【腐】君を探す旅・2【西ロマ】
何度携帯に電話をかけても、メールを送っても反応無し。なしの礫で困り果てたスペインは、ついに最終手段としてイタリア兄弟の家に電話した。
「あ、イタちゃん? ロマーノなんやけど……」
あの世界会議後の事件で逃げたロマーノを追ったものの、探しきれずもやもやした気持ちは胸に残ったまま。何か言わなければならないと思うのに、何を言ったらいいのか分からない。ただ、このまま誤解されるのはまずいと思った。
「兄ちゃん、昨日からイギリスの家に遊びに行ってるよ~。着替え持ってってたから、泊まりみたい?」
「イギリス?」
「うん。何か約束してたんだって」
ヴェネチアーノに礼を言い、電話を切る。一体いつの間に二人は仲良くなったんだという疑問が頭を巡り、二人が会う状況に気付いた。
そう、嫌でも『国』が顔を合わす世界会議。スペインの前から逃げた後、ロマーノはイギリスと会い、傷心の彼はそのまま……。
「うわあああああああ!」
最悪な想像をしてしまい、喉が裂けるような音量で叫ぶ。とにかく彼を連れ戻さないとと気が焦り、何度も物を落としそうになりながら携帯と財布をポケットに突っ込んだ。
「ボンジュール。……何、どうしたの」
そこらの物を倒しつつ支度をするスペインに、遊びに来たフランスが声を掛ける。今そんな暇は無いと手を振る様子に何か危ういものを感じたフランスは、取りあえず落ち着けと無理矢理スペインをソファに座らせた。
こんな状況のスペインは何かをやらかし、そして焦りから追い討ちを掛ける傾向があると長年の友人をしているフランスは知っている。そして、大体その原因が溺愛しているロマーノに関することであることも。
「落ち着いとる場合かっ、こんな間にもロマが……!」
「あー、はいはい。いつも通りね」
何悠長なこと言ってるのかと立ちあがろうとするが、フランスに肩を押さえ込まれ座らされる。更には「そんな怖い顔でロマーノに会ったら泣かれるぞ」と言われ、過去やらかした覚えのあるスペインは反論出来なかった。
「で、今回はどうしたんだよ」
やれやれといったその態度には、ありありと「お前が悪い」と書いてある。今まで十中八九、ほぼ九割九分の確率でこちらが原因なのだが、今回は違うのだ。
「……ロマに告白された」
そう、彼があんな事を言わなければ。
二人の関係を変えようとしなければ。
今でもぬるま湯の中、二人は穏やかに居られた筈なのに。
あの驚愕と選ばれた喜びと足元が崩れるような恐怖を思い出し、スペインの視線は自然と下を向く。苦しげに原因を告げたというのに、友人は軽く頷いて返した。
「へー、ついにか」
「ついにって、お前知っとったんかい!」
何で黙ってたんだと怒るが、「露骨なのに無視してるから、分かっててやってるのかと思った」と告げられる。
「露骨……でしたか」
「元々お前は特別扱いだけど、どう見てもそうだったろ」
確かに彼は男嫌いなのに、自分の誘いには乗ってくれる。だが、それは家族としての親しさだと思っていた。
「お、親分として慕ってくれてると」
「それなら、ベルギー程度の距離感になるんじゃかいか」
元子分のベルギーは、今も時々スペインに顔を出してくれる可愛い女性だ。ただそれでも年に数回会う程度、ロマーノのように月に何度も会えたりはしない。
彼女には彼女の生活があり、楽しんでやっているようならそれでいいと思っている。こちらも無理に誘ったりはしないし、誘うような用事も特に無かった。
じゃあ、何でロマーノにはそんな距離になれないのか。何の用事も無いのに電話してみたり、メールしてみたり。彼に忘れられないよう必死になってしまうのか。
大本の原因は一つで、それが最大の原因でもある。
「で、今こんな状況になってるって事は何かやらかした訳?」
暗に断ったのかと聞いてくる声に、曖昧に頷く。断ったという気はないし言葉も出していないが、恐らくロマーノは拒否されたと受け取っているだろう。
作品名:【腐】君を探す旅・2【西ロマ】 作家名:あやもり