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【腐】君を探す旅・3(完)【西ロマ】

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 敵の目撃情報は村を走り、偵察隊が颯爽と馬を走らせる。ロマーノがアントーニョの支度を手伝っている間に部隊は揃い、偵察隊の報告を今か今かと待っていた。
「本隊が居るぞ!」
 やがてもたらされる情報。女性の証言通りの場所に敵がおり、商団の荷物を囲み休んでいる最中だという。今なら隙をつける。そう確信し、アントーニョ達の部隊は出撃した。
「気をつけてな」
 振り返る子供の頭を撫で、頬にキスを贈る。何か言いたげな顔をしていたアントーニョだったが、唇を噛みこらえるように出撃していった。
 部隊の姿が見えなくなる頃、そっとズボンから陶器の薔薇を取り出す。その色に驚き、ロマーノは思わず取り落としてしまった。
 ……薔薇の外側の花びらが、白くなっている。
(もう少し、もう少しだけ待ってくれ!)
 あいつの帰りを待っていると、約束してしまったんだ。
 足元を転がる薔薇を拾おうと腰を屈めた時、地面を人影が覆う。顔を上げれば、先ほどの女性が立っていた。
「あの、私……」
「せや、偵察隊が商団を見つけたらしいで。積荷は敵に確保されていて怪我人がいるものの、全滅はしてへんって」
 薔薇を拾い上げ、不安げな女性に説明してやる。こちらの本隊が向かったので、すぐに商団は開放されるだろう。怪我人のことを聞き顔を歪ませたものの、それでも女性はふらつくのを堪えロマーノに頭を下げる。
「本当にありがとうございます。先ほどはお薬まで頂いてしまって、何とお礼を申し上げれば……」
「かまへんよ。君はもう少し休んどき」
 追い回されたであろう女性を気遣い、ロマーノは診療所へ案内する。あそこなら一応横になれる空きベッドがある筈。
「あ、ちょっとええ?」
 案内する女性の話に、ふと思い出すことがある。ロマーノはこんな時に何だけどと、女性に頼みを告げた。

「あなた!」
 部隊が出撃して半日。ボロボロになった商団が村へ逃げ帰ってきた。その先頭に居る男に、保護した女性が抱きつく。
 多くの犠牲を出したものの逃げ帰れたという状況に安堵した者たちは、村で手当を受けることにした。勿論軍医は部隊についていってしまっている。今まで軍医の手伝いをしていたこともあり、商団にはロマーノがメインで治療にあたることとなった。
「ほんま、ロヴィーノさん凄いんよ。薬もよう効いて」
「へぇ、お前の頭痛をなぁ……」
 満身創痍の人を治療している横で、再会した夫婦がイチャついている。お互い無事でおめでとうなのだが、黙々と治療を進めている横では非常にうっとうしいことこの上なかった。
 とはいえ、商団の主人にお願いがある。ロマーノは二人を無視して治療を進めると、一息ついた隙に話を持ちかけた。
「雪を売って欲しい?」
「ああ。お金は、ちょっと無いんやけど……」
 積荷の食料は荒らされているものの、山から持ち出した雪はかなり残っている。これがあればアントーニョに美味しいものが食べさせられるとあって、ロマーノは少しでもいいからと鞄を漁った。
「これ、昨日奥さんに飲ませた頭痛薬。あと十回分ある。これと交換で分けてくれへん?」
 差し出した錠剤を物珍しい視線で見つめる主人の横で、昨日お願いした通り奥さんが瞳を輝かす。可愛い妻のおねだりに鼻の下を伸ばすと、商談は成立した。
「ええけど、何に使うんや」
「ちょっと珍しいイタリアのドルチェをな」
 帰ってきた部隊用にとっておきの氷菓を作ると笑えば、主人は何かに気づいたように目を輝かせる。