綾部と真冬のお弁当事情
綾部家に来てからのこと
綾部は真冬をいつ好きになっていたかを思い出していた。
真冬を実家に連れていってから綾部の恋は始まっていた。
真冬を家まで連れていき夕飯に招待していた。
さすがに食べないで帰るわけにもいかなかった。
「黒崎夕飯作るから適当にくつろいでてくれへんか?
お客さんと仲良くするんやで」
「「「「「はーい」」」」」
真冬を気にしながら夕飯を作っていた。
一華に髪をいじられていた。
「真冬さんって髪染めてたわりには全然いたんでへんね。
そういう髪質羨ましいわ」
「一華ちゃんも巻き髪かわいくて羨ましいなあ。
私2つにリボンくらいしかしたことないし」
真冬を見ているとなんだか気持ちが変になる。
これが恋なのかもしれない。
ワイワイと盛り上がっていて安心していた。
「お兄ちゃん夕飯まだなん?」
作っていると真冬がお菓子を食べると取り上げる。
「あーなにするのあやべん」
「夕飯入らなくなるやろ」
そのあとボール遊びをしていた。
「(まあこれなら大人しくするやろ)」
「痛いわ真冬ちゃん今わざと強く投げたやろ。
何すんねん」
「投げてない」
「秋三真冬ちゃんに謝れや。
遊んでもらっといて何様やねん」
3人が取っ組み合いになり引き剥がす。
「真冬!!!
ええ加減にしなさい!!!」
最大のお叱りをくらっていた。
肉じゃがにだし巻き玉子にサーモンのカルパッチョが並んでいてさやえんどうの味噌汁に五目ご飯が並んでいる。
食べながら真冬は綾部を見ていた。
「あやべんって料理上手だよね」
「昔からやっとるしあんたは料理とかするん?
不器用そうやけど」
「私が作ろうとすると周りが止めに入るんだよね。
なんかこれ混ぜてればいいっていわれるの」
「卵焼きはどう作るんや」
「卵いれて焼くだけじゃないの?」
「(こいつの料理だけはくえへんな)」
「それじゃあいり卵にもならないような」
真冬の料理だけは食べれないと思う綾部兄弟だった。
真冬が人参を避けていた。
「黒崎好き嫌いするんやない。
人参も食べなあかんよ」
「人参嫌い」
「ワガママいわへんで一口だけでええから食えや。
秋三幸四郎しらたきも食べんかい。
小末自分もサーモンも食べなあかんよ。
真冬あんたが食べへんからこいつらもマネし始めたやろ」
「元からこの3人嫌いなものは食べないやろ」
「どうしても食べなきゃダメ?」
「1つだけや黒崎?
ちょっとこっち向け」
「何ムグッ」
「人参グラッセや。
これなら食べれるやろ?」
「「「「「(カップルみたいやなあ)」」」」」
好き嫌いは有無をいわせず食べさせる綾部だった。
真冬に食べさせてから真冬は赤くなっていた。
けろりと横で食べている綾部は弟妹と同じ扱いだったからである。
食べるのを再開していると真冬が食べていたことで3人も食べている。
「あやべんひどいよ。
無理矢理口に入れるなんて」
「栄養片寄るやろ。
好き嫌いせずに食べななんやかんやいうわりには食べとるやないか」
綾部は真冬を注意する。
真冬にうちでは好き嫌い禁止やと説明する。
真冬が黙って他のおかずを食べている。
「あー真冬ちゃんそれ僕の」
「私が先にとったもん」
ギャアギャア言い争い怒られる。
「秋三お客さんに譲るんや。
俺のやるからすねるな」
「兄ちゃんありがとう」
わいわいと騒ぐのを見て昔と同じで安心していた。
真冬が食器を片付けてから一華や梅次や秋三や幸四郎や小末の元へ向かう。
一華が真冬にお茶いれると席を立っていた。
「お兄ちゃん真冬さんって素敵な人やな。
私あの人ならお兄ちゃんの将来任せてもええわ」
「一華自分気づいて!?」
「真冬さんがお兄ちゃんの背中押してくれたんやろ?
お兄ちゃんきっと真冬さんと出会わなかったら今頃まだ帰れなかったやろ?」
真冬はきっと悩みを解決してくれる。
真冬に出会って間もないのに妙に安心できる。
お茶をいれてから真冬に差し出す。
リンゴをむき桃も出していた。
真冬が飛び付くのであいかわらずよく食べている。
「真冬さんと兄ちゃんって仲良しなんやな。
兄ちゃん友達家に連れてきたことないんやで」
「そうなの?」
「可哀想な兄ちゃんは世帯じみてて彼女はおろか友達もつれてきたことないんや」
「しかも女の子なんや」
「真冬さん兄ちゃんをよろしくお願いします」
「俺ら付き合ってへんけど可哀想ってなんやねん」
「なーんや兄ちゃんの方もがっ」
「黙れや梅次」
それから帰り支度をしていた。
駅で兄弟と別れている。
真冬と話している。
「黒崎ありがとな。
もし向き合わなければ一生このままやったわ」
「いいなあ兄弟って。
私一人っ子だから」
「まあ俺の家は特殊やから両親忙しくて俺は家事ばかりの所帯染みてたんや。
家族で出掛けた思い出なんて数えるくらいや」
「あやべんってあんまりワガママいわなそうだよね」
「充分ワガママやと思うで。
1年も帰らなかったんや」
「私はよく怒られてたなあ。
喧嘩で」
「それは想像通りや。
あんた女にしては強いやろ」
綾部は真冬と話している。
電車で話している。
「あんた埼玉からなんやなあ。
俺もそうやけど県外から来る奴多そうやな」
「私もそう思うよ。
寮があるから一人暮らしの心配もないしね」
「喧嘩強いんはスポーツやってたんか?」
「いや佐伯先生幼なじみだから鍛えられたんだよね。
小3の時にうさぎの人形とられて喧嘩で取り返したんだよ」
「いや俺小学生で取り返せてるって事実に驚いてるんや。
あんた強すぎやろ」
「私中高不良だったんだよ。
埼玉統一してる番長」
「まじかい」
「まあ統一してる日に警察に捕まって退学になったんだよね。
私そこそこ有名だったの」
「悪名やろそれ。
悪い奴やないのにひどい話しやな」
「でもあやべんも強いじゃん。
私は負けてもまた強くなること知れてよかったよ」
「人は負けて成長するんやで。
俺喧嘩とかあんまりせえへんなあ」
イメージ通りだと笑う。
真冬と同じ方向に向かう。
「何でついてくるの?」
「家まで送るわ。
いくら強くても女を1人で帰らせるわけないやろ」
黙って真冬を送る。
真冬がつまずくと受け止める。
それから心配だからと手を繋いでいた。
真冬にドキドキが伝わらないかヒヤヒヤしていた。
真冬のマンションまで小さくてやわらかくだまって歩いていた。
真冬のマンションに着いていた。
「今日はほんまにありがとな黒崎。
あんたのおかげで気持ちが軽くなったわ」
笑うと真冬も笑い返す。
「じゃあねまた明日あやべん」
「ほなな黒崎」
綾部はてをかるく振りながらマンションから寮まで帰っていた。
いつか振り向かせると心に決めていた。
作品名:綾部と真冬のお弁当事情 作家名:アオイ