二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

白の祓魔師

INDEX|9ページ/18ページ|

次のページ前のページ
 



飛行機はなんのトラブルも無く、自動操縦の空域に達していた。

「定刻どおりに到着出来そうですね」
副操縦士は操縦桿を機長から預かり、穏やかな飛行に安堵して声をかけた。
が、機長からの返事が無い。
「どうかなさいましたか?」
副操縦士は隣に座る機長に視線を向けたが、己が見た物に驚愕して動きが固まった。
副操縦士を射殺さんばかりに睨みつけている機長の白眼は真っ赤に充血し、彼の吐く息が白く凍る。
それは空調を管理されたコクピットであり得ない事だ。
「貴様は私の地位を強奪しようと企んでいるのだろう。この飛行もトラブルが起るように画策しているんだろう? そうだ! そうに違いない!!」
機長はそう言い切るなり自動操縦を強制解除し、操縦桿を自分の管理下に戻す。そうしておいて、いきなり機首を急降下させたのだ。
「機長!! 何を!!」
「させん!! させんぞぉ〜!!」
エマージェンシーコールがコクピット内に響き渡る。
客席ではシートベルトをしていなかったキャビンアテンダントや乗客が、急降下によって生み出されたゼロGにより天井や側壁に叩き付けられた。
酸素マスクが射出され、乗客の悲鳴が機内を満たす。
「何が起った?!」
アムロは片手で座席の肘置を握り締め、もう片方の手で隣に座っていた子供を抱きかかえた。
『ベルゼブブがそなたを亡き者にしようと、機長を操っている』
頭の中にシャアの声が届いた。アムロは周囲をこれ以上の恐慌に陥れない為に、同じく頭の中で返事を返した。
『何っ?!』
『奴は争いを起こし、嫉妬心を生み出す。機長の心に己より若い副操縦士への猜疑心と嫉妬心を湧かせたのだろうよ』
『何で?!何だってそんな事を』
『今回のバチカンの召喚は、四色の祓魔師を決める為のものだ。ここ百年、四色の祓魔師の座は歯が欠けたままになっていた。それを埋める事が出来るだけの能力者が揃ったのだよ。当然、我々魔界の住人にとっては歓迎できぬ事態だな』
『だからって、この飛行機ごと?』
『恐怖や強い心残り、理不尽な死への怒りは魔族の糧となるのだ。アムロ共々この数百人を屠れば、奴はかなり腹が膨れような。さて、アムロ。逃げるぞ』
『逃げる?』
『ああ。この機体からレオナルド・ダヴィンチ空港へと、私が瞬間移動させる』
『そうしたら、この機体はこの異常事態から逃れられるの?』
『いや。このままベルゼブブの支配下で、どこぞの場所に墜落するだろう。・・・・・・ほぉ〜。街中に墜落させて、更に多数の怨嗟を生じさせるつもりのようだな』

「冗談じゃない!!」
アムロは叫ぶなり、シートベルトを解除した。途端に浮き上がりかける身体を、目の前のシートにつかまる事で制止する。そうしておいて、足で座っていたシートを蹴り、身体を前方へと移動させた。
『アムロ! 何を!!』
「機長から奴を浄化する!」
『無理に決まっておろう! 奴は魔界の?2なのだぞ。アムロの祓魔の技で祓える悪魔ではない!』
「だからって、(俺のせいで)多くの人が苦しむ事を放置できるわけないだろ!」
『私はアムロさえ無事なら、どうと言う事も無い』
「ふざけるなっ!!」
アムロはシャアと口論しつつも側壁や天井を蹴り、シートを掴まえつつ機体の前方へと身体を移動させていた。
「ふざけてなどいない。このまま移動するぞ」
あと少しで操縦室へと手が届くところまで来ていたアムロを羽交い締めするように逞しい腕が回され、一瞬でアムロの身体は機体の外へと移動させられた。
急降下していく銀色の巨鳥が見る見るうちに小さくなっていく。
「放せっ! シャア!!」
「断わる」
アムロの叫びに冷たい一言が返され、次の瞬間、アムロの身体は見知った空港のロビーに立っていた。
空港關係者が慌てた表情で右往左往しているのが見える。
交わされる会話の中に、アムロの乗っていた飛行機の便番号、大西洋、墜落という単語が聞き取れる。
「なんで?!・・・なんでだよ。・・・・・何でなんだぁ―― !!」
アムロは絶叫し、その場にしゃがみこんで慟哭するしかなかった。
作品名:白の祓魔師 作家名:まお