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いつか宇宙人とバスケ、テレフォン、インタビュー

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 撮影が長引いて、夕方には終わるはずだったインタビューがこんな時間までずれ込んじゃうなんて、ねえ。よくあることだけど。
 ちらっとおもてを見ると、夜のはじめの、群青色の空が窓のかたちに切り取られてしんとしている。星のきれいな夜になりそうだった。
 窓のこっち側、そらぞらしいくらい明るいスタジオで、おれは色とりどりの椅子のうちから適当な色を選んで座る。さくっと終わらそう。
「じゃあ、いくつか質問に答えていただきますね」
「はい。よろしくお願いします」
 インタビュアーは感じのいい人だった。おれの話を一生懸命聞いて、相槌のタイミングも心地いい。
 下調べもしっかりしてるみたいで、質問はテンポよく進む。準主役として抜擢されたとき、どんなことを思ったか。どんな演技を心がけたか。たいへんだったことは。
 おれは、ひとつひとつていねいにこなした。嬉しいっていうか、ただただびっくりしました。そうですね、入りこむのはもちろんだけど、そうしながらもきちんと自分を客観的に見られるように。うーん、なにがっていうか、ぜんぶ手探りで苦労の連続でしたね。でも、そのたびに現場のみなさんに助けてもらって。
「上半期の映画で観客動員数一位、でしたっけ」
「はい。たくさんのお客さんに観てもらえて、本当にありがたいです」
 にこっと笑顔を作る。カメラがぱしぱし光った。窓越しに、ちゃんときれいな顔で笑えてるのをたしかめて安心する。イケメンモデルから本格派俳優になりつつある黄瀬涼太21歳。
 じゃあ、次は黄瀬さん本人についてうかがいますね。私生活のこと、交友関係のこと、高校まででやめちゃったけど、いまでも大好きなバスケのこと。休みの日の過ごし方、うんぬん。このへんも、だいたい答えることは決まってるし、わりと楽。
 思いつくままにすらすら答えていると、じゃあ次はね、とインタビュアーの人が目を伏せた。
「いまいちばん行きたい場所は?」
 お気に入りのカフェですね。とか。こないだコレクションで使ってもらったブランドのショップ、あれ行きたいなあ。とか。いつか雑誌の撮影で行った、外国で、海が見えて、白い石造りの家が並ぶきれいな街。おれ、ハネムーンであそこに行くの夢なんです。とか。
 おれは黄瀬涼太らしい答えを、なんとでもいえたはずだった。
 けれどそのとき、おれはちょっと絶句してしまって、どうしてもことばが出せなかった。フラッシュバック。乱暴で、瞬間的な、殴られたみたいな。
 おれは座ってるのにすこしよろめいて、青い椅子ががたっと音をたてた。