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【腐】君を探す旅・3(完)【西ロマ】

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 物凄い勢いで引っ張られた体は急激に沈み、そして浮かんでいく。まるでジェットコースターのような勢いで上空に放り出されると、ロマーノはぱっちりと瞳を開けた。
 視界に映るのはクラシックな天井。掛けられた布団には刺繍の入ったカバーがついていて、動かした視線の先にはアンティークな家具と薔薇の飾られた花瓶があった。
(……イギリスん家、か)
 確か以前彼の家でのパーティで食事にあたり、運ばれた部屋だと記憶している。嫌なことを思い出し痛む頭を押さえつつ、ロマーノはだるい体を持ち上げた。
 服は見知らぬパジャマで、近くのテーブルには自分の鞄が置いてある。胸に感じる国民の『声』は、ロマーノが現代に戻ってきたということを方便に伝えていた。
「起きたか」
 静かな部屋にノックの音が響き、イギリスが顔を覗かせる。手に持つトレイにはサンドイッチが乗っており、その一般的な色から使用人作成なのが見て取れた。
 紅茶とサンドイッチを腹に詰め込みつつ、疑問をぶつける。
「今、何日だ?」
 弟にはちょっと出かけると言っただけなので、心配しているかもしれない。思わず日付を聞けば、「丸一日しか経ってねーよ」と返された。向こうには随分居た筈だったが、良心的な時間の巻き戻しだ。
 無断欠勤で上司にどやされることは無いなと胸をなで下ろし、ロマーノはイギリスに文句を言った。
「結局、『イタリア』に会えなかったぞコノヤロー」
 何かもういいけどと口ごもりつつ、一応術の失敗は教えておく。そんなロマーノのセリフに目を丸くし、イギリスは俺が間違えるかと眉間に皺を寄せて怒った。
「んな訳ねーよ。絶対、件の『イタリア』が居た時代に飛んだ筈だ!」
「『イタリア』が居る時代ったって……あ……」
 そこではた、と気付く。
 あの時代、アントーニョの傍に『イタリア』は確かに居た。
 確かに、一人だけ。
 そんなまさか。
 頭から血が下がるのと同時に、頬に熱が篭っていく。スペインになる前に会った、ロマーノと同じ顔の『イタリア』が初恋の相手……。
(俺かよ!)
 青ざめた顔に色が戻る。うわぁあと変な声を上げてベッドに沈んだロマーノを、イギリスが不思議そうに見やった。
「何かあったのかよ?」
「あったっていうか……。いや、うん」
 あったというか、あり過ぎた。まさか嫉妬の相手が自分だったなんて、一体誰が想像出来るというのか。
 羞恥に震える胸を押さえ、何とか呼吸を整えてうるさい心臓を止めようとする。色々な感情が一気にロマーノの中を駆け巡ったが、一番初めに出た言葉は感謝だった。
「なんつーか、いい思い出になったっつーか、……その、ありがと、な」
 過去に行き、アントーニョと共に過ごした日々。諦める為に行った筈だったが、今のロマーノの中には確かにスペインへの愛がある。それも、以前のような醜い執着ではなく澄み切った愛情が。
 語るロマーノの顔がスッキリしているのに気づいたのか、お礼を言われてぽかんとしたイギリスはやがて嬉しそうに笑って返した。
「あ、でもすっげー尻痛かったぞコノヤロー。初めにちゃんと説明しろよな!」
 何やら優しい空間に気恥ずかしくなり、いきなり飛ばされて強く尻を強く打ってしまったことを抗議する。腰だったらやばかったと話すロマーノへイギリスが口を開くより先に、勢いよく部屋のドアが開かれた。
「……」
 ドアを開けたのは、険しい顔をしているスペイン。その後ろで、慌てた顔で屋敷の執事が立っている。乱入者はつかつかと部屋を歩くと、無言でロマーノの腕をとった。
「おい、人の家に許可なく入るんじゃねーよ」
 頭を下げる執事を手で制し、主人であるイギリスが眉を上げる。何が何だか分からないロマーノは軽くパニックを起こし、言葉を発せなかった。
「邪魔するで。ロマーノが世話になったな」
「おい、お前」
「帰るで」
 パジャマ姿のまま、ロマーノはスペインに引きずられていく。制止するイギリスを無視して行われる行為に混乱しつつ、「またな」とだけ何とか声を出した。
 手を上げて反応するイギリスを一別し、スペインの表情が険しくなる。腕を掴む手はより力が込められ、逃げ出すことは出来なかった。