剣ノ一声
も、おばさんの言った通り心が弱いのであればどれほど腕が強かろうと弱いままだ。
「鶴来君と勝山君以外にも戦空士に選ばれた人たちがあと三人いるはずよ?必ずそのうちに出会うわ」
「俺たち以外にも戦空士が・・・・・・・?」
「探して共に闘うためにこの里を離れたほうがいいわね?それに、妖魔は日本各地へ広まりつつあるの。この現象はつい一月前に起こったわ」
「一月前だって!?」
清二は眼を丸くした。あんな化け物が一か月前から出没していたのだ。無理もない。それにしてもニュースではあまり上げられないのはなぜだ?
「でも、どうしてニュースに出ないんですか?一カ月も続くようならあってもおかしくないはずです」
と弥生。
「ええ、その通りよ?たぶん、国民が混乱しないよう何か裏で特殊な組織が動いているんだと思うの」
「それなら納得だけど・・・・・・・女性ならISの女も?」
「そうね、ここ一週間で十人も襲われて食い殺されたわ」
「お、襲われた!?ISが!?」
俺は清二以上に驚いた。それもそのはずだ、何せISは世界最強の存在、それがたった一週間の間で十人も殺されたんだ。これはシャレにならない。
「これ以上被害を増やさないためにもあなた達三人はこの里を離れて各地へ向かったほうがいいかもしれないわ。大丈夫、この村は私の力で結界を張ります」
「お、おばさんも何かの能力が?」
「黙っていたけど、元陰陽師のはしくれなの。妖魔を近づけさせないだけの結界だけは得意よ?」
と、にこやかに自慢した。しかし、いつも面識のある親しいおばさんが陰陽師の人間とは驚きだった。いや、それは置いといて、俺と清二、あと弥生もこの里を出て妖魔討伐に出向かな
いと行けないのは戸惑いがある。
「いきなりこんなことを言ってごめんなさいね?でも、時は一刻を争うわ?妖魔は女性達が大勢集う場所を餌場として追い求めている。おそらくIS学園ね」
「IS学園・・・・・・・」
俺はその言葉を聞いて目がひきつった。俺がこの世で最も嫌う女の集い場、女尊男卑の増徴ともいえるその場。聞いただけでも虫唾が走る。だが、弥生は俺とは違った。
「IS学園には箒ちゃんが!」
「そうね、とても心配だわ」
「・・・・・・私、行きます!はやく学園の皆を妖魔から守らないと・・・・・・・・・」
「でも、ISがあるんじゃ?」
と、俺がそう割り込んだ。たしかに、ISの破壊力なら造作もないこと、しかし。
「いいえ、妖魔にISでは勝てないわ?女性が操る兵器の攻撃はいわば彼らの餌そのものよ?残念だけど、全く通用しないわ?」
「じゃあ、妖魔に勝てるのは戦空士が陰陽師だけなの?」
「ええ、そうよ?だから、今はあなた達三人が頼りなの。おねがい!力を貸して・・・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
俺達は当然戸惑った。弥生を除いては、学校もあるしバイトもある。姉貴がそう素直に聞いてくれるわけがないし、一体どうすれば・・・・・・・・・?いや、弥生一人を行かせるのは男
として廃る!ここは何もかも捨てて彼女と共に旅へ出ることしかないだろう・・・・・・・?
「俺・・・・・行きます!弥生ちゃんと一緒に妖魔と戦います。まだ、戦空士にはなっていないけど、絶対に戦空士になって見せます!!」
清二は覚悟を決めて、おばさんへ強く誓った。あいつにしては珍しく、迷いのない瞳だった。
「一斉、お前はどう思う?」
「俺か・・・・・・・?」
清二や弥生も行く、そうきたらもう後戻りはできないな?よし!俺も友として。
「ああ、勿論行くよ!ここでお前だけ行かせるとダチとして、男として廃るぜ!あと、弥生」
「え、はい・・・・?」
「お前は女の子なんだから出来るだけ無理はするなよ?何かあったら俺か清二の後ろへ隠れてろ?」
「一斉君・・・・・・・・」
弥生は俺を見てますます顔を赤くするが、赤くなりながら万弁ない笑顔で。
「うん!」
と、可愛らしく頷いた。
「と、いうわけだ。おばさん!俺も行くぜ?仲間を増やして妖魔を倒してくる」
「おばさんもそれまでの間、結界をどうにかお願いします!」
「一斉君、清二君・・・・・・・・・ええ、まかせてちょうだい!」
*
数日後、俺達は親戚の葬式という理由で東京へ出向くことになったという理由で旅立つことになった。向かうはIS学園。
「清二君、あなたは優しすぎるんだから変な女には絶対騙されないでね?あと一斉君も喧嘩沙汰起こさないように気をつけてね?弥生ちゃんをしっかり守ってあげて?」
と、何故か三人共に旅立つかのように思い込んだ綾香は俺達へ結構心配をかけた。とくに清二を。
「大丈夫だよ?当分帰ってこないけど、必ず帰ってくるって?」
「本当?約束よ?」
「そんな心配するなよ?な?一斉」
「ああ、弥生のことは心配するな・・・・・っていうか!俺達は別々なの!」
一様三人共に旅立つことを隠すために別々の行動をとると嘘をつかなくてはならない。綾香の予想には本当に度肝を突かれる。
「本当に、帰ってくるから・・・・・・・・いつか必ず!」
里を離れ、山道から小さく見える里を後ろ目に俺はそう強く呟いた。