綾部と真冬のお弁当事情
「でも綾部を嫌いじゃねえだろ?
嫌いな奴とは一緒にいねえもんな」
真冬は綾部を嫌いじゃない。
それだけはたしかだった。
真冬が悩みながら屋上に向かっていた。
綾部がいつものようにお弁当を渡していた。
「「(気まずい)」」
「黒崎俺本気やから俺こんなに好きになったんは初めてなんや。け
せやからあんまり考えすぎないでほしいんや」
真冬を真剣に見つめる綾部から目がそらせなかった。
昔から喧嘩ばかりしていた。
だけど彼の真剣さはわかるから逃げてはいけない。
そんなことを考えながらテストも終わり平均をとり修学旅行モードだった。
「はあ」
「何か悩んでるのか黒崎」
「野々口さん」
「夏男はいないのか?」
「裏部員だから緊急事態以外に来ないんだよ。
何か夏男に用があるなら呼んでくるよ」
「いやお前に恋の悩みを相談したいんだ。
クラスでは話せないから今日どこかで話せないか?」
「いいけど私でいいの?」
「お前も恋の悩みを抱えている瞳をしてるからこんなこと生徒会じゃ話せない。
まあ後で話すか」
なぜか恋のガールズトークになっていた。
ケーキ屋に来て食べながら話している。
「夏男とはどこで知り合ったんだ?」
「学内で知り合って番長と戦う話をしてたらじゃあ俺が行くって話になったんだ。
クラスも学年も知らないし携帯も夏男は持ってないし」
「今時携帯も持たないのか。
じゃああれは夏男のじゃないのか」
「あれは私のを貸して落としたみたい。
ないと不便だからたまに貸してくれっていわれるんだよね」
「モールス信号が趣味らしいな」
「ああそれがきっかけで夏男とは知り合ったんだよ」
「で夏男の話はしたんだから今度はお前の話だ。
誰に告白されたんだ?
風紀部か?
それとも先輩か?」
「あやべんだよ。
この前告白されたんだ」
「綾部が告白したのか。
まあお前ら仲良いしな」
「知って!?」
「雅様がいってたんだ。
最近は綾部が恋しているみたいだから皆で応援してあげようって」
どうやら生徒会ではばれているらしい。
歌音は続けている。
「まあ私もわかるような気がするが自分が悩んでいて颯爽と現れる相手だ。
夏男もそういう優しさがあるからお前の周りには茶化すか相談にならない奴らばかりだろう」
「まあね」
しばらく話していた。
綾部はクラスメイトと修学旅行の買い出しに来ていた。
「まだストーカー女(真冬)から返事もらってねえの?」
「あれから大分たつよなあ」
「俺だってはよもらいたいけど黒崎に待つっていったんや。
焦らせても意味ないやろ」
買いながら真冬がいなければこうして友達と過ごすことはなかったかもしれない。
綾部は真冬を放課後屋上に呼んでいた。
「(とはいっても俺も自信があるわけやないし)」
この前黄山に殴り込みをしていても真冬は守られるような女でもない。
「寮長(綾部)3年が寮で喧嘩してます」
「何やっとんねん。
すぐ行くわ」
真冬は綾部を待っていた。
いくら待っても綾部は来なかった
綾部は3年を止めに入り怪我をしていた。
「いてて」
真冬との待ち合わせがあったがこっちに来ていた。
説教をしてからうなだれていた。
「綾部大丈夫か?」
「番長たいしたことあらへんです」
「嘘つけ腫れてるじゃねえか。
すぐに冷やせ」
冷やしながら真冬のところに向かっていた。
屋上には真冬はいなかった。
「遅くなったし仕方あらへん」
冷やしながら頭を押さえていた。
真冬は飲み物を買いに行っていただけだった。
「あやべん来てる?」
「ああ黒崎寮で喧嘩があって遅れて悪かったな」
「頬赤くなってる。
冷やすからじっとしててね」
「無自覚もほどほどにな。
近いで」
真冬はばっと赤くなり話し始める。
「あやべんが怪我するなんて」
「俺は自分と違うから汚れてなかったんや。
告白の返事もらいたいんや」
「私はあやべんが好きだけど友達としてなんだよね。
修学旅行の当日に返事するから待っててほしいんだ」
「そうやな。
黒崎俺は何があってもあんたの味方やで」
真冬は笑ってうなずいていた。
真冬は綾部が男だと思っていたのか考えていた。
何度もある。
初めて真冬が負けてから彼は本当に強かった。
あんたこんなもんかいといわれてぼこぼこにされていた。
人生で初めて負けて以来更に強くなりたいと決意をしている。
いわゆるターニングポイントだった。
その前は怖くて仕方なかった。
彼は強かった。
だからこそ真冬は綾部にしばらく向き合えなかった。
向き合ってから付きまとい仲良くなっていた。
あれから本当の彼を知っていく。
口喧しい一面や面倒見がよい性格であること。
綾部はまどろっこしいことをされると怒る。
正座しろと怒られ礼儀に厳しい。
しかし綾部は掃除になると性格が変わる。
掃除を我慢するとおかしな所から力が出る。
からくりという時間制限つきの強さだった。
楽園だと大笑いして楽しそうに掃除をする。
責任をとるという名目で大掃除を付き合わされる。
彼は料理上手で家事炊事洗濯が好きである。
罪悪感にかられて悩んでいた。
それが解決してから別人みたいによく笑うようになっていた。
永遠のこどもの国ネバーランドである生徒会役員。
彼らは変わりつつある。
歌音も夏男に恋をしている。
それを考えると生徒会室は変わるかどうかではないのかもしれない。
綾部ももし家族問題が解決しなければどうなっているだろう。
なんて話がそれている。
彼が自分を選んでいた理由は真冬が1番だと考えていたからだった。
真冬だけを狙いリベンジは引き分けだった。
勝つのは簡単なのにそれをしなかった。
だからこそ今の関係があるのかもしれない。
きっとそうだと納得する。
ゆっくり考えればいい。
だって綾部は考えていいという。
なら向き合うべきだった。
初めての告白だった。
ならこっちも真剣に向き合う。
でなければ綾部に失礼である。
綾部はまっすぐで嘘をつかない。
ならこっちも自分の気持ちに向き合う。
綾部とのことを真剣に考えようと決意する真冬だった。
綾部は真冬を本当に向き合うつもりがある。
彼は優しいからいくらでも待てるという。
だけど真冬は綾部を待たせていることを気にしている。
なら真冬もはやく結論を出さなくてはならない。
それが優しさならそうかもしれない。
真冬も悩みがつきなかった。
綾部とは親しいからこそ悩む。
それは当たり前だった。
焦らない方がいいかもしれない。
作品名:綾部と真冬のお弁当事情 作家名:アオイ