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【腐】君を探す旅・2【西ロマ】

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「お前がその『イタリア』が好きなのはよーく分かったんだけど、それとロマーノに何の関係が?」
 人名が同じだけ? と、長々と思い出を話す男の気持ちが落ち着いてきたのを見計らい、フランスが話の軌道修正を図る。彼との思い出に浸っていたスペインは現在の問題を思い出し、頭を抱えて声を絞り出した。
「ロマーノとロヴィーノが瓜二つです」
「わあ」
 驚いたフランスは手早くテーブルの上にグラスを二つ用意し、なみなみとワインを注ぐ。片方のグラスを無理やりスペインに渡すと乾杯した。勢い余ったのかグラスがガチンと嫌な音をたてる。
「そっくりになり過ぎやー!」
 叫びつつ、スペインはワインをあおる。もう飲むしかない状況を理解してくれたのか、フランスもまた一緒にあおってくれた。
「あー、スペインさん、スペインさん。もしかしてその話」
「した」
「さいですか……。で、どうなのよ。今は」
 スペインの答えを聞きがっくりと肩を落としたものの、直ぐさま切り返してくるのは流石だ。それが野次馬根性であろうと、一人で考えていても纏まらなかったスペインにはありがたかった。
「昔はそこまで似てへんかったんよ。顔は似てたけど」
 確かにロヴィーノは子供っぽいところはあったが、こちらを手助けしてくれる大人だった。さりげなく頭を撫でる手や抱きしめる腕は、ロマーノに無いもの。分かり易い気遣いもあり、精神的にかなり大人であったと記憶している。
 対するロマーノはまだまだ子供で、内面で言うなら似ていないというのが現状だ。ただ、独立で変化した瞳の色がロヴィーノと同色になり、スペインの胸を酷くざわつかせた。
「ロマはまだまだ子供やで。俺が守ったらなと思うし、守りたいと思う」
 彼に守られ幸せに浸っていた自分のように、彼を愛したいと思う。それはロマーノが独立しても変わらず、スペインの中に存在していた。
「ロマーノが子供ねぇ。……お前の前ではそうかもな」
 そんな横で、フランスが何か言いたげな顔をする。どういう意味やと睨むと、やれやれと肩を竦められた。
「あいつはもう大人だよ。ちゃんと仕事もしてるし、イタリアの兄貴として結構頑張ってる」
「でも、」
 確かに会議に来ていたり仕事は頑張っている。さぼりがちではあるが、それは昔と変わらない。昔も今も、ロマーノはきちんとやることはやる子だ。出来がどうかは別として。
「お前が子供扱いするから、あいつはお前の前で子供の振りをしてるんじゃないのか」
「そんなん」
「変わらないものは安心するもんな。子分達が独立したお前には、特に」
「違う!」
 聞きたくない。フランスの言葉を遮ろうと大声を上げる。だが、いつもなぁなぁで済ませてくれる彼にしては珍しく引き下がらなかった。
「ロマーノはずっとお前に見合うよう頑張ってたからね。お兄さん同情しちゃうのさ。『イタリア』が好きなのは置いといて。お前、ロマーノが他のヤツとくっつくの我慢出来るの?」
 親分なら暖かく見守れるよねと言いつつ、自分のグラスにワインを注ぐ。ついでのようにこちらのグラスにも注ぎ、ボトルをテーブルに置いた。
「我慢って何やの……」
 ロマーノへの感情は複雑で、非常に入り乱れている。親のような気持ちと、ロヴィーノへの想い、……それに。いけないもののようで目を逸らしていた想いが一つ。
 可愛い子分が、誰かと愛を語り合うのが我慢出来る?
(そんなん出来る訳ないやろ!)
 胸に憤怒のような熱い想いが湧き上がる。ヴェネチアーノにロマーノとイギリスが約束をしていたと聞いただけでじっとして居られない程だ。
 ああ、確かに自分はロマーノの上で胡座をかいていた。人付き合いの苦手なあの子が、自分以外を優先するだなんて思っていなかったし、いつだってロマーノの一番は自分であると自惚れていた。
 でもそれはもう通用しない。自分に振られたと思っているであろうロマーノは、きっと外に目を向けてしまう。
「ロヴィーノ関係なく、俺はロマーノと離れられへん。これで満足か?」
「ブラヴォー!」
 財布と携帯を確認し、ソファを無言で立ち上がる。家の鍵をフランスに投げ、美しく微笑む男を背にスペインはイギリスを目指した。
 スペインの胸の中に居るロマーノと、記憶の中のロヴィーノがこちらを見つめている。じっと見つめるロマーノの瞳は悲しみに揺れており、ロヴィーノは穏やかに笑っていた。