをどう見ても、好きな男の隣で食べたいって言っているようなもの。まぁ、変わったほうが正解だったかな?これでゆっくり
飯が食える・・・・・・・・・はずだったのだが?
「あれ?織斑君、鶴来君達と一緒だったの?」
「・・・・・・・?」
俺が振り向くと、そこには狐を着ぐるみをきた妙な女子、無仏本音と数名の女子がこちらへ歩み寄ってきた。あの女子達も俺達の周りをしつこくかぎまわる面倒な奴らだ。
「へぇ、男の子って結構食べるんだね?」
「そういうお前達こそソレッポッチで大丈夫なのか?」
俺は牛乳とパン一切れしかトレーにおいていない彼女達を目にそう訪ねた。
「その・・・・・・私達、その分お菓子とか食べるしね?」
「そうそう、それに朝って何となく食欲が湧かないような?それにダイエットかな?」
そう言っているようだが、間食をとるようじゃダイエットにならないのでは?
「その・・・・・・ダイエットなら間食も控えたほうが良いんじゃ?」
「え、そうなの・・・・・・?最近じゃお菓子ダイエットって言うのがはやっているんだよ?」