剣ノ一声
「今日も早く行ってあげなさい?また清二君を待たせているんでしょ?」
真面目で素直な清二と違って俺は少しマイペースなところがあるためよく急かされる。まぁ、俺も度々そんな自分に注意することもあるが、寝起きのため身体に自由が利かないのだ。
「わかったよ。あ、今日は収穫の日だからあまりものがあったらもらってくるよ」
「まぁ、それは助かるわ?もらってきたら野菜炒めもいいわね?」
姉貴は料理には自信があり、俺も姉貴の料理は世界一大好きだ。
「じゃあ、行ってくる」
「うん、気をつけてね?」
家を後に俺は学校への登校路を歩いた。勿論道中では親友の清二が分かれ道あたりで待っていてくれている。あいつに会わないと朝は調子がくるってしまうからいけない。
「よ!清二」
「ああ、おはよう!」
いつものありきたな挨拶を交わすと、横になって道を歩く。それからは昨日見たテレビの話や最近の情勢に関しての陰口の言い合いなど、さまざまに会話を楽しみながら学校へと向かっ
ていく。
「ところで、今日うちの学校に転校生が来るらしいよ?」
清二はにやけた顔で俺へと目を向ける。勿論俺もにやけた目で「それは本当か?」と反応した。
「そうらしいよ?何せ、女の子だもの」
「可愛い子か?」
「さぁ?それは見てのお楽しみだな?」
(・・・・・目覚めよ・・・・・)
「「・・・・・・!?」」
突然、俺と清二の動きが何者かの呼び止めでふと立ち止まった。俺たちはお互いを見つめながらちょうど横切るところであった篠ノ之神社の石段を見上げた。あの声は神社から聞こえて
きたような・・・・・・・・?
「おい、清二。さっき何か聞こえなかったか?」
「あ、うん・・・・・確か「目覚めよ」とか何とか?」
「・・・・・・・・・・・・」
雑談など忘れて俺たちは神社の石段を遅刻寸前のチャイムが鳴るまで見上げていた。