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白の祓魔師

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 放心状態のアムロを空港の警備員が椅子に座らせてくれたのだが、アムロはそれを認識する事無くただぼんやりと座り続けていた。
その肩を力強い手が掴まえて前後にゆすってきた。
のろのろとあげた視線の先に、驚愕と安堵と言う対極の感情を貼り付けた綺麗な顔があった。
「アムロ?! アムロ! しっかりしろ!! 君は無事だったんだな?! 良かった。良かったよ」
「かみーゆ・・・さん?」
「ああ。俺だ。ブライト助祭から、アムロの乗った筈の飛行機が墜落したとバチカン本部に連絡が入ったんだ。だから慌てて空港へ駆けつけたんだが・・・。一便前の機体に乗っていたんだな」
「ち・・・ちが・・・、ちがう」
「違う? 違うって、どういう意味なんだ? だって、アムロは・・・」
「僕は、あの機体に乗っていた」
「乗ってた? じゃあどうして無傷で・・・」

「聖人アムロ!! ご無事で!!」
カミーユが理由を聞き出そうとした時、ロビーの向こうから緋色のキャソックを纏った枢機卿が修道士達を引き連れて駆け寄ってきた。
「ああ。一時は御身が損なわれたのではと絶望も致しましたが・・・。ブライト助祭の思い違いだったのですな。ご無事で何より、何より」
枢機卿はアムロを引きずり立たせて抱きしめると、背中をポンポンと叩いて喜びを顕にした。
「いえ。彼はあの墜落した機体に乗っていたと・・・」
カミーユがアムロから聞き出した事柄を告げると、枢機卿をはじめ、修道士達も一様に驚愕の表情を浮かべた。
「機乗していて何故?」
「僕一人だけが・・・ここに・・・」

悪魔に操られた機体から、悪魔の手によって救い出されたと告げようとしたアムロの口が開く前に、枢機卿の口から歓喜の声が迸った。
「神の奇跡だ!! 墜ちる機体から聖人を神が!神が!!お救い下されたのだ!!」
その声に修道士達が共感して同様の歓喜の声を連呼し、違うと言うアムロの声は、全くかき消されてしまった。
アムロをそっちのけにして、枢機卿たちは神の御技がなされたと空港内にいる誰彼と無く声高に告げている。
深く傷ついた表情のアムロを見つめていたカミーユが、遂に堪忍袋を切った。
「枢機卿! あの便に搭乗していた人の家族もいるかもしれないのですよ?! その人達の心痛を慮れば、そのような非常識な発言や行動は出来かねると思いますが、如何です?!」
どなるのではないものの、ビシッと告げられた言葉は否定の仕様が無く、聖職者達は異常なまでの興奮状態から急速に降りてきた。そしておずおずと遺族と思しき人達に対し、心の救済活動を始めたのだった。
「まったく! あいつらの常識を疑うぜ」
憤慨しつつ、カミーユはアムロに視線を向けた。
常に無く消衰しきった表情のアムロに痛ましさが募る。
「アムロ。今日は俺の部屋に泊まれよ。ホテル・・・・・予約してないだろ? それに、そんな状態の君を一人になんてしておけないよ」
再び椅子に脱力しきって座るアムロの肩を包むようにして抱き寄せると、アムロの両目からは大粒の涙が零れ落ちてリノリウムの床に幾つもの雫を描いた。
作品名:白の祓魔師 作家名:まお