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剣ノ一声

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「でも、おやつ食う代わりに何かを犠牲に我慢しなきゃいけないんだろ?」

「それは・・・・・・そうだけど?」

「我慢するのが一番身体に悪いんだぜ?俺なら菓子食わないで一日三色でやりきるけどな?」

「そうだな、俺もそっちのほうがいい」

「へぇ・・・・・ツルギンって健康家なの?」

「つ、ツルギン?」

本音はなにやら勝手に俺の愛称を作って呼んできた。別に、抵抗はそれほどないが、愛称ならもっとマシな呼び方があるんじゃないか?

「別に、俺は健康家じゃねぇし、むしろ不健康家だな?清二と一緒に暴飲暴食の限りを付くした常習犯だからな?」

だが、そう言い切ると、本音達は一気に爆笑した。俺の言ったことがそれほど面白かったのか?まぁ、こういう年頃の女の子たちはちょっとしたことで笑うらしいからつまらない駄洒落

をいっても受けることは間違いない・・・・・・・・・・・

「そんなに受けるかな?」

清二は如何して彼女らが笑い出したのかは正直わからなかった。真面目な弥生でさえも彼女達のセンスにはついていけない。

「さて、いざ始めようじゃねぇか?「日英戦争」ってやつをな!」

血の気にあふれる目と口調で俺の態度は一気に急変した。それと同時に、ナイスタイミングであの女も現れた。本日戦う敵対勢力の相手だ。

「あら?随分と自信過剰なようですわね?」

「ったりめぇだ・・・・・・・・負けに行くんじゃないんだからよ?」

「そもそも、恥をかくのはあなたのほうですのに。後で後悔なさっても知りませんことよ?」

「・・・・・・・・・・・・」

                                       *

今日は第三アリーナでIS対生身の男といった前代未聞の試合を開催するため、全校生徒らがアリーナの席を盛大に埋め尽くしていたのだ。

「さて、これ以上後戻りは出来ないな?」

「本当に大丈夫なんですか?」

清二と弥生がIS用のドッグから観客の盛大な光景を目に一斉への心配がさらに膨らんでくる。

「ま、見てろって?戦空士へ変身しなくても、いつもの怪力は衰えていねぇよ」

「でも、油断するなよ?相手はイギリスの代表候補生なんだからな」

「なに、たかが代表にもなっていねぇ奴に負けるほど俺はヤワじゃねぇ・・・・・・・・・・・・」

ISを纏えない以上、生身なので一斉はそのまま別の入り口からアリーナのフィールドへ足を踏み入れた。空中には青いカラーディングの機体、セシリアの専用機「ブルー・ティアーズ」

が浮遊していた。

「まさか、本当に出てくるとは思っても見ませんでしたわ?」

「当たり前だ、今からお前をぶっ倒すんだからな?」

「まぁ?自信過剰なこと、でも負けたときのことも考えないといけませんわよ?」

「負けはしない」

そうきっぱりと俺は言い切ると、竜蔵の軍刀から鞘を引き抜いた。

「いまならチャンスを差し上げます」

「チャンスだ?」

「恥をかく前に、この私にひざまづき、土下座でもしてくださるのなら、今なら許して差し上げてもよくてよ?」

「断る」

「なっ?」

だが、常識的に土下座を認めるのだが、俺は真顔で否定した。断固否定である。

「断る、聞こえた無かったのか?断るといったはずだ」

「あら、そう?それなら・・・・・・後悔しても知りませんことよ!?」

そういいつつ彼女はイギリス第三世代ISブルー・ティアーズが用いる長距離射撃用スナイパーライフル「スターライトマーク2」を威嚇射撃し、一斉の周辺へ着弾させた。

「・・・・・・・・・?」

しかし、一斉は何事も恐れることなく、首をかしげていた。

「どうした?緊張しているのか?それとも、男とやりあうのが怖いか?」

そんな俺の挑発に彼女は目をつりあげて。

「後悔しても知りませんことよ!?」

二発目は容赦なく一斉の足元付近へと照準を定めた。これで彼に大怪我を負わせることもたやすいが、生身の相手に対してISが攻撃を行うということに罪悪感を感じて引き金の指が

戸惑っている。しかし、引き金を引くと同時に、一斉の姿は彼女の視線には存在しなかった。

「い、いない!?」

「ここだ・・・・・・・」

「・・・・・・・・!?」

そこに彼の声が聞こえた場所は誰もが予測しなかった場所、IS、ブルーティアーズの背に乗っかりセシリアへ尋ねている。一瞬の刹那の間に彼女は相手にここまでの接近を許していた

のだ。

「どうした?俺を殺す気でこいよ・・・・・・・・・?」

「ば、馬鹿にしないで!」

一斉を振り払おうとしたとき、彼はすでに軍刀を引き抜き、彼女の背の上で暴れていた。本来ISには防衛シールドが搭載されているため斬りつけられる痛みとしか伝わってこないのだが、

シールドが削れられると共に彼女の心内には一斉による恐怖が湧いてきた。背を斬られたセシリアはアリーナの上空よりやや低空へ浮遊し、体制を整えるのだが、その余裕を許さない一斉

は通常の人間よりもずば抜けた跳力を用いり真上のセシリアへ次々に切りかかる。彼女の手足、腹部からには軍刀によって切りつけられた「痛み」が襲い、これ以上の機体維持は困難な状況

であった。

「こ、こないでぇ!!」

恐怖と共に、再び空へ上昇し背から未だ破損していない生き残った浮遊ビーム兵器ビットを放出し、彼への弾幕を張る。こうなれあ生身の相手に当たろうがなんだろうが今の彼女には関係

なかった。ただ、恐怖を払いのけたい一身で。

「パニクったか・・・・・・・・・」

未だ余裕を見せる一斉は、ビットの弾幕を華麗にかわしつつ、ビットの頭上に飛び乗った。ここまでくればもはや人間業から遠ざかる。ビットはそんな一斉をビームによって追い詰めようと

するものの、動きを読まれ、ビット達は同士討ちを繰り返しながらセシリアへ近づきずつつある。

「・・・・・・・・・・!?」

「もらった!」

しかし、彼女へ止めを刺す寸前。真横から何者かが放ったと思われる一発の光弾がセシリアへ命中し、彼女はシールドゼロの状態となって生身の体で上空へ落下した。

「何だ!?」

このざわめいた感覚、そして胸騒ぎ、間違いない。妖魔の出現だ。

「一斉!?」

そんな中、二人の戦いを見守っていた清二は戦空士へと変身を遂げ、上空から降って来るセシリアをガッチリと受け止めた。

「清二!妖魔だ」

「妖魔だと!?」

彼らが見つめる上空には直径五メートルを越す巨大なチョウの化け物が上空を浮遊している。おそらくセシリアを襲った犯人だろう。

(第三アリーナに正体不明の未確認生物が乱入してきました!アリーナに入場している生徒の皆さんは速やかにシェルターへ非難してください!)

アリーナに真耶の放送が響き渡る中、混乱する生徒達とは別にフィールド内に居る一斉は逃げる様子はなかった。

(空中戦を得意とする大アゲハかだが、機動力ならこっちが上だ!)

「竜蔵さん?」

(一斉!瞬着せよ)

「よし・・・・・」

大アゲハが巨大な両翼から次々と光弾を放出する中、一斉は軍刀を頭上へかざし、そして叫ぶ。

「瞬着!」

その光景を、未だアリーナから見守る本音ら数名の女子。
作品名:剣ノ一声 作家名:伊波鷹元