剣ノ一声
「あれ!?あれって一斉君?」
「本当だ!でも、どうしてツルギン逃げないの?危ないよ!」
「でも、鶴来君の隣に居るあの人は誰?どこかで見たような体格だけど・・・・・・・・」
大アゲハは容赦なく光弾を発砲、弾幕のごとく二人の戦空士へ攻撃の手を緩めない。また、清二はセシリアを抱き抱えているため、下手な動作は取れず、攻撃を背に受けて凌ぐことしか
出来なかった。
「セシリアちゃんがまだ居るってのに・・・・・・・・・」
「くそっ・・・・・・・・こっちには飛び道具はねぇってのに!」
(まだ、対長距離戦での戦闘は不慣れであったか・・・・・・)
(仕方ないでしょ?私達の力には飛び道具が装備されていないんだから・・・・・・・・)
(せめて、一瞬だけでも注意を引くものが・・・・・・・・・・)
「一斉君!清二君!」
「「・・・・・・・!?」」
そんな戦況の中、二人を振り向かせる光景が一つ。巫女装束へ身を包む弥生の姿であった。
「弥生!?」
「ここは私がひきつけます!」
彼女は対魔刀を抜き、真横から大アゲハへ飛び掛り、巨大な片翼一枚を切り落とした。
「今です!」
「一斉!」
「よっしゃあ!」
羽を一枚失いバランスを崩した大アゲハへ一斉は飛び上がり、渾身の拳一撃を大アゲハへ食らわし、アゲハは凄まじく爆沈した。
「敵機撃破だ!」
「一斉の一撃はすげぇな・・・・・・・・」
「う、うぅ・・・・・」
そんな一斉へ関心を寄せる清二の両腕の中でセシリアは弱弱しい呻きをあげていた。
「あ、気が付いたかい?」
「うぅ・・・・私は・・・・?」
「とにかく医務室へ行こう」
「お二人とも大丈夫ですか?」
どうにかアゲハを撃破したところに弥生が駆け寄ってきた。
「大丈夫だ。それよりも、行動がすごいぜ?おかげで助かったよ」
「ああ、弥生もこれで俺達の重要な戦力だ」
「そんな・・・・・大げさですよ?」
*
その後、事件に関しては俺達三人による説明によって落着。妖魔の戦闘力と俺達の正体を実際に見せたことから千冬も認めざるを得なかった。ちなみに、俺と清二はクラス代表を降りて
セシリアへ譲ろうとしたが、彼女は俺と清二、一夏へ深々と侘びを入れた後に一夏へ代表を譲ったという。
「織斑君!クラス代表おめでとう」
教室では宴会が開かれており、新聞部の人間が一夏と、俺達三人へしつこくインタビューを重ねてきた。
「一夏君が代表になったのはいいんだけど、まだスッキリしないところが一つ!それは・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
怪しむ目線でクラス全員は俺達を見つめる。
「鶴来君達って一体何なの?それも、鶴来君って生身でセシリアさんを倒しちゃったじゃない?」
「未だに信じられねぇなら一人一人タイマンを取ってもいいぜ?」
そんな俺の冗談交じりな一言で周囲はガタガタ震えだした。しかし、これで彼女達も本当の過ちに気づくことが出来てある意味達成感が芽生えた気分だ。
「最後の一撃を決めた鶴来君もかっこよかったし、セシリアさんを体で守った勝山君もナイトでカッコよかったよ?」
「でも、一番かっこよかったのは、やっぱり式波さんかな?まるで映画みたいですごい興奮しちゃった!」
「そ、そんな・・・・・・私はただとっさに」
「あの・・・・・お二人方?」
「・・・・・・?」
俺が振り返れば、そこにはセシリアが居た。彼女は反省の目で俺と清二を見る。
「当初は本当に失礼いたしました・・・・・・・・男性だからといって見下したりあなた方の祖国を侮辱するような態度を取ってしまって。一斉さんに酷いことを言って、清二さんには
体系のことで・・・・・・・・・本当に申し訳ございません。清二さんには助けていただいたというのに・・・・・・・・・・」
「あ、ああ・・・・・・気にしないでよ?気づいてくれたならそれで十分だからさ?」
「そうだ、これからは気をつければいい。心を入れ替えるだけさ?」
セシリアに対し、二人は笑って許してくれた。一斉も、何時まで執念深い青年ではない。こうして和解したらとことん仲良く接するのが彼の流儀でもある。しかし、一人だけ三人を認めない
一人の生徒が一人。
「何故だ・・・・・何故、弥生ごときが・・・・・・!」
篠之ノ箒であった。彼女は未だ自分よりも劣ると見える弥生がこうしてクラスから人気を寄せ集めていることに疑問を抱きつつあったのだ。