伝説のヤンキー
「マリーさんって、一番波紋を起こしてるんですよ、男女同権に対して。男子ばっかりのサッカー部に試合を申し込んだり、男女混合クラブをつくったり、成績トップを取ってみたり……狙われないほうがおかしいです」
「それは、まあ分かるけど…… だからって犯人が絞れるの?」
「やはりサッカー部はあやしいです」
「でも宇集院は落とせなかったじゃない?!決め手がなかったのよ。乙女会との関連がないし……」
「そこなんですが…… 乙女会メンバーの特徴を考えてみたんです。彼女たちの共通項。親がそこそこお金持ち、容姿端麗、そして総じて成績がよく生徒会の役員などもこなし、ある意味、学園内の地位を得ていることです。
それでこそステータス・クラブです。女子生徒からは一部不満の声が出ていましたが、それは嫉妬です。一部では憧れの存在でもあったのです」
マリーとみさえはうなずいた。
「男子からみたらどうでしょう? サッカー部、ひとりひとりで考えていきましょう。まず、宇集院。彼はこうなると、やはり怪しいです。だって乙女会が日々自分の地位をおびやかしているのですから。しかし、大屋主代さんの事件に対してはアリバイがありましたね。
次、石坂純一。彼は根っからの女好きで乙女会の女子とも付き合っているくらいなので、ちょっと考えられませんね。鬼瓦築造(おにがわらちくぞう)。代々江戸っ子大工のうち出身なので男尊女卑の思想は持っていると思います……でも、こういう一直線タイプは裏でコソコソできません。次……」
ひとりずつ検討をしてみたが、誰も決め手はない。誰もがそこそこ怪しいが、それは、普通の人間なら通常のことだった。やはり一番の容疑者は宇集院であった。
「なかなかいないじゃん。サッカー部のやつらって皆ストイックな感じだもん」
「だよねぇ……」
三人は黙り込んだ。
不意にマリーの目が光った。
「もういちどデーター見せてみて。ちょっと気になることがあるの」
「え、なになに?」
マリーの発言に三人はパソコンをのぞきこんだ。
そろそろ、急展開が始まろうとしていた。