魔法少女リリカルウィッチーズvol.4
言って美緒は急上昇を開始する。スバル、ギンガ、エリオとフリードはそれぞれはやてに接近していき撹乱を開始する。
なのは達はロングアーチからの通信を受けて本隊の元へと急行していた。フェイトの予感は的中していたのだ。
「皆、待って!」
と、そのフェイトが皆の歩みを止める。
「テスタロッサ?」
「ちょっと聞くけどなのは、確かはやての周りには他のネウロイがいないんだよね?」
「うん、さっきのロングアーチからの情報が確かならね」
「どうしてネウロイは、はやてを単騎で出撃させたんだろう…」
「え?」
「もちろん、はやてなら一人で戦局を変えかねない力はある。けど、はやてはロングレンジ攻撃が主体だし、護衛も無しでネウロイがはやてを出撃させるとは思えないんだ」
「つまり…?」
「もったいぶらないで早く言ってくれ、フェイト!こうしてる間にもはやては…!」
ヴィータの急かす言葉を聞いてフェイトが続きを言おうとする。
「これは、あくまで予測なんだけど…」
その時、
〔警告!敵の大編隊が首都より本隊へ向けて接近中〕
バルディッシュがそうフェイトに警告を促す。
「やっぱり…!」
「フェイトちゃん、これって…」
「ネウロイの狙いは、恐らくこう。まず、はやてを単騎で出撃させて部隊の動揺を誘う。動揺した味方部隊は、はやての確保に全力を尽くす。これがネウロイ側の狙い。私達がはやてを救いだそうと躍起になっているところを突いて、この大編隊を送り込んでこちらを壊滅させるのが目的だったんだと思う」
「主はやても巻き込んで諸ともに…か」
「うん」
「フェイトちゃん。多分ロングアーチも気づいてると思うけど、このことを早く部隊の皆に伝えよう」
はやてを救いだそうと躍起になる本隊だったが、はやての予想以上の攻撃に未だ近づけずにいた。
「流石、八神部隊長だ。操られていても、その実力は揺らがない…!」
エリオが一向に攻めの姿勢に移れないのを感じて言う。
実際、はやてには隙がなかった。ロングレンジの攻撃には普通、チャージなど時間を要するものが多い。それに加えてはやては詠唱というこれまた面倒な形式を用いている。が、それは普段の話。ネウロイに操られている今、はやては何と無詠唱で次々に魔法を使ってきている。さらに、近付けば近・中距離用の射撃魔法で狙い撃たれてしまうという、まさに無双状態だった。
「懐に入ろうにも、こう隙が無いのではな」
美緒が迫り来るはやての攻撃を避けながら苦々しげに言う。それでも彼女は持ち前の機動力で何度か接近していた。いや、彼女にとって接近することは簡単といえる。しかし、攻撃を喰らわせる前に反撃の刃が飛んでくるために攻めあぐねていた。
「やはり動きを封じるしかないか」
援護射撃しつつバルクホルンが提案する。
「でもトゥルーデ、どうやって?」
同じく援護射撃していたエーリカが、すかさず訊く。
「それを今、考えているところだ」
「ギン姉、シャーリーさんから聞いたあの技、試してみない?」
「え?いいけど通じるかわからないわよ?」
「物は試しってことで」
「いいわ、やってみましょう」
会話を終えると二人は、はやての前にジグザグに交差するようにウイングロードを展開する。
「坂本少佐」
「ナカジマか、どうした?」
「これから私達で八神部隊長の攻撃を引き受けます」
「何?危険だぞ」
「大丈夫です、タダでやられるつもりはありませんから!」
「…はっはっは!何か策があるんだな。なら、やってみるといい」
「はい!それからもし八神部隊長に隙が出来たら…」
「わかっている、その機は逃さんさ」
美緒との通信を終えるとスバル・ギンガ両名は交差するようにはやての前方を駆けていく。当然、はやての攻撃は大半が二人に集中する。だが、当たらない。ギザギザに走行するため、狙いを定めるのが困難なのだ。追尾式の魔力弾でも中々当たらなかった。
「あれはサッチ・ウィーブじゃないか!」
シャーロットが二人の描く機動を見て言葉を発する。二人が用いている機動。これはシャーロットの出身国、リベリオンにおける高等空中機動『サッチ・ウィーブ』。それを模したものだ。
「リベリオンの空中機動か」
「ついこの間教えたのに、いつの間にモノにしてたんだ…?」
バルクホルンも驚いている。シャーロットが二人にサッチ・ウィーブを教えたのはほんの数日前のこと。教えた本人も、まさかこんなに早く習得してしまうとは思っていなかったようだ。
「さすがは姉妹、ってとこだな」
エイラが呟いたその時、ついに先程まで動かなかったはやてが動いた。ギンガの後を追いながら攻撃していく。
「おっ、かかったな!」
それを見ていたシャーロットがニヤリとする。
「スバル、今よ!」
「オッケー!」
ギンガの合図でスバルははやてに拳を見舞う。交差するその瞬間を狙っての攻撃。さしものはやてもシールドで防がざるを得なかった。そして勢いで飛ばされていく。そして生じた、一瞬の隙。
「坂本少佐、今です!」
「任せろ!烈風ゥゥゥゥ斬!!」
その隙を逃さず、美緒は懐へ入ると魔力を上乗せした刀・烈風丸の峰でシールドごと文字通り叩き斬った。直撃を喰らったはやては気を失い落下していく。
「八神部隊長!」
墜ちていくはやてをフリードに乗ったエリオが受け止め、事なきを得た。
「はい、こちらヴィルケ。…了解。こちらからは良い知らせがあるわ。先程、八神二佐を救出。これより首都へ向けて進軍を再開します。10分、耐えて」
通信を終えて、ミーナは全軍に進軍再開の指示を出す。
「ん…」
「八神部隊長、しっかりしてください!」
目を覚ましたはやてにエリオが声をかける。
「あれ、エリオ…?」
起き上がり、周りを見渡す。
「ここは…私は確か…」
必死に思い出そうとするも、まだ記憶が混乱しているようだった。
「とにかく、今は首都へ向かいます。八神部隊長は休んでいてください」
部隊は進軍を再開する。
なのはの指示でフェイトがロングアーチと本隊にネウロイの行動について伝える。
「さて、こうなってくると問題は主はやてを救い出すまで奴らを食い止めなければならん、ということか」
「そうなるな。フェイト、本隊から応援は呼べるか?」
「今、応援を要請したところ。予定では10分で到着出来るって。それから、はやてを救いだしたって報告があった」
「何!」
「マジか!」
ヴィータは言わずもがな、シグナムも表情が明るくなったのが見て取れた。
「これで後顧の憂いは無くなったな」
「ああ。10分、きっちり守ってやるか!」
なのは達は迫り来るネウロイを見据えて構える。まずはなのはが編隊へ先制攻撃をくわえるべく砲撃体勢に入った。
「なのは、私もやるよ」
「うん、フェイトちゃん。いくよ」
二人はそれぞれ魔力をチャージしていく。
「ディバイィィィン…」
「トライデント…」
最大までチャージした所で一気に解き放つ。
「バスター!!」
「スマッシャー!!」
作品名:魔法少女リリカルウィッチーズvol.4 作家名:Dakuto