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【腐】君を探す旅・1【西ロマ】

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「はい、兄ちゃん」
 戻って来たアラゴンからコップを受け取り、やけ酒のようにあおる。飲み終え一息ついたところで、さてどうやって誤魔化そうかと考えた。
 隣ではアラゴンがきらきらとした瞳でこちらを見ている。この時代に自分は生まれているかは分からないが、後で何かあったら面倒だ。手にしていた薔薇をポケットにしまい、ロマーノは深刻そうな顔で口を開いた。
「確かに俺は『イタリア』の一人だ。だが俺が『国』だってのは、秘密にして欲しい」
「どうして?」
 きょとんとした顔をする少年に心の中で謝りつつ、元の時代に戻った時のことも考える。国が一人消える事態をどう誤魔化すかと悩んだが、昔そんな不安が身近にあったと思い出した。イタリア統一のあの日の覚悟と……恐怖を。
 とりえずスペインに告白した時のことを思い出し、手っ取り早く泣きそうな顔を無理矢理作る。
「……俺はもうすぐ消えるんだ」
 目指せ主演男優賞。そんなノリで演技すれば、アラゴンはハッとした顔で口を閉ざす。どうやら信じてくれたらしい。
 そのまま悲しい記憶を利用し涙を浮かべ、ロマーノは更に言葉を重ねた。
「イタリアには多くの国がある。生まれて消えて……また生まれる。でも消える前に外を見たかったから、こうして今は旅しているのさ」
 いたいけな少年を騙す心の痛みに耐えかね、胸元に下がっている十字架を握って瞳を閉ざす。その表情に更に勘違いを重ねたのか、アラゴンは「……わかった」と約束してくれた。
 やべ、こいつ可愛い。
 騙しておきながら、そんな感想が胸に浮かぶ。言い訳なら任せろとノリノリで喋ってしまったが、流石に罪悪感が半端ない。まぁ、これは命の恩人ってことで相殺して貰おう。
「じゃあ、兄ちゃん何て呼べばええ?」
 国名では呼べないなら、と少年が問う。それに少し考えたものの、特になにも浮かばなかったので普通に答えた。
「ロヴィーノ」
「ロヴィーノ?」
「俺の人名さ」
「そっか。なら俺も『アントーニョ』でええよ」
 俺も人名で呼んで。そう笑う顔に、頬が引きつる。
「あんとーにょ?」
「せや。アントーニョ・フェルナンデス・カリエド」
 完全にスペイン決定の瞬間である。
「わかった、アントーニョ。よろしくな」
 握手を交わし、取りあえずは第一関門クリアといった所だろうか。その後に続く質問を考えると頭が痛い。予想通り忘れてはくれなかったらしく、アントーニョは頬を染めつつ期待に満ちた瞳でこちらを見上げた。
「ねえロヴィ、あの光り何なん?」
「イタリアは聖地だからな」
 胸の十字架を持ち、それっぽく言って見る。自分聖職者でしたからと胸を張って言えば、物凄く尊敬された。
 ……本当に申し訳ないと思う。一応南はローマを内包しているし、教会に関わる仕事もしているので完全に間違ってはいないのだが。
 これも内緒なと言いくるめ、突き通す嘘の多さに疲れてくる。疑われない嘘は少しだけ本当を入れる。そんな話をフランスがしていたなと思い出し、次の質問には普通にぼかして答えた。
「ロヴィはイタリアの何処?」
「南の方」
 ちょっと早まっただろうか。たぶん大丈夫だとは思うが、北の方が小国が多かった筈なので、その方が誤魔化せたかもしれない。
 だが国の様子を聞かれれば答えられる気がせず、ここは正直に言っておいた方がいいだろう。弱っていると攻められたら困るので、政治的な理由で南の何処とは答えられない。真面目な顔で告げれば、それ以上追及されなかった。
 念の為今の年代を聞いてみたが、丁度北イタリアで弟が「なんだかとってもルネッサーンス」と歌っていた頃のようだ。
 ということは、既に自分も生まれていることになる。下手に国がバレてしまえば面倒なことになりそうだ。ローマからシチリア辺りまで手広く話すことで誤魔化していこう。
「なあ、アントーニョ。お前は『イタリア』に会ったことあるか?」
 バチカンの大聖堂の話をしつつ、ここに来た目的を聞いてみる。もし近くに居たりしたら嘘がばれる可能性もあるので、さっさと撤退する必要があるだろう。
 ロマーノの質問に首を振り、彼はイタリアに行ったことすらないと話す。以前王がナポリに行っていたと羨ましそうに語る様子に、嘘や演技は見当たらない。
(先に来れた……ってことか)
 このままアントーニョを見張っていれば、いずれ出会うお目当ての『イタリア』も見られそうだ。そっとジーンズの上からポケットに入れたままの薔薇に触れる。まだ時間はあるようだし、こうなったら出来るだけ情報を集めてやろう。
「疲れたし取りあえず宿を、……あ、金ねーや」
 食事は携帯食料と山の幸で何とか食いつなぐとして、やっぱり安心して寝たいなと思う。先程追われたばかりだし、今日は野宿をしたくなかったが流石に仕方無いか。
 先立つものが無いのは辛い。流石にこの時代でユーロは使えないよなと鞄の中の財布に溜息をつき、自分が男でよかったと思った。二・三日風呂に入れなくても、潔癖症では無いので我慢出来る。
「ロヴィ、宿なしなん?」
「資金切れ。あー、野宿かぁ……」
 貧乏旅行なんだと誤魔化し、ロマーノは頭を抱える。
 こんなことなら、アウトドアセットを持ち込めばよかった。寝袋だけでもあれば、かなり助かっただろう。あと持ち込むべきは料理用のナイフとか……。
「あ――――――っ!」
 そこで最悪な事態に気付いた。
 大声で叫び、目の前が絶望で真っ暗になる。