剣ノ一声
第三章 出会い
学校でのホームルーム、今日は転校生の話題で持ちきりだった。俺と清二は机でそれに関しての雑談をしていた。一様清二やその他の人間は大方知っているのでそれほど驚かないが、初耳
の俺やほかの生徒たちはドギマギしていただろう。男子なら可愛い美少女を想像し、女子ならカッコいい美少年を想像している。
「なぁ?転校生って言えばやっぱり男は女の子を思い浮かべるよな?」
「そりゃあそうだろ?確かに女子ならカッコいい美男子をビジョンしてるだろうけど」
俺と清二がそう話し合っているうちに一人の女子が歩み寄ってきた。彼女は俺と清二の女友達の四条綾香、この世界になろうとも男女平等を主張してくれるいい奴だ。
「へぇ?やっぱり転校生の話をしているの?」
「あたりまえだろ?綾香、そういうお前は美男子の想像でもしているの?」
「もちろん!どうせ男の子なら背か高くて美形かつスポーツマンで・・・・・・・・・・」
「はははっそういう奴に限って性格が最悪なんだよな?」
と、俺が突っ込んだ。すると、綾香は顔を真っ赤にして否定する。
「ち、違うわよ!性格も優しくて、正義感があって、困っている人がいたら助けて・・・・・・・・・・」
「それってまるで正義の味方じゃないの?」
清二が笑って突っ込む。確かに、正義感があって困っている人を助けるというのならそれはそれでヒーローの分類に入るだろう。
「そう!転校生はカッコいいイケメンで正義の味方・・・・・・・・そして変身・・・・・って、そんなことあるわけないわよね?」
「違いねぇな?」
「そういう清二君は何を想像しているの?」
そういうと綾香は俺の想像へ問い尋ねた。
「あ?俺か・・・・・・・」
「そうよ、人に聞くだけじゃなくて自分も何か上げてみたら?」
「そうだな・・・・・・・ま、仮に転校生が女の子だったら、綾香みたいに平等主義のある子なら誰でもいいや」
「そうだね?俺もそういう女の子がいいな?」
清二も俺の意見に納得、勿論綾香も照れながら納得した。
「えへへ・・・・・私みたいな?」
実を言うと、綾香は男子の中で結構人気があり、男子も彼女となら親しく話すことができるそうだ。
「ま、無理だろうけどな?綾香みたいな英雄的存在はそう一握りだけだろうな?」
「そんなことないわよ?いつか世の女性達も自分の愚かさに気付いてくれるわ?」
「そう考えているなら今頃は・・・・・・・・ん?」
俺が天井を見上げていると、教室から女性教員と副担任の男性教員が入ってきた。女尊男卑だからこれだもの・・・・・・・・・・・
「はい!今日は転校生を紹介します」
担任の女性教員は黒板でその転校生の名前をチョークで音を立てながら書きあげた。「式波弥生」と。
「やったぁ!女の子だ」
一人の男子がそう盛り上がると同時に周囲の男子生徒全員が歓喜にあふれた。勿論俺と清二も小さくガッツポーズをとるが、小さくガッツをとるということはそれほど喜んではいない。
それはまだ転校生の女の子がどういう性格の子だかがわからない。それが不安なのでとりあえすそれほど喜ばないことにした。
「それじゃあ入ってきて?式波さん」
担任に声に反応して教室の扉から恥ずかしがりながら一人の女の子が入ってきた。他校の制服を着て、いかにも転校生といった感じである。
「失礼します・・・・・・・・」
みたところおとなしげな子だった。だが、まだ油断できない。
俺と清二は真剣な眼差しでその転校生を見つめた。すると彼女は教卓の隣で自己紹介を始める。
「あの、式波弥生と申します・・・・・・・その、えぇと、早くクラスになじみたいと思います・・・・・・・・・・」
恥ずかしがりやなだけ?性格は?本性は?そう俺たちがさらに積極的に見つめるため、目が合うと彼女は眼をそらして怖がってしまうのだが・・・・・・・・・・・
「あ、男性と女性、両方とも仲良くしていきたいのでよろしくお願いします」
最後にそう言い残して彼女はペコリをおじぎをした。俺達はこの奇跡的な台詞をめに心が舞い上がった。どうやらごく普通の女の子のようである。まともな女の子のようである。
休憩時間、周囲は転入生を囲っていろいろと問い尋ねている。俺と清二もいろいろと聞きたいのだが、この人盛りであるためみると少し遠慮したくなる。
「綾香、あの弥生っていう子の教育は任せたぜ?」
と俺。
「まかせて!必ずあの子を平等信者にしてみせるから!」
とガッツをたてて綾香が張り切った。彼女は昔から俺たちと違って友達を作るのが得意だからその後は弥生という子に積極的に話しに行ったらしい。彼女に話しかけられたら誰もが彼女
と仲良くしたがるだろう・・・・・・しかし、弥生は彼女と親しくなった上で俺たちの元へ歩み寄ってきた。事は昼休みに・・・・・・・・
「え!俺たちと?」
俺はドッキリして胸が飛び上がった。初対面の女の子が俺たちへ自ら声をかけに来るとは・・・・・・・・・・・
「そうなのよ?ある程度私と親しくなったところであんた達の話をしたら「是非お伺いしたいです」とか言っちゃって・・・・・・・・・・」
「これって奇跡かな?」
と清二は何度も己の頬をつねって見せた。俺たちは昔から女子にモテず、童貞のままであるため綾香以外の女子に見向きはされなかった。そして俺はイタズラを繰り返したせいで女子の
天敵になりさがったという・・・・・・・・・・・・・
「あの、よろしいですか・・・・・?」
そう言っている間にも噂の子がきたよ。式波弥生だ・・・・・・・・・近くで見れば本当に可愛いな?背まで垂れ流して結んだ黒い髪は真珠のように透き通っていて、ほのかで優しい香
りが鼻をくすぐる。
「もしよろしかったらお聞きしたいのですが・・・・・・・・?」
「あ、ああいいよ?」
清二はいつもの温和な顔でそういった。彼女も彼の優しげな雰囲気にひかれて少し落ち着いた様子。ちなみに綾香から聞いたのだが、弥生は何と世界企業のお嬢様らしく箱入少女らしい。
だから、心正しい親の元で平等主義を学んだというのだ。
「あの、この里で「篠ノ之神社」という神社がありますよね?」
「うん、あるけど?それがどうかしたのかい?」
俺は首をかしげた。何を言うかと思えば、あの神社の話か。
「ご存知でしたら話が早いです。その神社に一人で営むおば様をご存知ですか?」
「うん、小さいころよく会ったけど?」
「私、そのおば様の元でしばらくお世話になっているんです」
「へぇ、じゃあ親戚っぽいの?」
「はい、篠ノ之家と式波家とは昔から繋がりがあります。私の両親はお仕事で大忙しのようなので私だけが引っ越してきましたの」
「一人か?たくましいね?」
清二はこんなおとなしげな少女が親元を離れて、それも他人の自宅でお世話になっているというとなんとも涙ぐみそうになった。
「そんなことありません。おば様は私に優しくしてくれて、私もせめてのお手伝いをと神社で巫女を演じております」
「巫女を?でも、大変だろ?」