二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

【腐】君を探す旅・1【西ロマ】

INDEX|3ページ/8ページ|

次のページ前のページ
 

「うわああああああ!」
 どこまで続くのか分からない落下は、ロマーノの尻に大ダメージを与えつつも何とか止まる。下に柔らかい感触、むせ返るような草の匂い。痛みで滲んだ視界で辺りを見回せば、どこかの森の中だった。
「いってぇ……っつーか、ここ何処だよ……」
 確かに自分はイギリスの家に居た筈なのに、今は見事な屋外。原理がまったく想像出来ないが、どうやら強制移動させられたらしい。
「夢でしたー、とかないよなぁ……」
 握ったままの右手を広げれば、小さな陶器の薔薇がある。それをズボンのポケットに突っ込み、やっぱり夢じゃなかったんだなと、早々に現実逃避を諦めた。
 ロマーノはゆるゆると立ち上がり、辺りを注意深く観察する。懐かしい空気の森は、何故か緊張しているようだ。夕暮れに染まる木々から敵意のような色を感じ、そっと大きな茂みの中に身を隠した。
(戦争中みたいな空気だな)
 服も鞄もきっちり隠れているのを確認し、息を潜めて伏せる。かくれんぼは昔から得意だったので、見つかる気はしなかった。
(俺を見つけられたのは、スペインだけだったしな)
 痛みを伴う懐かしい記憶を目を閉じて追い出し、念のため鞄の中の着替えを取り出す。
 カーキ色のパーカーを引きずり出し、今着ている明るい色の上着と交換した。ジッパーを上げしっかりと着込めば、茂みと少しは同化出来るだろう。
 他人の悪意に聡いロマーノの予想通り、遠くから草木を掻き分ける音が聞こえてくる。声は男たちのもので、何かを探しているようだった。
 見つかったら危険だ。そう、肌で感じる。
 緊張がロマーノの息を乱していき、心音が耳元で鳴っている。状況を理解しようと必死に耳を澄ませば、こちらに走ってくる音が聞こえた。
「!」
 草を掻き分けて現れたのは、黒髪の少年。きょろきょろと辺りを確認している姿は手ぶらで、膝を怪我しているようだ。観察している間に彼の背後で音が聞こえ始め、子供はじりじりとこちらに下がってきた。
(ヴァッファンクーロ!)
 こちらに背を向けている少年に飛び掛り、口元を押さえて茂みに戻る。驚き暴れる子供を落ち着かせようとするが、何かするでもなく彼は落ち着いてくれた。
(もう抵抗を諦めたのか……?)
 そのまま二人で茂みに隠れる。落ち着いた子供にトントンと腕を叩かれ、ロマーノは彼の口元から手をどかした。その手を自分の鞄に伸ばし、音を立てないように漁る。お目当てのものを見つけると握り締め、そっと手を抜いた。
 直後、目の前の茂みが揺れる。現れたのは武器を手にした男達。だがそれがショートソードや片手斧であることに、ロマーノは首を傾げた。あんなアンティークなもの、何処で手に入れたのか。
(斧や鎌なら農家にあるけど、剣って……)
 映画の撮影とかだろうか。お気楽に考えてみるが、目の前の子供が小さく震えているのを見てしまえば否定せざるを得ない。
 もしかしたら、どこかの田舎村での私刑とか。
 ギリギリ考えられる線を考え、無理矢理納得する。でないと焦りと混乱で叫びだしそうだった。
(イギリスの野郎、一体どうなってんだよ!)
 脳内で罵詈雑言を撒き散らしつつ、冷静になれと自分に言い聞かす。そんな間にも男達は近くの茂みを探し始めた。
 目の前で何やら言い争う言語は上手く聞き取れない。時折スペイン語に似たものが混じるものの、基本は別の言葉で話しているようだ。顔つきも何処か中東の感じがする。
 完全にアウェー。サッカー場に木霊するブーイングの幻聴が聞こえてきそうだ。
(ちくしょう、やっぱ銃持ってくるべきだった)
 一応人様の家にお呼ばれだからと、銃を置いてきてしまったのは失態だった。昔スイスに安く売って貰ったアーミーナイフは鞄にあるものの、戦える気などまるでしない。
(こっちに来ませんよーにっ!)
 パーカーの上からいつも付けている十字架に触り、神様に祈ってみる。イタリアの祈りが効いたのか、男達はバラバラに別れて探索を開始した。
(一人なら、何とか……?)
 この辺りを探す男は一人。ガサガサと近くの茂みを斧で漁っている。逃げるなら今がチャンスだと、ロマーノの勘が告げた。
「おい、逃げるぞ」
 草が擦れる音に紛れるように、目の前の子供に声を掛ける。それに小さく頷いて答えたのを確認し、先程から握っていたもので狙いを定めた。
 手にしていたのは防災用の小さいソーラーライト。暗いのが苦手なので、念の為持って来たものだ。空は暗闇に沈み始め、男の目は夜に慣れてきている筈。なら、強い光は相当眩しいだろう。
「ぐあっ!?」
 男がこちらの茂みに手を伸ばした瞬間、ライトを点灯し目を晦ませる。驚きふらついた男から逃げようと立ち上がると、いつの間にか動いていた子供が追跡者に止めを刺していた。
「これでええわ」
 驚き落とした斧の柄で頭を殴られ、男は気絶してしまう。爽やかに笑う子供はスペイン語でそう言うと、ロマーノの手を取り走り出した。
「兄ちゃん、こっちやで!」
「お、おい」
 何だか分からないが、そのまま二人で森を走る。先導する子供は時折空を見上げて星を確認し、道を変えていた。